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受託分析・解析のアプリケーションは
無限の拡がりを見せる

受託分析・解析はなぜ強い
高度化するニーズと共に広がるアプリ
それぞれの得意分野で各社の特徴が光る

清水聡/調査部 河野修/調査部

昨年の下期あたりから需要が急激に回復してきた受託分析・解析業界。アプリケーションの拡大,顧客ニーズの多様化,高度化に如何に対応し,産業全体の発展を図っていくのだろうか。本稿では,主要参入メーカー8社に取材を行い,各社の特徴,ビジネス戦略,今後の業界展望を伺った。だが,半導体分野などで新材料,新技術の開発が急ピッチで進められる中,薄膜の材料分析・解析力などの力不足が懸念される。怠れないスキルアップ,顧客をリードし提案型の受託分析・解析サービスの姿が今後も期待される。

設備と人材

受託分析・解析と言えば,その技術力,分析精度の高さ,信頼性が最大の要。その実現には,最新の分析設備を整え,高度化する顧客ニーズに対応することが求められ,設備の性能に依存する部分が大きい。だが,それらの設備を扱うのは,エンジニア。つまりヒトである。例え同じ試料の分析を行っても,エンジニアによってそのアプローチの仕方が異なり,コスト,分析結果にまでスキルの違いが現れると言い,“人材”という言葉は,特に受託分析・解析ではキーワードとなっている。  一方で,各社の持つデータベース,これも一つのキーポイントとなる。分析・解析は,一朝一夕に行えるものではなく,非常に専門的な知識と長年培ってきた顧客との信頼関係,経験・データの蓄積がものを言う業界。各社からの話しからも,その自負心には強いものが感じられる。

新材料の導入でアプリが拡大も

半導体プロセスは,ナノメータの時代へと突入。デバイスメーカー,材料メーカーまた各コンソーシアムでは,65nm,45nmそれ以降のプロセス開発が活発に進められている状況。それらのプロセスには,新技術,新材料が不可欠であることは言うまでも無く,low-k/high-k絶縁膜材料,各種レジスト,また次世代半導体として期待されるシリコンカーバイドなどアプリケーションの拡がりには事欠かない。だが,アプリケーションの拡がりに比例してニーズが高度化しているのも事実。分析・解析技術の遅れも懸念される。

生産シフトで新たなニーズ

昨今の半導体業界では,国内海外を問わず,半導体メーカー各社でアライアンスが進み,再編の嵐が吹き荒れていた。一方で,デバイスメーカーも,投資リスク,生産コストの低減に躍起となり,ファンドリメーカーを積極的に利用する動きや,生産をコストの安い中国へシフトさせる動きが,国内大手メーカーでも活発化している。これらの動きは,再編による顧客の絶対数の減少を招いたというデメリットもあるが,ファンドリの活用,生産シフトにより,受託分析・解析に新たなニーズを生み出したという側面も見逃せない。さらに,国内で特に顕著に見られる傾向だが,各種エレクトロニクス機器での世代交代の速さがあり。携帯電話では,ものによっては数か月単位という速さであり,ニーズの拡大が急速に高まっている。

なお,今回取材を行った8社は,沖エンジニアリング,住化分析センター,住ベテクノリサーチ,東レリサーチセンター,ナノサイエンス,三井化学分析センター,UBE科学分析センター,リソテック ジャパン(五十音順)である。以下に,各社の最新ビジネス動向をまとめる。

沖エンジニアリング

03年から,携帯電話やデジカメなどのアプリケーション,またそれに付随する半導体デバイスなどの市場が急回復し,受託解析の需要も急増している。沖エンジニアリングでも「潮目が変わった,この機を捕らえ顧客と共にチャレンジ」をテーマに掲げ,一層の飛躍を目指す。一方で,この急激な需要回復に対応するための,人材が不足ぎみという嬉しい悲鳴が聞こえる。受託解析は,装置の性能に依存する部分もあるが,「エンジニアのスキルが重要な財産,装置を使いこなすスキルだけでなく,過去の蓄積がものをいう」(取締役 信頼性ソリューション事業部長 菅沼貞雄氏)と言われるなど,顧客との緊密な関係の構築には,その人材の育成,確保も一つのキーポイントとして浮上している。

