多様化する次世代メモリ
次世代メモリそれぞれの現状
大容量化で苦戦するMRAMとFeRAM
次代の本命は相変化メモリか
小林行雄/編集部
フラッシュメモリやDRAMの次に来ると言われる次世代メモリに対する半導体デバイスメーカーなどの取り組みが大きく変わろうとしている。これまで次世代メモリの本命と言われてきたFeRAM,MRAMの勢いが鈍化,一部では事業売却などの話も出始めている。代わって勢いを増しつつあるのが相変化メモリ(PRAM)や抵抗変化型不揮発メモリ(RRAM)などのメモリである。PRAMは,FeRAMやMRAMと比べ低コストで大容量化が可能であるという利点が存在しており,これまでMRAMなどを手がけてきたメーカーなども興味を示し始めている。次世代メモリの現状を探る。
増加する次世代メモリの種類
現在,半導体メモリは,DRAMを始めSRAM,フラッシュメモリなど様々な種類が様々な領域で用いられている。しかし,ここに来て従来とは異なる次世代の高速不揮発性メモリの実用化に向けた動きが加速している。
これまで次世代不揮発性メモリとしては,FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)やMRAM(Magnetic RAM)がその本命と言われてきた。しかし,ここに来てそれらとは異なるメモリである相変化メモリ(Phase Change RAM:PRAM)や抵抗変化型不揮発メモリ(Resistive RAM:RRAM)の実用化に向けた技術が次々と登場,また分子メモリやカーボンナノチューブメモリなどの新機軸とも言うべきメモリも登場し,次世代メモリの開発競争はさながら戦国時代の様相を呈してきた。
次世代メモリの開発が加速している背景には,従来用いられてきたDRAMを中心とした各種メモリのプロセス微細化に限界が見えてきたという事が一つの要因として挙げられる。
大容量化で苦戦するFeRAMとMRAM
FeRAMは別名FRAMとも言われるメモリで,電荷を保持するために強誘電体材料を用いたマイクロキャパシタを単位とする不揮発性メモリの一種である。DRAMの延長線上の技術で,破壊的読み出しを行う。動作速度的および書き換え速度的にはDRAMと同等で,フラッシュメモリと同じく不揮発性である特性から電源が切れてもデータの保持が可能である点が特徴で,03年に松下電器産業がFeRAM混載システムLSIの開発,量産化に成功した他,沖電気工業が米Symmetrixからライセンスを受け,16Mビットの非破壊読み出しFeRAMの共同開発およびファンドリサービスの提供を開始したことなど,各社が一斉に実用化に向けた動きを示したことで,一躍脚光を集めることとなった。
しかし,安定性などの問題により未だに低容量品が市場に出回るのみで,本格的なキラーアプリケーションを見出せずにいる状態が続く状況に陥っている。また,仮に,大容量化が実現できた場合でもフラッシュメモリなどの従来からのメモリを超えることができるかどうかは難しい状況が続いている。
一方のMRAMは,FDDやHDDと同じく磁気によってデータを記憶するメモリであり,スピン依存電気伝導により生じる強磁性トンネル磁気抵抗効果(Tunnel Magneto Resistance:TMR)素子を用いたものである。Infineon TechnologiesとIBMが共同で16Mビットの試作品を開発した他,Motorola(現Freescale Semiconductor)が4Mビット品の量産を行っているが,05年2月にはCypress Semiconductorが,MRAM商業化のために創立した子会社Silicon Magnetic Systems (SMS)を売却する意向であることを発表している。
Cypressの事業売却の背景には,莫大な開発および設備投資を行ってもSRAMのビット単価よりも高いビット単価しか実現出来ず,そのコストを容認できるニッチ市場を除いて市場が拡大する見込み無いという同社の判断が存在している。
次なる本命は相変化メモリか
これまで本命視されてきたFeRAM,MRAMに代わる次世代メモリとして,PRAMやRRAMの実用化へ向けた動きが急速に増してきている。
PRAMはそのメモリ現象自体は30年以上前から知られており,同メモリに関する特許の多くを持つOvonyxは独自の相変化メモリの技術をIntelやSTMicroelectronics,エルピーダメモリなどライセンスし,各社それぞれと研究を行っている。また,Samsung Electronicsも独自技術と思われるPRAMの開発を進めており,04年に64Mビットの試作品製造に成功し,06年頃の実用化を目指している。この他にも多くの半導体デバイスメーカーが研究開発を進めており,05年5月にはIBM,Infineon Technologies,Macronix Internationalの3社が共同でPRAMの研究開発を行うことを表明した。InfineonとIBMは00年より共同でMRAMの開発・製造を行っており,04年には16MビットMRAMの試作を発表していた。
今回の3社共同研究と従来のMRAMビジネスの間には,なんら関係は存在していないとしているが,フラッシュメモリメーカーであるMacronixを自陣に引き入れることで,MRAMからPRAMへと次世代メモリの中心路線を変更したことはおそらく確実で,今後の次世代メモリに対する世界的な流れに大きな衝撃を与えるもののように思われる。
一方のRRAMは,MRAMと同様の材料を用いるメモリで,02年にSharp Laboratories of Americaとシャープ,University of Houstonが共同発表した内容が大きな話題を集めた。しかし材料は同じであっても,記憶原理はまったく異なっており,電圧パルスにより抵抗値を変化させて記憶するメモリである。シャープでは次世代メモリの本命になるが,ある程度の開発期間が必要と見ていた。しかし,04年にSamsung ElectronicsがNiOを用いたRRAMの試作に成功したことを発表,数年以内での実用化へ向けた期待が一気に高まった。
ただし,RRAMの動作原理にはまだ不明な部分が多く存在している。そのため,本当に数年以内の実用化が可能なのか,という懐疑的な見方も根強く残っており,今後の動きに注目する必要がある。
図1 不揮発性メモリに求められる要求性能ロードマップ
出所)新エネルギー・産業技術総合開発機構