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イノベーションを創出 ナノテク・MEMS

東大,産学連携組織を設置
産学共鳴によりビジョンを共有
目指すは世界的拠点の形成

小林行雄/編集部

東大は,ナノエレクトロニクスや情報科学に立脚して新たなイノベーションを 創出することを目的として,「ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構」を06年10月に設立した。同研究機構は東大のみならず国内外の大学や研究組織と連携がなされる他,シャープ,NEC,日立,富士通研究所の4社が参画,新しいスタイルの産学協働研究開発が進められている。同研究機構の概要を同研究機構長である荒川泰彦教授に伺った。

内外と連携を図る

1. 06年10月に設立

東京大学は,ナノエレクトロニクスや量子暗号通信,量子コンピュータなどのイノベーションと人材育成を図る目的で,産学連携組織「ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構(Nano Quine)」を06年10月に設置した。Nano Quineは,ナノテクノロジーや量子科学,ITに立脚して,将来のユビキタス社会を実現するために求められる超ブロードバンド,超低消費電力,安全性を備えた情報ネットワーク実現に向けた次世代デバイスの開発とともに,高度な量子暗号通信や量子コンピュータの基盤技術を研究開発するために設立された組織である 。

2. 学外とも連携

Nano Quineには,様々な技術の融合を図るため,東京大学内の生産技術研究所,先端科学技術研究センター,工学系研究科,情報理工学研究科,理学系研究科,物性研究所などから関連した研究者が参画している他,京都大学や北海道大学,慶應義塾大学などの国内大学および情報通信研究機構(NICT)などの研究機関と連携を行っている。また海外では米スタンフォード大学や独ミュンヘン工科大学,英ケンブリッジ大学などの欧米の大学とも連携を図り,この分野における世界的な研究拠点の形成を目指している。

3. 4社の協働企業

また,Nano Quineは06年度科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」事業の一つとして採択された「ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点」プロジェクトを推進する中核研究組織となっている。同プロジェクトの協働企業としてシャープ,NEC,日立製作所,富士通研究所の4社が参加しており,Nano Quine内にそれぞれ「東大シャープラボ」,「東大日立ラボ」などと称する東大企業ラボを設置した他,企業側にも東大分室を設立することが計画されている。

Nano Quineでは「T型連携」と呼ぶ新しいスタイルの産学協働研究開発を推進している。T型連携とは,企業と大学のグループの間で特定のテーマを設定することで,それをT字の中心の幹に見立てて目標に向かう連携方法である。また,企業が大学に入ってくることで,大学の研究グループと直接的に緊密にビジョンを共有することが可能となる他,他の研究室を見ることによる新たなシーズの探索が可能となる。このような横のつながりがT字の横の線を表しており,企業ラボを大学のキャンパス内に作ることは,企業側にとっても大学側にとっても意義のあることとなっている。

三つの研究部門を設置

1. ナノ量子情報エレクトロニクス研究部門

Nano Quineは,「ナノ量子情報エレクトロニクス研究部門」,「次世代ナノエレクトロニクス研究部門」,「量子情報科学技術基盤研究部門」の三つの研究開発部門を設けている。

図1 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の組織図
図1 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の組織図

ナノ量子情報エレクトロニクス研究部門では,単一光子発生デバイスなど,量子情報デバイスのさらなる高性能化を図り,量子テレポーテーション,量子中継などを含むより高度な量子暗号通信システムや量子コンピュータのプロトタイプ実証が進められている。

2. 次世代ナノエレクトロニクス研究部門

次世代ナノエレクトロニクス研究部門では,量子ドットやフォトニック結晶などのナノ技術を駆使して量子ドットレーザをはじめ,ナノデバイスのさらなる高性能化や次世代フレキシブルエレクトロニクスにおける有機トランジスタの高性能化が図られている。

3. 量子情報科学技術基盤研究部門

量子情報科学技術基盤研究部門では,ナノ量子情報エレクトロニクス研究部門ならびに次世代ナノエレクトロニクス研究部門の技術基盤としてナノ技術の確立と量子物性科学を探求し,量子状態の完全制御を目指す取り組みが進められている。

大学のシステムを改革

1. 8月には国際スクールの開催を企画

Nano Quineでは研究開発と併せて組織や教育・人材育成,知的財産などについて,これまでの大学の枠にとらわれない様々なシステムの改革が進められている。

07年2月には教員人事についての選考委員会が開催され,同年4月からの本格的な取り組みが開始される。この人事は連携している大学から兼任教授という形で招聘することも含まれている。また,国内のみならず海外からも教員を呼ぶことも計画している。

なお,海外との連携として,複数の大学と枠組み作りが進められている。07年8月には,世界中から学生を集めた国際スクールを中国北京で開催することも計画されている。

2. 水平・垂直統合型人材を育成

教育・人材育成については,大学から企業まで幅広く活躍できる人材の育成を目標に,産学協働に重点を置いた育成を目指している。このため,大学院教育でナノ量子情報エレクトロニクス分野の横断型教育プログラムも立ち上がりつつある。これにより,理学,工学,産業応用をシームレスに俯瞰することが可能となり,活躍できる水平・垂直統合型人材の育成が可能となると考えられている。また,大学院への新しいコースの設置も検討されている。これは,一つの講義が複数の大学院の科目として扱われるというユニークなものとなっている。さらに,人材育成の一環として,企業での集中講義を開催することで,企業側と学生側の交流を図ることも計画されている。こうした取り組みを推し進めていくことにより,産学で意識の共有が可能となり,本当の意味での産学共鳴が成されることとなる。

3. 段階的な開発目標を設定

研究開発の取り組みは,段階的に達成するべき開発目標を設定している。まず3年後までに機構としての基本的なシステム改革を行う他,量子ドットレーザやフォトニック結晶などのナノ光デバイスの高性能化を図り,実用化への可能性実証を行う。システム改革に関しては,体制の大枠はほぼ構築されており,今後の2年間でより厚みのある組織へと改革が進められて行く。7年後には必要に応じた機構の拡充および強化を行う他,量子状態制御デバイスの開発により,量子中継など,量子情報通信ネットワーク実現に向けた基礎研究を推し進めることが予定されている。そして10年目には人材育成プログラムのさらなる改善を図るとともに,量子中継を用いた量子もつれ状態の鍵配送実験を実現し,長距離量子暗号システムの実現性を確立することが予定されている。


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