FPD産業の新潮流 各社が描く成長戦略を読む
超大型LCD工場の生産革新に向け
未知の領域に踏み出した装置・部材メーカー
その技術動向を徹底検証
清水聡/調査部 粕谷陽介/編集部
薄型TVの隆盛期を迎え,パネルメーカー各社は大型新工場への設備投資を積極的に続け,ガラス基板の大型化で大画面化と低コスト化に対応している。第9世代のガラス基板は,サイズが2400mm×2800mm,カセット重量も2000kg以上となり,まさに大工場が必要となる。今後は環境に優しい「省スペース・省エネルギー・クリーンエリアの極小化」を実現するLCD工場も求められる。このような現状を踏まえ,さらなる大型化・省エネ化・高性能化を実現する装置・部材の最前線ではどのような開発が繰り広げられているのか。その最新動向をプレスジャーナル主催の第11回FPDシンポジウム「次世代超大型液晶工場の生産革新」における主要装置・部材メーカーの講演からレポートする。
依然として進むガラス基板の大型化
FPD産業の拡大とともに大型化が進んできたガラス基板だが,00年以降,加速度的に大型化が進んでいる。そして05年にはSamsung Electronicsが第9世代の計画,06年に入ってからはシャープが第10世代の立ち上げ計画について発表するなど,ガラス基板の大型化の波は依然として衰えていないのが現状である。第9世代では,60型のワイドパネルが6面取りでき,第10世代では,64/65型が6面取りできるが,ここで懸念されるのが,第9世代が本当に導入されるのかという点である。過去の拡大競争は他社よりも少しでも大きな基板の採用で優位性を得ようとするものであったが,第9世代では計画段階ですでに第10世代の計画をシャープなどが進めており,その論理からすると第9世代は市場競争力を出しにくい。このため, 2400mm×2800mmサイズは,幻の世代となる可能性が十分考えられる。
第7世代,第8世代までのガラス基板では,基板の縦横比が0.85という延長線で大型化がほぼ進められてきた。これは,16:9のLCDパネルを並べて,利用効率が最適な値で生産しようとした場合の縦横比がこの値となるためである。
表1 ガラス基板サイズとネルの面取れ数

出所)第11回FPDシンポジウム 北原洋明氏 講演資料
しかしながら,第10世代のガラス基板(2850mm×3050mm)ではその縦横比0.93となっている。メーカーからの公式発表ではないため,あくまでも推測であるが,長辺3050mmが現在の製造装置が対応できる限界値であると予測される。だが,長辺を少し長くするだけで70型の生産にも手が届くことからその限界値を超えて,ガラス基板の拡大競争は今後も続いていくのかもしれない。特に装置メーカーにとっては最大の関心事であるガラス基板の拡大競争は,第9世代,第10世代も波乱含みの展開となる。とは言うものの,基板サイズの拡大が無限に続く訳ではない。今後の大競争時代を生き抜くためには,基板サイズの拡大に頼らない継続的な技術革新が必要となる。
次世代の超大型LCD工場

図1 基板大型化によるCoOへの影響
今後のLCD製造工場は,「必要なものを,必要なときに,必要なだけ,ハイスピードで製造すること」が不可欠である。そのためには,(1)経営の先進改革化,(2)地球環境に優しい生産体制,(3)人に優しい生産体制,(4)高効率生産化などの改革に向けた課題が挙げられる。
経営の先進改革化に対しては,競合リード経営(短TAT新生産方式の創造,Time to Market),新製品開発(オンリーワン製品の開発),高効率経営(仕掛り在庫ゼロで最優良キャッシュフロー化),コストダウン(イニシャルコスト,ランニングコストの削減,生産技術革新化)。地球環境に優しい生産体制に対しては,省スペース化,省エネルギー化,クリーンルームのクリーン度をクラス 1000からクラス10000へ向上などが必要となる。
また,人に優しい生産体制では,窓付きクリーンルームの採用,クリーントイレを備えたクリーンルームの採用が,最後の高効率生産化については,プッシュ生産方式からプル生産方式,バッチから枚葉式生産方式,ジョブショップからフローショップ生産方式への変革が不可欠と言える。
主要製造装置の動向
1. スパッタリング装置