1. 30年以上の歴史と実績

73年12月の設立から数えると,30年以上の長い歴史を持つ沖エンジニアリングは,総合信頼性評価技術と技術ソリューションの提供を行う。その技術,ソリューションを細かく見ていくと,五つのセグメントに分けられる。(1)主に電子デバイス,接続接触部品,メカ部品,モジュールなどの信頼性評価を行う信頼性技術・故障解析技術,(2)テスタや計測機器の校正を行う計測技術と電子機器のEMC評価技術,(3)排ガス,廃水などの環境システムの設計・施工と化学分析技術,(4)特許調査,市場調査,出願支援処理を行う特許・知的所有権調査,(5)日本で一社しか提供できない防爆電話機や特殊電話・放送装置。これらの各フィールドで,30年以上の歴史とその実績によって培われ,また,顧客との信頼関係,各種資格に裏付けられた高い技術力が最大限に発揮される。

2. 信頼性技術・故障解析技術

主に物理解析,in-situ故障解析,信頼性試験・環境試験,機能試験の四つに大別される信頼性評価分野。沖電気工業により育まれた信頼性評価技術,設備,人材をコアとして,宇宙航空などの市場に通用する高度な信頼性評価力,解析力,試験提案能力を有すると共に,この四つの分野全体をカバーする体制を構築し,宇宙航空関係,自動車,半導体,民生機器など様々な分野で受託解析・分析サービスの提供を行う。携帯電話などでは,数か月単位でモデルチェンジが行われ,信頼性の評価,故障解析は不可欠。また,昨今のファブレス化の加速。ここでも生産場所が変われば,再評価の必要があり,受託解析の需要が生まれる。さらに無線タグ評価,車載用ユニット評価,Pbフリー評価など実装分野での評価・解析ニーズも増加。同社では濡れ性,機械的測定評価,環境評価,元素分析まで一貫で実施できるPbフリー評価を要に,顧客サービスの充実を図る。

3. 部品から装置実装までのトータル評価・解析

通常,故障解析の依頼があった場合,故障の状況を電気的に確認。その後,非破壊検査で内部構造を把握し,更に樹脂を開封して内部を光学顕微鏡で観察するという作業が行われる。ここまでが,1週間程度。そして,ここで得られた情報を元にデータを解析し,故障メカニズムの推定が行われる。場合によっては,故障のデータベースを利用して,客観的な解析も可能となる。同社では,あらゆる装置を用いながら,この全体のフローを一元的に実現し,故障メカニズムの推定までを行える。

受託解析分野では,スピードが重視される傾向にある。例えば,自動車関連などでは,「24時間以内に最初の答え」を出すことを求められるケースがある。 受託解析機関としても,顧客にその様なニーズがあれば応えなければならず,受託解析機関自身にもかなりのスピードアップが要求される。

4. 計測技術

ここでも,過去の経験と蓄積された校正技術サービスにより,年間約275社もの顧客に校正サービスを提供する。また,そのサービスも広範囲にわたり,ICテスタから光通信関連計測器,測長系計測器関連と幅広い。なかでも一番の特色は,ICテスタの校正にあり,半無人で可能なテスタの校正では,その技術の高さに加え,コストメリットも非常に高いサービスの提供が行われている。一方,EMC試験サービスでは,ノイズ対策,装置の障害・誤動作などの調査・対策,ニーズに応じた設計支援などEMCに関する総合的なサービスの提供およびコンサルティングの提供を行っている。関東エリアには,ノイズ計測のみを行う試験所は数社ある。しかし,総合的なコンサルティングまで含めて顧客サービスの提供を行える試験所はなく,同社のみが行えるサービスとなる。以上,同社のキーポイントなるセグメントを簡単に紹介したが,同社の持つ実績,技術力,信頼性は多少なりとも伝えられたのではないだろうか。潮目が変わった受託分析・解析業界。同社が今後どのような展開を図るのか,これからも注目されるところだろう。

住化分析センター

72年,住友化学工業の分析部門から独立した住化分析センター。現在,従業員(派遣・パートを含む)は1000名を超え,まさに国内最大規模の総合分析会社である。同社のポリシーは「微量金属や化学材料などの分析ノウハウを凝縮し,さらに化学会社からの視点を融合させ,物理・表面分析などトータルなソリューションを提供する」(営業本部 電子部門 統括部長 富嶋公明氏)である。同社が意味するトータルソリューションについては後述するが,まず同社の得意分野について見てみる。

1. クリーンルーム評価で業界トップ

同社の分析分野は,環境関連,電子関連,医薬関連,安全性・危険性評価,材料評価など幅広い。中でも,電子関連では,デバイスの表面評価,LCD欠陥解析,分離採取技術などに加え,クリーンルームの評価が得意とするところである。クリーンルーム内エアの評価では,業界トップの実績を持つ。  デバイス表面の分析は,ウェーハ表面の微量不純物分析をはじめ,微小断面観察,微量汚染分析など,同社が有する化学分析のノウハウを,複合的に表面分析と組み合わせた形で提供している。顧客ターゲットとしては,これまで半導体メーカーが中心となっていたが,今後は液晶,有機ELなど表示デバイス関係や電池関係などの分野にも注力していくとしている。

