半導体・FPDの今 主要メーカーの戦略
半導体は在庫調整が終了し成長局面へ
FPDでは低価格化がパネル・部材に明暗
両産業の現状,今後の展望はいかに
清水聡/調査部 小林行雄/編集部
半導体市場は在庫調整が進んだ結果,デバイスメーカー各社ともに07年第1四半期の決算では減益を記録した。しかし,在庫調整は同四半期で終了したとの見方が各デバイスメーカーから出てきており,今後も緩やかな成長が続いていくことが見込まれている。一方,堅調な成長を続けてきたFPD市場であるが,昨今の低価格化の影響が関連メーカー各社の業績で明暗を分けている。パネルメーカーは収益の悪化で設備投資計画の見直しを図るなど,厳しい状況。しかし,一部の部材メーカーでは,高利益率で大幅な設備の増強を図っている。本稿では,それら半導体・FPD産業の現状をレポートする。
在庫調整の影響で利益が圧迫
半導体市場は,World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)の統計では,06年は前年比8.9%増の2477億1619万ドルと堅調な成長を記録し,07年も緩やかな成長が見込まれている。06年上期からの在庫調整が長引いた結果,デバイスメーカー各社の利益は圧迫され,07年第1四半期の決算業績は軒並み減益を記録したものの,下期にかけ回復基調へ向かうと予測するメーカーも出るなど,半導体市場はまだら模様の様相を呈してきた。
半導体売上高1位のIntelは,07年第1四半期の決算が前年同期比1.0%減の88億5200万ドル,営業利益が同2.5%減の16億7500万ドル,純利益が同18.6%増の16億1000万ドルとなり,5四半期連続の減収となった。利益率も前年同期の55.3%から5.2ポイント減少の50.1%となっている。また,売上高2位のSamsung Electronicsの半導体部門における07年第1四半期業績は,売上高が同3.5%増の4兆4800億ウォンとプラス成長を維持したものの,営業利益は同51.8%減の5400億ウォンと大幅な減益となった。この減益の主な理由はDRAMならびにNAND型フラッシュメモリの販売価格の下落によるもので,特にNAND型フラッシュメモリの販売価格の下落が顕著となっている。売上高3位のTexas Instrumentsも在庫調整の影響から,07年第1四半期の業績が売上高で同4.3%減の31億9100万ドル,営業利益で同5.3%減の6億8000万ドル,純利益で同11.8%減の5億1600万ドルと減収減益を記録した。いずれのメーカーもセットメーカーの在庫調整は第1四半期中に終了し受注も回復傾向にあるとしており,07年第2四半期以降は成長軌道に乗るものと予測している。
好調な出足の製造装置メーカー
一方,07年の半導体製造装置市場は概ね好調な業績を記録するメーカーが多いものと推測される。ただし,設備投資額を抑制するデバイスメーカーも出てきており,セット製品の市場動向次第では減速する可能性が高い。
ASMLの07年第1四半期業績は,売上高が前年同期比52.6%増の9億6000万ユーロ,純利益が同91.3%増の1億5300万ユーロと増収増益を記録した。同四半期における新規受注は62台で,ファンドリやロジックメーカーからの受注が,フラッシュメモリやDRAMメーカーからの注文の停滞を相殺したことが大きく寄与している。これにより同社の受注残はArF液浸露光装置24台を含め148台となっている。また,KLA-Tencorの07年度第3四半期(07年1〜3月)業績は,売上高が同37.8%増の7億1621万ドル,営業利益が同115.9%増の1億8266万ドルと大幅な増収増益を記録した。地域別受注比率は,台湾が31%と最も高く,次いで日本28%,米国17%,韓国・中国・シンガポールが16%,欧州が8%となっている。
今後も伸長する部材関連
半導体の生産量の増大ならびに太陽電池での需要増大を背景に,poly-Siの供給不足が懸念されている。ウェーハメーカー各社は増産に乗り出しているが,供給不足は08年もしくはそれ以上に長引く可能性が出てきている。また,ウェーハ出荷比率における300mmの比率は徐々に上昇しており,07年中にも200mmの出荷量を超す可能性が高い。そうした材料の需要増を背景に部材メーカーの業績は大きく伸長している。例えばウェーハメーカー大手の信越化学工業は07年3月期の半導体Si事業の業績が前年度比33.0%増の4067億円,営業利益も同70.1%増の900億円と増収増益を達成している。また,同じくウェーハメーカー大手であるSUMCOも07年1月期業績で売上高が同44.8%増の3193億8500万円,営業利益が同90.3%増の843億9000万円,純利益が同251.7%増の720億5100万円と増収増益を達成している。