ここでは,LCD向けスパッタリング装置のリーディングメーカーであるアルバックの枚葉式スパッタ「SMDシリーズ」の詳細を紹介する。同シリーズは94 年より市場投入された。当初はスパッタ工程において,デポダウン方式を採用していたが,ITO・高融点金属成膜などにおいて,パーティクルに課題が残っていた。そのため同社では,基板を立て,側面から成膜を行う方式を採用し,パーティクルの低減を実現した。その後,第4世代対応装置から,従来のマルチチャンバタイプながらも省スペースおよび多機能を実現したXシリーズをリリース。Xシリーズは,一つのチャンバにカソードを複数設置し,基板を回転させることにより,多層膜を形成できるため,生産性を大きく向上させている。
また基板の大型化により,従来のマルチチャンバ方式ではフットプリントや製造コストが問題となった。これにより同社では,第7世代以降から縦型枚葉方式のスパッタを開発している。
一方,枚葉式スパッタでは,従来のDCスパッタリング方式を用いたカソードでの均一な膜形成が困難となった。これは,基板の大型化によりカソード面積に対するアノード面積が小さくなり,プラズマがアノード近傍である外周部に集中することに起因する。そのため同社では,第7世代対応装置より,ACスパッタリング方式を採用したカソードを導入している同方式では,隣接するターゲットが交互にカソード/アノードに切り替わり,グランドや基板サイズに関係なく,閉じられた中で放電することができ,大型基板でも均一な膜特性を実現できる。なお同社では,第8世代以降の装置については基本的にスケールアップと考えているが,輸送の問題,加工の問題などがあり検討の余地があるとしている。
2. 洗浄装置
基板の投入面積比率を00年を基準として比較すると,04年には5倍,06年には12倍,08年には20倍に近いところまで拡大すると見込まれる。これには当然のことながら,基板の大型化が影響しているが,この大型化はCoOにも大きく影響している。
基板の大型化に伴い,生産スピードは低下し,ユーティリティの使用量も増大し,プロセスの効率も低下してしまう。さらに,メンテナンスの難しさから人件費の増加も避けられない。無論装置メーカーとしては,各要素の効率化・低減が求められ,洗浄装置でも様々な取り組みがなされている。その最たる例が,芝浦メカトロニクスによる縦型枚葉洗浄方式の採用である。従来の水平搬送方式の洗浄装置では,ガラス基板の撓みの影響で液だまりが発生しまう場合があった。しかしながら,縦型では,高速流速の発生に洗浄効率が大幅にアップしている。同方式では,シャワーヘッドは基板に対して垂直に設置され従来と変わらない。だが薬液は基板の傾斜による落下効果で高流速を確保でき,剥離処理時間では,従来方式(0°,5°)が170秒であったのに対し,縦型では30秒以下という高速処理を実現,さらに新薬液を用いれば8秒での処理も可能となっている。
3. 配向膜塗布装置
配向膜塗布装置のリーディングメーカーであるナカンでは,第7世代以降の配向膜成膜プロセスにおける基本的な省エネルギー検討項目として,(1)工場内の TFT-LCD製造ライン構成上のフットプリントの最小化,(2)工場内生産スループットの短縮によるユーティリティおよびエネルギーの節約,(3)配向膜成膜の高品位化の追求による品質向上の取り組み,(4)超大型生産装置の発塵予防の徹底,(5)プロセス慣らし運転中の補材の節約,(6)配向膜塗布装置の主要構成部品の長寿命化,(7)総合的な配向膜成膜プロセスの省エネルギー対策のバランスの取れた実施の七つを挙げている。実際に同社がリリースしている第8世代対応装置を見てみると,版胴移動式・フレキソ版転写型で,基板はロボット給排方式を採用,それにより基板1枚当たり50秒という処理スピードを実現している。
4. ラビング装置
ラビングプロセスとは,配向膜に配向性を与えるために専用の布を用いて一定方向に擦って細かい溝を形成することである。ラビングに対して求められる特性は,均一にラビング強度を得ることであり,基板の大型化が進んでも,基本的な部分に変化はない。ここでは,常陽工学による取り組み状況を紹介する。
同社では,均一で安定したラビングを行うため,ギャップ精度,回転ムラ,振動,静電気などの基本特性,タクトタイム,メンテナンス性などの運転特性が損なわれないように十分配慮した装置設計を行っている。そのため,ラビングロールの長大化に対する考慮としては,(1)自重撓みの低減,(2)ロール交換の容易さ,(3)布巻きの確実性,(4)ロール平行度の確保,(5)ロール外径の精度確保,(6)ロールクランプ部,駆動部の剛性確保に留意し,一方,ラビングテーブルの巨大化に対する考慮としては,(1)テーブル移動精度の確保,(2)テーブル架台の剛性確保,輸送限界に関わる配慮,基礎に対する配慮に留意している。