2. 信頼性試験に注力

これまで分析と言えば,顧客からの請け負いビジネスであった。しかし,同社では新たなビジネス展開として電子部品・材料の信頼性評価に注力する。従来,電子部品・材料の信頼性試験と言えば,セット(電機)メーカーが独自で行ってきたが,近年に入りアウトソーシングへという動きも出てきた。そこで,同社はこれまでの材料分析のノウハウを凝縮・融合させ,信頼性評価に重点を置く。冒頭に述べたトータルソリューションを意味するところである。  同社が対応する電子部品・材料の信頼性評価は,環境試験,ガス腐食試験,特殊環境試験,故障解析・分析などがある。環境試験とは,電子部品などに化学的変化を生じさせる可能性の高い無機ガス試験,有機ガス試験,耐湿度試験などの環境試験を実施し,高度分析技術と電子計測技術を用いて,電子部品などの性能と信頼性を確認するというもの。

また,化学分析のノウハウを生かし,危険物の高温・高圧での浸漬試験や特殊ガス雰囲気での試験も行う。もともと,自動車関連でのニーズであったが,電子部品やそれ以外の分野にも応用している。ガス腐食試験では,1300×1000×1000mmという大型ガス試験チャンバを用意し,各種ガス(亜硫酸ガス,塩素ガス,硫化水素ガス,二酸化窒素,アンモニアなど),ガス濃度などの試験に対応している。絶縁評価システムを組み合わせることにより,イオンマイグレーションの確認,接合信頼性評価などが可能となっている。また,故障解析・分析では,問題発生時に非破壊検査,表面分析,断面観察,脱ガス分析,雰囲気測定など融合化技術を駆使して,故障原因の追求にあたる。

3. 全方位型の分析

「分析というのは保険みたいなものです。無ければそれに越したことはない。しかし,今後は製品や材料に付加価値を付けるという意味でも重要な要素になってくると考えます」(富嶋氏)と語る。さらに「ポイントとなるのは,単に分析を受託するというのではなく,顧客の持つ問題を探索し,解答を提案して,さらにそれに関する新たな技術情報やアイデアを付加してソリューションを提供していくサプライチェーンマネジメントを顧客との間に構築する事が重要である」とも付け加えた。その一歩として,同社は信頼性評価に力を注ぐ。

全方位型の分析。縦・横両方向からのサービス提供である。「局部的なお手伝いではなく,モノ作りである以上,全ての工程において責任があると考えています。つまり,作るところから,捨てるところまで」(営業本部 東京営業所 武田直樹氏)と述べる。繰り返しになるが,同社が提案するトータルソリューションは全方位型のソリューションである。一般的に,トータルソリューションと言えば横方向,つまり請け負い分野の豊富である。同社のポリシーもこの意味合いを含んでいるが,もう一つ,縦方向への取り組みも示唆している。つまり,同社の強みである化学分析に,機器分析を融合させ,顧客へのサービスを提供するという姿勢である。

住ベテクノリサーチ

住ベテクノリサーチ(略称STEC)の概要について簡単に紹介する。同社はプラスチックのパイオニアである, 住友ベークライトグループの受託分析評価試験と情報調査のサービス会社である。特に「プラスチックに関連する試験分析に特化」し,リーディングカンパニーとして信頼性の高いサービスを提供する。基本的にはプラスチック全般に特化した受託解析で,「未知を探り,未来を見つめる,知的創造力へのパートナー」としてお客様との緊密な連携を目指す。同社の設立は90年1月,今年で15年目と,一つの節目の年を迎えている。「常にお客様の視点で考え,ご提案し,実行します」を基本方針に業務を行っている。

1. 物性解析と組成解析および形態解析

同社の分析評価事業は,IT・自動車・QOLの分野における,プラスチック・高分子・樹脂・複合材全般の分析・評価・解析を得意としている。大きく(1)物性解析,(2)組成解析と(3)形態解析の三つのコア技術に特化している。まず物性解析では,一般の機械特性(クリープ試験・疲労試験を含む)の他,電気性能,粘弾性,熱特性,ガス透過度,シミュレーション(流動解析・熱応力解析)などを受託し,プラスチック関連をメインとした様々な物性解析サービスが提供される。

次に組成解析では各種材料の元素分析,分子量・分子量分布,化合物およびガス分析など業務としている。形態解析においては,素材・加工技術に関する豊富なノウハウをベースに,ミクロおよびナノの視点から解析しており,半導体デバイスが深く関係し,同社の強みが発揮されている分野という。試験結果においては,プラスチック全般に関する分析に特化することで,バックデータを十分に生かし,より精度の高い結果を得ることができる。つまり,幅を狭く,中身をより高密度にしていることだろう。

