FPD業界をさらなる隆盛に導く新技術・製品
ClairvoyanteのPenTile RGBW技術
独自のピクセル構造と人間視覚工学を利用
高解像度LCDの高輝度・低消費電力実現へ
粕谷陽介/編集部
Clairvoyanteは,高解像度のLCDを,高輝度を保ったまま,しかも低消費電力で達成できる「PenTile RGBW」技術を保有する。同技術は,海外および国内のパネルメーカーやドライバICメーカーにおいて,導入または導入に向けた動きが加速しており,今最も注目すべき技術である。本稿では,同技術の実態についてレポートする。
Clairvoyanteの概要

▲PenTile RGBW技術を使用した画像
00年設立のClairvoyanteは,米国・カリフォルニア州に本社を置き,社員数17名,全世界における特許出願件数は477件,数多くのベンチャーキャピタル投資によって出資された会社である。同社は生産拠点を持たず,IPをライセンスしている。そのIPとは,高解像度のLCDを,高輝度を保ったまま実現する「PenTile RGBW」技術である。同技術は,低消費電力が達成できるため,バッテリーで駆動する中小型のディスプレイに適応する。
携帯電話についての現状
携帯電話に占めるLCDの消費電力の割合は,以前は大きくなかったが,解像度がQVGA,さらにVGAおよびワイドVGAが主流となる中で,その割合が非常に大きくなっている。また,TVと動画を扱う装置では,最低でも輝度600nitが必要となる。現状では,携帯電話にて動画を見る際,ユーザーは暗い画面で視聴することを強いられている。そのため,同社では,快適な使用のため,最低でも輝度400nitが必要であるとし,それを消費電力を増大させずに達成することが重要であると考えている。その上,現行の技術を改善するだけでは,前述の課題を克服するのは難しいとし,PenTile RGBW技術を生み出した。
PenTile RGBW技術の概要

図1 開口率の向上(右:PenTile RGBW)
従来のLCDでは,赤(R)緑(G)青(B)の三つのサブピクセルにより一つのピクセルを構成している。一方,PenTile RGBW技術では,RGBに白(W)を加え,二つのサブピクセルによって一つのピクセルを構成している。そのため,VGAでは,従来技術と比べ,ある条件の下において,白ピクセルと約50%の開口率の向上の組み合わせで輝度100%増に,サブピクセル数が減少すためコントラスト比が25%増となる上に,広色度域のカラーフィルタを使用しても,中間から白にかけての色を非常に明るく表示できるという。

図2 高輝度化(左:RGBストライプ,右:PenTile RGBW)
また,データドライバ数を3分の1減らしても,解像度が下がらないことが特徴となっており,低クロックレート化が可能となり,EMIを低減できる。加えて,輝度の向上により,バックライトのLED数を減らすことができることで,低消費電力を実現する。以上の結果,製造コストを削減でき,歩留り向上を可能にする。

図3 白点表示の比較
技術的に詳述すると,RGBの固定されたピクセルで構成される従来の方式に比べ,PenTile RGBW技術では,サブピクセルレンダリングにより,RGBWそれぞれの原色を独立した形でコントロールすることで,より効率的(少ないサブピクセル)な画像構成を実現し,視覚解像度を向上させている。具体的には,従来のLCDは,白点表示をする場合に,RGB3色を同時に100%発光させている。一方で,PenTile RGBW技術では,BWピクセルがセンターにある場合,BWを50%,色補正のため周囲のRGをそれぞれ12.5%発光させ,RGピクセルがセンターにある場合,RGを50%,周囲のBWを12.5%発光させることで白点表示を可能とする。つまり,人間の視覚工学を利用している。そのため,同技術を成立させるための条件があり,それはディスプレイから人間の目までの距離間において,2.8型VGAの携帯電話では20cm程度,14型UXGAのノートPCでは40cm程度,42型HDTV(1280×720)では150cm程度を必要とする。
PenTile RGBW技術を使用するための計算エンジンは,基本的にどこにでも搭載でき,ドライバICやベースバンドプロセッサ,デジタルスチルカメラのDSPチップ,また従来製品のRGBシグナルの途中を切断し,ブリッジを挿入することもでき,非常に自由度が高くなっている。
PenTile RGBW技術採用の動き
BOE HydisやChunghwa Picture Tubes(CPT),AU Optronics(AUO),LG.Philips LCD,Wintekなどは,PenTile RGBW技術を採用したLCDパネルを製作し,展示会などに出展している。また,日本メーカー数社においても,評価中または量産を見据えての評価などがされており,前向きな検討が行われている。さらに,Tomato LSIやSilicon Worksでは,PenTile RGBW技術を導入したドライバICを製作している。なお,最初の同技術を採用した製品が,海外メーカーより,スマートフォンとして07年末に登場する予定である。