5. CVD装置
プラズマCVD装置のトップメーカーであるエーケーティーでは,信頼性と低リスクに重点を置いた装置開発を行っている。周知の通り,LCD産業はパネルメーカー間で激しい競争が繰り広げられている。LCDパネルメーカーでは,少しでも早く,少しでも大きな基板の生産ラインを立ち上げて,生産に寄与させなければならない。そのためには,装置を納入したら即生産に寄与すること,それが重要なポイントとなる。
一方で,装置メーカーとしては,新たな技術を投入した装置をリリースしたいが,わずか1年で次の世代の装置を開発せねばならず,必然的にスケールアップに終始してしまうジレンマがある。そしてその傾向は,後1回は続くものと思われる。
とは言うものの,同社では膜の均一性を大幅に向上可能なプロセスチャンバ「APXL」を開発。どのような改良が行われたのか,詳細は特許の関係もあり明らかにはされていないが,上部電極の表面形状・デザインを従来とは一新しているようだ。
6. スリットノズルコータ
東レエンジニアリングは,スリットノズルコータで,非感光性ポリイミド樹脂を原料とし,中小型用カラーフィルタ(CF)を製造。第5世代以降については, CFを製造せず,材料およびプロセスノウハウ,スリットノズルコータの販売を行うビジネスモデルである。スリットノズルコータでは,ノズルとガラス基板の隙間が均一である必要があり,塗布された膜の形状はその隙間と塗布速度,塗布材料の量で決まる。塗布材料の量を制御するため,ノズルの近傍にシリンジ型のポンプを設置。このポンプ速度とノズルの動作を正確に同期することが重要で,特に基板が大型化するとノズルの重量化,材料の増加が生じ,起動と停止の部分が非常に難しくなる。
第8世代以降の課題としては,撓みのない大型ノズル,大容量・高速応答・メンテナンスフリーのポンプ,大型ノズルを精度良く低振動で加速できるステージなどの作成,タクトタイムの短縮などが挙げられる。同社では,2400mmの口金を持つノズルにおいて,材料取り入れ口であるマニホールドの最適化により,材料を内部で対流させることなく,端部までの広い幅に均一な塗布を可能とする他,材料の気泡発生を自動的に消滅することを実現。ちなみに,材料への添加剤の量調節で,塗布速度や膜の均一性を調整できるとしている。さらに,同社のポンプとノズルの併せ技で,乾燥後の膜厚1.5μmに対して±3%の均一性を実現している。一方,ノズルの大型化,塗布速度の向上で,加速が大きくなり,その反力で床が揺れる。よって,塗布開始部に振動が生じ不良原因となる。そのため,同社では,床の揺れやすい周波数を持たない,加速を行う制振制御で対応している。
7. ガラス基板対応検査装置
大型ガラス基板対応検査装置へのニーズとして,TV用途では微細欠陥検出(□15μm),第5世代サイズ同等レベルの検査タクトが必要とされる他,検査機側でリペア装置の負荷を低減することなどが挙げられる。そのため,タカノでは,高速化・高性能化・高機能化を意識した検査装置の提供を行っている。同社の検査装置の取り組みでは,カメラから取り込まれた画像を高速に処理する画像処理装置を開発,検査処理の負荷率を分散させる分散型処理ボードを複数枚使用することで,あらゆる処理を可能とする。ちなみに,カメラの開発も進めており,第8世代では7400画素/ラインのスペックを予定,第9・10ではさらなる性能が必要であるとしている。一方,新開発のGFC処理により,カメラのノイズや照明ムラ,良品輝度のバラつきによる欠陥以外のノイズ成分(擬似欠陥)を除去し,欠陥のみを抽出できる。なお,第8世代において,GFC処理を搭載することにより,従来処理と比べてカメラ台数を35%削減(分解能□15μm)できる。以上の結果とカメラの高速化で,検査時間は,第5世代で21秒であったものが,第8世代で6秒を達成している。
高機能化としては,取込画像に対して,複数の並列処理(ミクロ処理,マクロ処理,PSのCount処理)を可能とする他,欠陥周辺部の画像を抽出し,二次処理することもできる。さらに,リペア装置の負荷削減として,AOIに搭載したGray ADC(自動欠陥分類)機能により欠陥の粗選別を行い,次にレビュー機能に搭載したColor ADC機能でGray ADC機能で選別できなかった欠陥の絞り込みを行い,最後に独自画像処理により,レーザ修正と突起研磨修正を自動化することに取り組んでいる。