2. 機密保持を第一で,スピーディーな納期の達成

受託会社として,常にお客様の「機密保持を第一とし,スピーディーな納期の達成」と,新製品・新事業の開発のソリューションを提供するため努力している。特に「即応」ということが,一つのキーワードとして挙げられる。これまで2週間必要としていたものは,10日間で,1週間であったものは5日間でという様に,少しでも早い対応を目指している。さらに,お客様に満足して頂ける様に,「あらたな改善・あらたな工夫」を掲げている。例え設備が若干古くても,より精度の高いデータを出すにはどうしたら良いのか。どういう方法で試験を行えばよいのか,未知の領域の試験を行う場合には,やはり過去の経験,工夫,アイディアが必要となってくる。

3. アウトソーシングすることのメリット

工程管理や異常検査においては,1日も早い解決・改善を迫られる。大手デバイスメーカーや材料メーカーでは,自社にそれなりの分析設備を備えているが,対応が遅れることがある。このためスキルとメンテナンスを具備した専門メーカーにアウトソーシングした方がメリットがある,という考え方もあるようだ。

東レリサーチセンター

東レリサーチセンター(TRC)は,東レの研究開発部門から78年に独立した。多方面にわたる高い技術力を集約し,R&D・生産を支援する総合的な受託体制を確立している。分析事業の内訳としては,半導体・ディスプレイなどを含むエレクトロニクス分野をはじめ,医薬・ライフサイエンス分野,環境・エネルギー分野など幅広い。

1. 有機EL,電池が好調

エレクトロニクス分野においては,半導体をはじめ,モバイル用のリチウム電池・自動車向け燃料電池・太陽電池,ディスプレイ,はんだやプリント基板などの実装関係,それに関連した環境分野,欧州でのWEEE/RoHS関連を網羅している。中でも,半導体の生産関連の分析依頼は緩やかな回復基調にあるが,研究・開発段階での分析ニーズは以前根強いものとなっている。

一方のディスプレイ関連は好調のようだ。同社はもともと研究・開発レベルでの分析ニーズが多いことから,現在では有機ELの分析が急増しているという。有機EL素子は,水分に弱いことから,解析から分析まで大気にさらさないよう,そのまま分析ができる設備を使用している。また,有機EL素子の深さ方向評価に,同社が開発した精密斜め切削法を有効活用している。同方法の詳細については後述する。有機ELを製造するメーカーは,もともと半導体・電機メーカーが多く,有機材料に関する分析評価にはあまり馴染みがないのが実情である。そこで同社では,有機分析の豊富な経験をベースに,様々な分析手法のコンサルティングを行いたい」(東京営業第1部 営業第1課 西尾亜希氏)とトータルソリューションの提供を提案する。一方のLCDでは,表示不良の原因追求から,封止・シール材に関する材料分析,さらにはTFT関連分析など幅広く網羅している。LCDは量産フェーズとなり,基礎的な分析ニーズは減少しているが,基板サイズの大型化と共に変化する材料に対し,同社の有機分析のノウハウが生きている。

2. バリエーションに富んだ分析方法

同社の分析事業の特徴となるのが,数多くの分析方法を有している点で,ラマン分光法や熱分析,磁気共鳴など幅広い。これは,社内的にいくつかのテーマを立て,そのテーマに対し複数の分析手法を試すというワーキンググループでの活動成果で,解析手法を横断的な手法で生み出すことに成功している。例として前述した「精密斜め切削法による半導体プロセス解析」が挙げられる。同手法は,レジストやlow-k膜のような有機系材料の場合,従来のイオンエッチングを用いた方法では,その化学構造を破壊し,正確な情報を得ることは困難とされてきた。そこで同社では,精密斜め切削法(Gradient Shaving Preparation:GSP)を開発した。同手法により,従来困難であった有機系材料の深さ方向分析を可能にした。

3. 装置開発にも積極的

設備投資へのアプローチも積極的である。「常に分析装置メーカーの動向はウォッチしています」(東京営業第1部長 畑田昌幸氏)はコメントする。常に市場のニーズに対し,敏感に,かつ迅速に対応する姿勢だ。「また,装置メーカーとアライアンスを組み,自らも装置開発を行っています。薄膜熱伝導率評価用の装置開発や国家プロジェクトに参加するなどし,装置開発に携わっています」(同氏)としている。一部足りない部分などは,海外分析機関や大学,国内の外注などを使い補っているという。