価格競争で利益計上が厳しいFPD

図 ガラス基板の世界市場推移
台数ベースでの市場は引続き堅調に成長を続けているFPD市場だが,金額ベースでは,激しい価格競争の影響で伸び率は鈍化している。これにより,利益面では,利益率を低下させるメーカーや赤字に転落するメーカーが相次いでいる。
LG Electronicsが発表した,07年第1四半期の決算概要によると,連結ベースの売上高は前年同期比8.3%増の9兆5900億ウォンとプラス成長となったが,純損益(LG Electornics単体)は1230億ウォンの損失を計上した。赤字の理由として同社では,LG.Philips LCDおよび海外グループ会社における1930億ウォンの損失が影響したとしている。また事業部門別にみると,PDPおよびFPD-TVを含むDigital Display Companyの業績は,売上高が同1.5%増の2兆7500億ウォンと微増で推移したが,営業損益については2620億ウォンの損失を計上している。
また,Samsung Electronicsが発表した07年第1四半期の決算概要によると,LCD部門では,季節変動の影響により大型パネルの販売量が減少,持続的な価格下落によって,売上高は前四半期に比べ11%減少した2兆8400億ウォン,営業利益も同76%減の731億ウォンと大幅な減収減益を記録している。なお同社は同年下期には,第8世代ラインで早期に量産体制に突入する計画であり,大型パネルでの原価競争力がより強化され,今後の実績回復を期待するとしている。
一方,シャープが発表した07年3月期の決算概要によると,LCDパネルの売上高は,前年同期比21.6%増の1兆423億円,営業利益は同14.6%増の781億2700万円となった。しかし,08年3月期については,売上高は同15.1%増の1兆2000億円と2桁成長が見込まれるが,営業利益はほぼ横ばいの785億円が見込まれており,利益率の低下が懸念される。
部材関連は堅調
1. 寡占化で優位に立つガラス基板メーカー

図 ガラス基板のマーケットシェア
一方で,FPD部材関連メーカーの業績は大きく伸長している。例えば,FPDに不可欠のガラス基板では,Corning,旭硝子,日本電気硝子の3社で市場の90%以上を占める寡占状態が続いている。フレキシブルディスプレイなどを目指す場合には,プラスチック基板などが代替素材として検討されているが,通常のディスプレイでは,耐熱性などの問題からガラス基板が主流。そのため,年率2〜3割という低価格化を余儀なくされているパネルメーカーとしては,ガラス基板メーカーとの価格交渉が,今後熾烈を極めることと思われる。
なお,利益率を見てみると,Corningが32.6%(07年第1四半期決算の純利益より算出),旭硝子が16.6%(06年12月期決算における電子・ディスプレイ事業の営業利益より算出),日本電気硝子が25.1%(07年3月期決算の営業利益より算出)と,軒並み2桁の高利益率を達成している。
2. 高機能化・複合化で価格低減に寄与
FPDパネルには,プリズムシート,偏光フィルム,保護フィルム,視野角向上フィルムなど様々な光学フィルムが使われており,これらのフィルムなしにはディスプレイの高機能・高精細・高画質化はなし得ない。また,二つのフィルムの機能を1枚に統合するなど,部材コストの低減に向けた動きも,昨今,急速に進められており,今後の動向次第では,あるフィルム市場が急に拡大もしくはシュリンクする可能性が十分考えられる。
日東電工では,LCD-TVの主要モードであるVAモード用に,「塗布型補償板付き偏光板」を06年8月からリリースしている。同製品は,同社独自の精密薄層塗工技術で基材フィルム上に補償層を形成することで,最適な光学設計が施された光学フィルム。これにより,従来の補償フィルムを積層したタイプと比較し,LCD-TVの基本性能であるコントラストを向上させ,かつ視野角を拡大させることができるという。
一方,東レは,06年にLCDバックライトに用いられる複数の光学フィルムの機能を統合した革新的な光学用ポリエステル(PET)フィルムを開発した。同フィルムにより,バックライトの光線を画面全体に広げる拡散板(乳白板)をはじめ,集光機能を持つビーズシートやプリズムシートなどを1枚のフィルムにまとめることが可能となる。同社では,このフィルムをLCDの軽量化や部品点数の削減による製品設計の効率化に寄与できる先端フィルム材料として,06年度末から大型LCD-TVのバックライト用途を中心に本格展開している。また,薄膜,軽量,高い光透過性に加え,優れた光拡散性と集光性などの特徴を生かして,リアプロジェクション用スクリーンなどの各種機能フィルム,スクリーン材料としても幅広く展開していく構え。