8. リペア装置
ブイ・テクノロジーは,CF修正装置「Jupiterシリーズ」をリリース。テープ研磨による突起欠陥修正装置,パルスレーザによる余剰欠陥修正装置,マイクロディスペンサによる抜け欠陥修正装置の他,以上の機能を複合した装置がある。同シリーズの特徴は,検査後のレビュー・修正を1台で実現することに加え,高速ステージの採用により,第7・8世代において移動速度1600mm/秒で処理できる。テープ研磨では,まずセンサで欠陥高さを測定し,その高さに基づき研磨ヘッドを下降させ研磨を実行後,もう一つのセンサで欠陥高さを測定するシーケンスとなっている。一方,レーザリペア機能では,レビューする光学系(顕微鏡)内に同軸でレーザを同行,スリットを通して丸型を四角型に成型する。顕微鏡はスライダ式の5本のレンズを搭載,各倍率を選択可能となっている。なお,搭載されている高繰り返しパルスレーザユニットは外販も始められている。
マイクロディスペンサは,前述の顕微鏡近傍に設置され,レビューをしながらの塗布が可能。また,インクカートリッジに4材料(CFの場合:RGB+ブラック)を入れることができる。さらに,塗布時間が1ポイント当たり15秒程度,最小ドットサイズが10μm程度である。なお,インクはUV硬化型となっており,硬化用のファーネスが不要である上に,硬化前後の体積変化が少ないため,膜厚制御が容易なことに加え,ディスペンサ先端の乾燥が防止でき,安定塗布が可能である。
一方,マイクロディスペンサは,Agペーストを使用して線状に塗布することで,TFTオープンリペアにも対応可能である。ちなみに,塗布時間が40μm程度,最小線幅が10μmとなっている。なお同社では,CrマスクピンホールリペアやPIピンホールリペアにも応用できるとしている。
9. 搬送システム
基板世代の移り変わりとともに,基板搬送装置では必ずエポックがあった。しかし,第6〜第8世代では,その移り変わりが急速であったため,ほとんど変化がなかった。そのため,極論すれば従来方式を拡大コピーしてきたと言える。現在主流であるカセット搬送方式は,各工程間の生産性の違いへ対応する他,基板などについても柔軟に対応できる。しかし,基板大型化により,搬送機器の大型化,クリーン度の達成,Fabレイアウトなど問題がある。ちなみに,第8世代ではカセット重量だけでも1.5t,高さが2m程度となる。そのため,カセット搬送インラインストッカ方式では,ストッカの搬送能力の限界が生産能力を規定するため,新方式が待たれる。そこで,村田機械によると,現在,枚葉インライン生産方式が検討されているという。同方式では,タクトタイム短縮,WIP削減,巨大で重いカセットを扱わずに済む利点がある。一方で,装置の信頼性を含む稼働率の他,基板処理時間アンバランス吸収,段取り替え時間吸収,装置ダウン時間吸収などバッファ制御,制御システム,レイアウトなどの課題がある。
枚葉搬送への第1段階として,ロボットを使用するとカセット搬送から抜け出すことができない。そのため,ロボットをなくしストッカから直接装置に基板を受け渡すことが必要である。同社によると,同方式ではクリーンルーム面積を最大20%縮小できるという。なお,第8・9世代では,ローラコンベアでは対応できず,エア浮上式で行う必要がある。同社の工場では,同方式の第8.5世代が稼動中である。
最後に,枚葉生産に必要な標準化活動も始まり,機械的なインターフェースで規格ができつつあり,情報制御の面でも標準化の方向が見えてきている。
関連部材の動向
1. ドライバIC
LCDの大画面・高画質化により,表2のようにドライバICへの要求が高まっている。一例として,画素数増大では,多数のドライバICを必要とするため,多出力のドライバICの要求。また,高速データ伝送のための高速インターフェースの搭載などである。これらの実現には,様々な懸念が生じる。NECエレクトロニクスでは,多出力のドライバICによるドライバ品種増大に対応するため,三つの出力を切り替えできるマルチチャネルを導入。一方,多出力化によるファインピッチに対応するため,パッケージを従来のTCPからCOFに置き換えている。
表2 LCD高画質・大画面化に伴うドライバICへの要求

出所)第11回FPDシンポジウム 中島啓一氏 講演資料