4. 海外へアピール

国内においては受託・分析サービスが認知されてきたが,海外での認知度は低い。しかし,台湾・中国といった潜在的に分析ニーズが高まっていくであろう地域に,業界全体として分析サービスをプロモートすることも必要ではないかという。また,分析業界にとって,分析データの品質保証や責任範囲の確立の重要性を指摘した。分析データの責任範囲を明確化し,分析サービスの役割についてコンセンサスが必要だという。

5. 分析業界はニ極化

WEEE/RoHSと言った,ある程度分析方法が決められている場合,求められものはコストと納期であることは言うまでもない。しかしその一方で,「アウトソーシングの立場を超えた,分析のコンサルティングが求められているのでは」(西尾氏)と語る。ある一つの分析手法だけではなく,総合的な分析手法を提供すること付加価値を付ける。分析・解析データについて,様々なアドバイスができる,そんな分析会社を目指す。

ナノサイエンス

ナノサイエンスは,表面分析サービスの仲介業務を行う受託分析・解析メーカー。同社が提供するサービスは,様々あるがメインとしては二次イオン質量分析とグロー放電質量分析の二つに絞られる。

1. SIMS分析

SIMS分析(二次イオン質量分析)では,Charles Evans & Associates(CE&A)と提携し分析技術を提供する。CE&A社は,SIMS分析では,世界のリーディングカンパニー。元々,SIMS分析で表面分析を世界で始めてスタートさせ,先駆け的な地位を築いている。SIMS分析は,固体の表面から深さ方向に不純物の分布を分析するもの。高速のイオンを固体に照射し,出てきた二次イオンを質量分離し,固体中の不純物の分析を行う手法。分析深度としては,数Åから数十μmという極めて薄い表層部分の分析に用いられる。半導体分野では,p/nジャンクションや薄膜中の不純物分析などに用いられ,正に必要不可欠の手法。また,既存のシリコンに比べ,耐高電圧,耐高熱,耐放射線性に優れ,パワーデバイスへの応用に注目が集まっているSiC(シリコンカーバイド)などでも,特に分析需要が高まっているようだ。  

試料の分野別比率としては,シリコン半導体が50%,化合物半導体が50%と,ほぼ半々となっている。同社では,78年の初期段階からGaAsなどの分析手法を手掛けてきた長年の実績があり,こういった経験・蓄積が化合物半導体の比率を押し上げていると言う。SIMS分析では,装置の性能に関わる部分が大きい。しかし,経験が非常に重要となる分析手法であることも事実。ここでは,やはり長年積み重ねてきたバックボーが生かされ,新たに登場する材料などの分析で,高精度の分析を可能とする。

2. GDMS

一方,GDMS(グロー放電質量分析)では,Shiva Technologies社の分析技術を提供する。GDMSは,質量分析技術の一つ。SIMS分析が表層の分析を行う手法であるのに対して,GDMSは固体中全体,あるいは表面分析でも数十μmという大きなパートの不純物を分析する手法となる。試料についてもSIMS分析とオーバーラップする部分もあるが,基本的には異なり,半導体向けのメタル,複合材料など基礎材料,電子材料の分析にポイントが置かれている。SIMS分析が生産開発,研究開発のパートであるのに対し,GDMSは原材料の受け入れチェックなどとなる。

3. ナノサイエンスが目指す分析サービス

単なる仲介であれば,どこの企業でもできる。同社が最も強調するポイントは,「幅広い知識を持つことで,分析の側からユーザーに提案,アドバイス,サポートを行えること。単なる営業ではなく,エンジニアの立場となってユーザとディスカッションを行えること。その過程が最も重要である」(営業部 分析サービス担当 部長 新宮一恵氏)と語る。

4. 一歩リードした先からのアプローチ

ユーザーから短納期,低価格というニーズは,よく聞かれる。ナノサイエンスでは,仲介という性質上,そこにはどうしても限界が生じてしまう。しかし,より精度の高い分析,より微小な領域での分析,より微細な不純物の分析つまり,他社を一歩リードしたところの技術革新はCE&A社,Shiva Technologiesで常に進められている。そして,ナノサイエンスも日本の技術者(ユーザ)が求めているものを素早く吸収し,それをフィードバックする。この業界をリードした先からのアプローチが,同社の最大の強みとなる。

5. 新しい分析技術「LEXES」

04年1月から,LEXES(Low Energy X-ray Emission Spectrometry:Full Wafer Analysis社)という,よりラインに近い新しい分析サービスの提供がスタートしている。これは,薄膜から1μm程度のドーパント濃度のウェーハ分析が可能となる手法。無論,生産ラインの中に入ったウェーハの分析も可能であるし,イオン注入後のイオン濃度の測定,研究開発の中で試作を行いながらウェーハの面内分布の測定を行うことも可能となる。この手法に対しては,実際どの分野がターゲットとなり得るのか未知数の部分が多い。SIMS分析との組み合わせで,研究開発から生産開発の領域にまで踏み込んだサービスの提供が可能となることが期待されるが,さらにhigh-k絶縁膜材料の組成分析,複合材料にも拡大できるポテンシャルもあり,今後の動向が大いに注目される分析技術となっている。

