FPD業界をさらなる隆盛に導く新技術・製品
薄型TVで天下を獲るデバイスは何か
LCD/PDPを追うSEDや有機ELの将来性
製造装置メーカーから見たFPD業界
粕谷陽介/編集部
本稿では,薄型TVにおける現在の形勢および製造装置メーカーから見たFPD業界の現状を,筆者の独断的な考えも交えながら述べる。
薄型TVにおける天下の形勢
FPDは,モニタやノートPC,携帯電話やPDAなどの情報携帯端末,デジタルオーディオプレーヤ,または広告・POP用として,さらにはTV用途にまで採用され,その市場は依然として成長期の真っ只中にあるといっても過言ではない。

図1 当社推計によるLCD製造装置の世界市場推移
薄型TVにおいては,LCDとPDPが激しいバトルを続けている。大型化に優位性を持っていたPDPに対して,LCDも技術革新を続け大型化を実現した結果,40〜44型においてPDPのシェアを奪いつつあるなど,LCDが優位性を見せ始めており,不動の地位を確立する時期がそう遠くない日に迫っているという考え方もできる。しかし,日本の歴史を振り返って分かる通り,天下統一寸前の織田信長が謀反で殺され,その天下を手中に収めた豊臣家に取って変わり,徳川家康が200年を超す太平の世を創出したように,未来を見通すことは難しい。よって,薄型TVにおいても,No.1の地位を占めるデバイスを予測することには慎重を要する。
その中で,第3番目の男として注目されるのが,画像の美しさを誰もが賞賛する有機ELディスプレイおよびSEDである。しかし,SEDは,度重なる量産の延期に加え,ライセンス契約の問題が発生するなど,量産実現に向けて瀬戸際に立たされている。一方,有機ELディスプレイは,07〜08年度に一部のパネルメーカーによるTVに向けた量産開始の動きなども伝えられており,コストや大型化の課題をクリアすればLCDやPDPと十分に渡り合えると考えられる。しかし,鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギスというように,機が熟するまで辛抱強く待つことは許されない。LCDやPDPが天下の大半を占め,不動の地位を確立する前に,スピード感を持って市場に進出する必要があり,時期を損なえば,遅く生まれすぎた独眼流となる可能性を持っている。
製造装置からみたFPD業界
近年の展示会では,パネルの大型化ばかりが目立ち,過去に多く目にした性能面でのブレークスルーを見ることが少なくなったという声もある。ある意味では,LCDやPDPなどは確立された技術となってきており,太陽電池や燃料電池といったポストFPDに未来を模索する動きも見られる。しかし,今後も,パネルの高性能化はさらに進むことは確実であり,その鍵を握っているのは部品・材料といわれている。
一方で,製造装置も,引続き,高性能化やスループットおよび歩留り向上などが求められており,特にパネルメーカーからは,さらなるコストダウンが強いられている。シリコンサイクルが安定し,デバイスメーカーの設備投資の波が落ち着いてきたといわれる半導体業界に対して,FPD業界では,毎年のようにパネルメーカーによる設備投資の波があるといわれ,製造装置産業は,旨みの少ない産業であるといった見方もある。しかし,その中でも,製造装置メーカーは,コストダウンおよび技術のブレークスルーを達成するために日夜努力を行っている。筆者としては,コストダウンによる競争は,業界にとって幸福な結果をもたらさないと考えている。価格で釣るのは一時の顧客,製品の良さで得るのは永久の顧客といった言葉があるように,製品の良さで勝負する産業形態が望ましいと考える。しかし,この荒れ狂うように吹きまくるFPD価格下落の風の中で,どこまで製造装置メーカーが利潤を出しながら,発展していけるだろうか。その見通しこそ,最も困難で推し量り難い問題となっている。