多階調化においては,従来の8ビット・ドライバでは,低階調側での再現性が足りない,RGB間で調整できない,コントラストが足りないなどの問題がある。そのため,同社では,10ビット・ドライバ(リニアDACによるプログラムγ化)を06年より量産する。一方,大型パネルの駆動・発熱問題に対して,50 型以上では,発熱を抑えるため,最良の解決策ではないが2倍のドライバICを使用することを提案。また,パッケージの熱抵抗は,配線パターン,断面形状などで大幅に変わるため,シュミレーションを行うことで,解決を図っている。その他,高速インターフェースでは,従来のバス接続ではドライバICの個数が変わっても配線数は同じであり,また共通にぶら下がるドライバICの影響(負荷)でスピードが上げにくいなどの問題がある。そこで,同社はPoint to Point接続(1:1接続)を提唱,これによりドライバICの個数が少なければ配線数が減らせる上に,1:1で接続されるので他のドライバICの影響を受けず,スピードが上げやすいという。
2. 光学機能性フィルム

図2 低レターデーションの効果
(IPS液晶への適用:カラーシフトの改善)
LCDのTV用途への拡大により,LCD画面面積は飛躍的に拡大,光学機能性フィルム市場も拡大している。富士フイルムでは,TACフィルムの生産量に向け,06年10月より九州工場を立上げ,その後の設備拡張で08年に05年比2.6倍の生産能力向上を目指す。一方,同社のWVフィルムは,15・17〜 18型のPCモニタで90%以上の搭載率を誇り,19型でも急激に搭載率を高め80%に達している。そのため,同社では,05年にF6号機を立ち上げ, 06年にも既存機能力の増強を行っている。今後は,PCモニタの大サイズ化,中型TVへの搭載,OCB-TVの普及拡大が考えられることから,さらなる設備増強の必要があるとしている。
次に同社のフィルムの概要を説明する。TACフィルムは,光学的異方性が少ないため,偏光子保護フィルムとして使用される他,位相差フィルムとしても応用可能である。また,添加剤や延伸によりレターデーションを制御でき,例として高レターデーションではVA液晶用の位相差フィルム,低レターデーションでは IPS液晶への適用でカラーシフトの低減が可能である。
一方,WVフィルムは,LCDの視野角拡大の効果を得られるフィルムである。新製品「WV-EA」は,上下左右160度以上の視野角,コントラスト比 680:1を実現している。また,従来製品と比べて,黒輝度の視野角依存性低減,白表示でのカラーシフトを低減している。なお同社では,OCBモード用 WVフィルムも上市している。一方,同社のCVフィルムは,優れた反射防止機能,体擦傷性,防汚性,耐薬品性を有し,全ての液晶モードに適応している。
同社は,今後の開発戦略として,フィルムの構造を単純化してのコストダウン,フィルム性能の向上,均一性と信頼性の向上などを挙げている。
3. フォトマスク
フォトマスクとは,ガラス基板上にクロムなどの金属薄膜を成膜したブランクスに,金属パターンを形成した原版であり,LCD製造の露光工程で基板へのパターン焼付けに使用される。TFT-LCDフォトマスクには,CFおよびTFTアレイ用の2種類があり,LCD1品種当たり,それぞれ数枚が使用される。 1m角を超える大型マスクでは,線幅数μmというパターン形成を均一に行うことが非常に困難となっている。特に,レジスト塗布や描画,洗浄において,均一性,安定性を実現するため,技術的にかなり追い込まないと顧客のニーズに対応できなくなっている。さらに,梱包および輸送において,クリーン環境の維持,耐振動・耐衝撃などが重要となっており,輸送に対する負荷が増大。その点からも,消費地生産の重要性が増している。HOYAでは,日本・韓国・台湾でのフォトマスク生産を行っている。また,第8世代用(1220mm×1400mm)をリリース,1回の露光で57型を1面,47型を2面,32型を3面カバーできる。一方,同社は,LCDメーカーの生産効率,工程の簡略化,高歩留り生産に寄与するため,露光工程が削減できるマルチトーンマスクの提供を始めている。マルチトーンマスクには,二つの種類があり,ハーフトーン露光領域が露光機の解像限界未満の微細なパターンで構成されたグレイトーンマスクとハーフトーン領域に半透過膜を設置したスタックドレイヤマスクとなっている。なお,同社は,フォトマスクの品質・供給がLCDパネルの製造コストを左右するものと考え,ユーザーの抱える課題・リスクをいかに解決・低減できるかが求められるとしている。