三井化学分析センター

三井化学グループの分析関連企業の再統合により,99年に発足した三井化学分析センター。長年に渡る材料分析技術を武器に,様々な方面の分析を手掛ける。エレクトロニクス業界では正式社名より,英文社名で略称したmc-Anacの名で知る人も多いのではないだろうか。同社が得意とする分析は,大きく三つの分野に大別することができる。一つは半導体・ディスプレイなどを含む情報電子分野,もう一つが有機・高分子材料分野,そして三つ目が安全科学・環境分野である。では,それぞれについて見てみる。

1. 情報電子分野

半導体・FPD業界の回復が寄与し,同社の情報電子分野は好調である。中でも得意とするのが,Siウェーハ基板表面の微量金属不純物の分析である。具体的には,誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による,選択エッチングによる多層膜の分析が挙げられる。また,low-k材料やCu配線など次世代向けの開発競争に伴った分析ニーズが急増しているという。薄膜物性への取り組みとしては,多層膜の硬度,密着性などの分析が中心となっている。さらに,機械的な物性や熱物性のニーズも加わりアプリケーション領域も拡大しているという。

FPD関連では,やはりLCD分野が量的には圧倒的で,表示不良解析などが多いという。パネルサイズも携帯電話用から大型テレビ用まで幅広く,それぞれのサイズにより分析内容も大きく異なってくる。中でも,同社が注力としているのが微量汚染評価である。「大手電機メーカーがあまり得意としていない解析。つまり微量不純物分析のような前処理技術でのニーズがある」(営業部 担当部長 情報電子グループ グループリーダー 山中 徹氏)とコメントする。

2. 高分子材料分野

近年,LCDをはじめ,有機EL材料評価のニーズとして,気体透過率試験が急増している。そもそも,化粧品や食品の包装材料,ペットボトルなどの分析ノウハウを有する同社の技術力が生きている。具体的には,各種ポリマーに対する,各種ガスの気体透過率と温度や湿度依存性を,等圧法や差圧法など各種方式のガス透過率測定装置により評価するというもの。また,同社だけに限らず,業界全体にとってホットな話題となっているEUにおける「WEEE/RoHS」指令。同社でも,いち早くWEEE/RoHSに関連した分析ニーズへの対応を見せている。また,合板,断熱材,塗装などから発生するシックハウス物質測定,自動車内装材のバッグ法によるVOC測定なども得意とする分野である。

3. 安全・環境分野

産業分野を問わず,同社が得意とするのがグリーンプラの生分解性試験である。グリーンプラとは,自然環境中の微生物の作用により分解され,最終的にはCO2やH2Oになる生分解性の有機材料を成分に含む材料,あるいは製品を指す。生分解性プラスチックと生分解性の天然有機材料の総計が,製品中に50重量%以上,または50体積%以上含み,生分解性プラスチック研究会(BPS)が定めた識別表示基準に適合した製品や原材料の総称。同社では,このBPSが定めた生分解性試験での実績を持ち,同分野の評価では,国内シェアでトップと自負する。

4. 新規市場として電子ペーパーへ期待

新規市場として,電子ペーパーに関する分析ニーズも増えつつある。電子ペーパーは表示原理,構造などにより使用される部材も大きく異なるが,中でも高分子フィルム,電解質,インク,染料・顔料,液晶などと言った材料は同社が得意とする分野である。そこに大きなビジネスチャンスがあるのでは,と考える。同社は,これらのニーズに対しても迅速に対応している。

5. 得意領域を追求

受託分析・解析業界は,今後どのような方向に進むのだろうか。「一社で全領域をカバーすることは難しくなっており,お互いの得意領域をより深く発展させていくのではないでしょうか。我々であれば,親会社が化学系の会社ですから,それらをベースに専門分野に注力します。それにより,ユーザーサイドにとってのメリットも大きい」(山中氏)と考える。確かに,広範に渡る分析・解析分野を全てカバーするためには設備投資,また技術力にも限界がある。得意とする企業がそれ専用の装置を導入し,ニーズを集中させることで技術レベルも向上する。そうすることで,より充実したサービスが提供できると考える。

