多様化する次世代メモリ
エルピーダメモリの次の一手
相変化メモリの実用化加速
07年に商用化を目指して検討中
小林行雄/編集部
日立製作所とNECの合弁により誕生した日本で唯一のDRAM専業メーカー エルピーダメモリ。同社はDRAMの次に来る次世代メモリとして相変化メモリに注目。05年2月に米Ovonyxと相変化メモリに関する技術契約で基本合意に達した。同合意により,エルピーダはOvonyxと共同で相変化メモリの本格的な研究開発を推し進めることとなり,実用化に向けた動きを加速させている。同社は早ければ05年中のTEGの製造,06年のサンプル出荷を経て07年には量産の実現を目標としており,他社に先駆け大容量の次世代メモリを供給する体制が整いつつある。
エルピーダの戦略
1. プレミアDRAM戦略
エルピーダメモリが事業を推進するにあたって,他のDRAMメーカーとの差別化を図るために行ってきたのがプレミアDRAM戦略である。同戦略は,DRAMに高性能・高機能といった付加価値を求めるアプリケーション(サーバ向けやモバイル向け,デジタル家電向けなど)を製造するカスタマと良好な関係を構築することで,PC向けDRAM市場に比べ安定した利益を確保することが可能である。
2. 外部委託先の活用と先端プロセス技術

図1 エルピーダの出荷ビット数増加予測
同社のDRAM生産の一翼を担うのがSemiconductor Manufacturing International(SMIC)とPowerchip Semiconductor(PSC)の2社の外部ファンドリメーカーである。
03年に提携を行ったPSCに対しては05年4月に社外取締役を派遣することを発表している。同派遣には,協力関係の強化が存在している。現在,PSCはエルピーダから技術供与を受け, DRAMの製造を受託している。供与されている技術は100nmプロセスだが,将来的には90nmプロセスの提供も為される予定である。一方のSMICに対しては100nmプロセスの提供が行われている。
エルピーダでは,05年内の90nm量産プロセスの立ち上げと80nmプロセスの開発完了を計画,90nmプロセス製品の比率は05年第1四半期5%であったものを同第3四半期には15%以上に引き上げる計画である。
相変化メモリに白羽の矢
05年2月にエルピーダは米Ovonyxと相変化メモリ(PRAM)に関する技術契約の基本合意に達し,本格的に実用化に向けた開発を開始した。
両社の研究の進め方は,両社間にて頻繁にミーティングを行い,エルピーダがチップレベルでの研究,OvonyxがTEGレベルや材料そのものの評価と役割を分担して行っている。
1. Ovonyxとの提携の背景
エルピーダがOvonyxと技術契約に到った背景には,プロセスの微細化が進みDRAMでも90nmプロセスを採用した製品が登場している現在,微細化によるDRAMの性能限界が見え始めたことにある。これまでDRAMは微細化により,高速化と低消費電力化を実現してきた。同社のプレミア戦略に代表されるようにDRAM市場が多様化しているという点が次世代メモリへと同社が関心を高める大きな要因となっている。
例えばモバイル用途には低消費電力は勿論のこと,電池不要のフラッシュメモリのようなメモリが向いているが,フラッシュメモリの速度はDRAMやSRAMといったRAMに比べ遅いという欠点が存在している。また,デジタル家電においても,頻繁にコンセントが抜かれる可能性が高いため,電源が無くてもデータの保存が効き,かつ高速なメモリが適している。こうしたアプリケーションに対し,最適なメモリは何かを考えた場合,フラッシュメモリとDRAMの中間に位置する特性を持つ高速な不揮発性メモリという解が浮上してきた。
何故,エルピーダはPRAMを次世代メモリの候補として選択したのだろうか。これは,同社がOvonyxとの提携以前から相変化メモリの基礎研究を続けてきていたことが一つの要因となっている。その長年にわたり蓄積された相変化メモリの技術的なノウハウがあったために,同社としては他の次世代と称される高速不揮発性を実現するメモリに手を出すよりも比較的実現しやすい技術であると判断したものと思われる。
2. 選択肢はシンプルなメモリ
PRAMは,構造がDRAMのキャパシタ部分をGST(Ga-Sb-Te)膜に変更するだけで原理的には動作するため,エルピーダがこれまで保有してきたDRAMの製造ラインとほぼ同じプロセスを使用することが可能である。そのため,生産性の観点から見た場合,他のメモリに比べ設備投資も含めトータルコストを抑えることが可能となる点が評価されたようである。
また,同社が次世代メモリの選別において重視したのが,メカニカルな部分は勿論,構造,材料に到る全ての面でシンプルであるという点である。特に材料であるGSTは,すでに光ディスクで使用されているため多くのノウハウが存在しており,他のメモリの材料に比べ安易に扱うことが出来る点が挙げられる。
同社で開発が進められているPRAMは,現在の段階ですでに大きな問題点とされていた課題はほぼ全て解決されているという。また,重要な課題である動作速度の向上や低消費電力化などの点についても解決は可能だとしている。
3. 07年には商用レベルの実現を
同社ではこのまま研究が進み,大きな問題が出てこなければ05年中のTEGおよびビーグルの製造,06年にサンプル出荷,そして07年での量産出荷を果たしたいとしている。
最初に商用化が検討されている容量は256Mビット程度を予定しているという。これはPCでの使用では無く,携帯電話やデジタル家電で使用されているDRAMの代替を想定したものである。そのためメモリの書き換え回数もPC向けメモリと比べ少なくて良いと判断しており,すでに実現のメドは立っているという。スケジュール的にはかなり早めのような気がしないでもないが,2010年頃に実用化されると言われている45nmプロセスではDRAMの量産が可能かどうかさえ不確定なのが現状である。またこのスケジュールがベストケースであることを踏まえると,DRAM専業メーカーである同社の計画としては決して早いとは言えない。
PRAMが実用化されれば,DRAM,フラッシュメモリといったこれまでの垣根が消失し,アプリケーション側にとっても大きな変化を呼び起こすこととなる。特に,携帯電話やデジタル家電のような小規模なシステムでは一つのメモリで全てを賄うことが可能となり,アプリケーションのデザインなどの自由度も飛躍的に増すであろうと予想される。
なお,同社では,10年以降は高速NVRAMの時代と位置づけており,PRAMの商用化に続き,シンプルな次世代メモリを複数,選択肢として用意することで,今後の動きに対応する計画である。