UBE科学分析センター

87年に宇部興産の解析・分析部門から独立したUBE科学分析センター。折りしも時代はバブル期。大手材料メーカー各社が,挙って新規事業を立ち上げた時期でもある。親会社である宇部興産も電子材料関連事業へ参入し,その解析・分析を請け負う形で分社化した。17年経った今では,宇部興産からの受注は4割程度,残りの6割が外部から受注という。特に,半導体・FPD分野を含む電子情報機器関連では,外部からの受注が9割以上を占めている。

1. 化学メーカーとしての強み

同社は,有機・無機・高分子におよぶ幅広い対象を扱っている。機能性材料,電子材料,半導体材料,ファインセラミックス,医農薬などの組成分析,構造解析,表面分析,局所分析,超微量分析など,多様な分析ニーズに対応する体制を確立している。得意とする分野はやはりケミカルな部分だという。表面分析や電子顕微鏡,データ解析となると,「お客様の方が解析ノウハウを持っている場合も多い。であれば,我々の使命は,いかに良いデータを採るかではないか」(常務取締役 工学博士 木村圭一郎氏)とコメントする。自らの使命を明確化し,得意分野へ注力している。ただし,最近ではそのようなデータ解析の能力も上昇しており,顧客と共に問題解決を行いたいとしている。

2. 電子情報関連,材料の二本柱

半導体・FPD分野などを含む電子情報機器関連と材料関係の分析が,同社のコア事業となっている。ここでは,前者の電子情報関係について以下に紹介する。まず,半導体関係で言えば,やはりフロントエンド/バックエンドに関連する受注が多く,中でもlow-k,high-k材料の評価ニーズが増加しているという。具体的には,low-k層間絶縁膜/バリヤメタル/Cu界面の解析,X線散漫散乱およびTEM(Transmission electron microscopy - 透過電子顕微鏡法)によるlow-k膜材料のポアサイズ評価,またhigh-kではゲート絶縁膜の構造解析などがある。

一方のFPD分野では,昨今話題も多い有機EL関連の分析が急激に増えつつある。マイクロサンプリング(FIB)による断面解析をはじめ,ドーパント材料の分析,構造決定などが同社が得意とする分野である。有機ELデバイスの特性は,使用する材料に大きく依存している。そのため,長年に渡り有機材料の分析で培ってきた同社の分析ノウハウが十分に生かされている。

3. ニーズを見極め積極的に投資

デバイスメーカー同様,受託・分析業界においても,設備投資は事業全体を左右する大きな問題である。同社のポリシーは,最新鋭の機器・装置を整え,優秀な人材と技術を生かし,「迅速に・精緻に・確実に」要望に答える,である。このフレーズからもわかるように,同社はこれまで積極的な設備投資を行ってきた。電子顕微鏡をはじめ,表面分析関連の装置,SPMと呼ばれる走査型プローブ顕微鏡,など業界ニーズにいち早く対応した結果と言える。これに対し「設備に関しては単純な発想です。あまり,難しいことは考えていません。業界に必要とされているものを導入したい」と考えている。具体的な事例をニ,三列挙すると,シリコンウェーハ上の有機物による汚染問題が話題となれば,Siウェーハアナライザ(SWA)と呼ばれる装置を率先して導入してきた。同装置は,8インチ/12インチ対応しており,プロセス上の課題やトラブルシューティングに対応する。また,オージェ分光分析装置も一例である。同装置はナビゲーションと呼ばれる機能を搭載しており,8インチウェーハをそのまま格納し,異物マッピングデータなどを瞬時に分析することが可能となっている。

装置のみならず,設備への投資も積極的である。同社は4年前,山口県宇部にTEM専用実験棟を建設した。同棟は専用棟という形で建設されたため,振動,温度の揺らぎ,空調コントロールなど,建屋の設計段階から考慮されている。「分析会社というのは,お客様が必要としているものを,いかに迅速に導入するかである。基本はニーズでありシーズではない」と強調する。

4. 顧客と共に成長

「設立当時から装置もあり,人もいました。しかし,技術的な知識(ノウハウ)というものは欠けていた部分があったかと思います。ですから,我々はお客様のニーズにより学習し,成長を遂げてきた」(木村氏)と,当時を振り返る。お互いの協力関係のもと,様々な問題を解決することで,それが技術的ノウハウの蓄積を増すこととなる。ここから,結果的には,そのノウハウをまたユーザーに還元することになり,同社の技術力となる。

リソテック ジャパン

リソテック ジャパン(LTJ)は,その社名が表す通り,リソグラフィ関連に特化した装置の販売,およびフォトレジスト,感光材等リソ関連材料の測定を行う総合メーカー。今回のテーマである受託分析・解析分野では,事業の柱のひとつとして,受託測定,受託実験,受託研究のサービス提供を行う。

1. 装置コストの高さで自社測定が難しい現実

リソグラフィ関連材料の測定・解析では,部材メーカーが自社で独自に測定・解析を行うことが難しいという現状がある。材料評価を行うためには,当然のことながら様々な測定・解析装置が必要となるが,まず重要となるのがフォト特性。露光時にどの程度の感度で露光されるのか,コントラストをどの程度持っているのかといった評価が重要となる。そこでは,サンプルの露光が不可欠となる訳だが,そう簡単にはいかない。露光装置は億単位,ものによっては20億円以上の高額装置もある。材料メーカーがg線からEUV,EBまでの全ての装置を購入し,評価を行うためには百億円単位の投資が必要になってしまうためだ。

2. 全ての露光波長に対応

光露光に使われる波長は,g線,i線,KrF,ブロード光(コンタクトアライナなどで用いられる),ArF,EUVなど様々ある。さらに,EBによる露光技術の開発も活発に進められている状況。同社では,これら全ての波長に対応した露光が可能となっている。例えば,EBに関しては加速電圧可変型EBレジスト評価装置「EBES-6000」(04年6月に販売用デモ機が完成予定)を独自開発している。EBでは,LEEPLなどの低加速(2〜5keV),直接描画の50〜70keV,EPLでの高加速(100keV)などそれぞれの描画方法で電子を打ち込むスピードが違うため,レジストに要求される特性も違ってくる。EBES-6000は,2keVから100keVまでの加速電圧を一台の装置で制御できるため,EB用レジストの評価コストを大幅に削減することが可能となる。

3. 分析・測定技術

サンプルの露光は出発点に過ぎない。次に重要となるのが熱処理(PEB)・現像工程における材料の解析・測定。LTJの装置で言えば,脱保護反応解析システム,レジスト現像アナライザの分野となる。化学増幅レジストの場合,紫外光を照射し,その後,熱処理(PEB)を行うことによって保護基が脱離し,現像液に溶ける様になる訳だが,光化学反応がどういう形で起こっているのかを正確に把握しなければ,材料開発はできない。また,現像の挙動測定も非常に重要なポイントの一つとなる。さらに同社では,脱保護反応解析システム(FTIR)に露光および熱処理ツール(ベークプレート)を組み込んだシステムを開発,露光・熱処理を行いながら,材料の光化学反応の様子を調べることも可能としている。

一方,露光中にレジストからガスが発生するアウトガスの問題がある。アウトガスが露光機のレンズに付着し,レンズの表面を曇らせてしまうことがある。レジストメーカーとしては,アウトガスの発生しないレジストを開発することが一番の解決策だが,現実問題としてそれは難しい。であれば,発生するアウトガスが可能な限りレンズ表面に影響を与えないガスであることを把握する必要がある。同社では,露光機にアウトガスを捕捉するシステムを搭載し,GC-MSで分析する手法を用いて,アウトガスの定性および定量分析を可能とする。また,ArFレジストなどでは,レジストのブリッジ,パターン倒れの問題が顕在化している。これには様々な要因が考えられるが,一つにはレジストの現像中における膨潤現象が挙げられる。同社では,水晶基板を用いた現像解析システム「RDA-QZ3」により,現像中のレジスト質量を直接測定することで,現像中の膨潤の解析が可能である。

4. パラメータの抽出

リソグラフィの研究開発では,膨大な工程数になってしまうため,全てのプロセスを実験で行うことは難しい。そのため,デバイスメーカーでは,マスクの寸法,プロセスの決定にリソグラフィ・シミュレータを用いている。ここでは,リソ工程をソフトウェア上で仮想的に置き換えるため,各パラメータの入力が必須となる。リソテック ジャパンに求められるのは,露光時のABCパラメータ,熱処理(PEB)時の脱保護反応に関するパラメータ,現像パラメータなどの抽出。つまり,パラメータの受託測定である。 インプリント用レジストも  昨今のリソグラフィ技術は,光だけに留まらず,インプリントつまり型押し技術がMEMS向けを中心に注目を集めている。同社でもインプリント用レジスト評価装置を開発し,04年6月から稼動開始を予定している。この評価装置は熱硬化だけでなく光硬化レジストにも対応可能である。以上,同社の主な受託解析技術を紹介してきたが,「光から型押しまで,リソグラフィに関しては全て揃う」(取締役 技術営業サポート グループ長 関口淳氏)総合メーカー的な企業作り,取り組みがより鮮明に見えてくる。

5. 受託実験,受託研究

本稿では触れることはできなかったが,同社では顧客に実験室を貸し出す受託実験,また,カスタマからテーマを受け,同社で研究を行う受託研究などのサービスも提供しており,案件数も増加傾向にあるという。


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