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大容量HDD/メモリ向け製造装置の現状と課題

09年のHDD出荷台数予測は6億2394万台
次世代HDD磁気ヘッドは07年中に量産化
MRAMの実用化に残された課題

石井政男/編集部

情報機器やデジタル家電への搭載が進むHDDや光ディスクドライブの市場は拡大を続けている。また,映像コンテンツの高解像度化により,高速かつ大容量のHDDやメモリが求められている。本稿では,HDDと光ディスクドライブの市場動向と次世代メモリとして目されているMRAMの実用化に向けた課題について紹介する。

09年までのHDD出荷台数予測

基板大型化によるCoOへの影響
図1 HDD世界出荷台数予測(06年までは実績)
出所)電子情報技術産業協会

06年の3.5インチおよび2.5インチHDD世界出荷台数は前年比19.0%増の4億3265万台,そのうち日本国内向けは同12.8%増の3152万台となった。サイズ別では3.5インチHDDが同12.5%増の2億8053万台の出荷であり,そのうち日本国内向けは同6.7%増の1677万台となった。HDD出荷に占める3.5インチHDDは,世界市場で64.8%,国内で53.2%となっており,依然としてHDD需要の過半数を占める。

09年までのHDD出荷台数は年平均13%増で推移し,09年の出荷台数は6億2394万台と予測される。3.5インチHDDは年平均7%増で推移し,3億4492万台に,2.5インチHDDは年平均22%増で推移し,2億7901万台の出荷になると予測される。

09年までの光ディスク出荷台数予測

図2 光ディスクドライブ世界出荷台数予測(06年までは実績)
図2 光ディスクドライブ世界出荷台数予測(06年までは実績)
出所)電子情報技術産業協会

06年の光ディスクドライブの世界出荷台数は,同9.0%増の2億9148万台となった。追記書換型DVDドライブは,06年に同50.1%増の1億5310万台と,大きな成長を遂げた。この傾向は,次世代の青紫色レーザを用いた光ディスクドライブが本格的に立ち上がるまで,今後数年継続すると予測される。

09年までの光ディスクドライブの世界市場は,これまでの二桁成長から一桁成長へスローダウンするものの,緩やかに拡大が継続し,09年は06年比14.1%増の3億3270万台と予測される。なお,追記書換型DVDドライブの台数構成比は,06年の52.5%から69.8%に拡大すると予測される。

次世代HDD磁気ヘッドの量産化

次世代HDDの磁気ヘッドやMRAMの開発を行ってきた産業技術総合研究所(産総研)のエレクトロニクス研究部門スピントロニクスグループ研究グループ長である湯浅新治氏は,「次世代HDDヘッドの開発において,産総研はその役割を終えつつある」と説明する。産総研で新たに開発されたTMRヘッドは,障壁層にMgOを採用。また,基板に吹き付けるスパッタリング法でMgOを成膜する際,チャンバ内の酸素汚染を取り除いてプラズマによる損失を低減。MgOを安定的に結晶化させることができ,結晶面における配向性を向上している(図3)。これによりに,磁気抵抗比を70〜80%向上している。

図3 新たに開発されたMgO-TMR素子
図3 新たに開発されたMgO-TMR素子

この新たに開発されたMgO-TMR素子を用いた磁気ヘッドの量産は,富士通が行う計画である。同社は,07年4月,前述の技術を用いることで,磁気感度を従来の3倍に高めたHDD用TMRヘッドを発表。07年度中に,現行の約2倍に相当する面記録密度250Gビット/in2のHDDに適用する予定としている。なお,同技術は500Gビット/in2クラスの製品まで適用可能としているが,湯浅氏は同技術で800Gビット/in2程度まで対応可能で,今後5年間は,主流技術として利用されるとみている。

MRAM実用化に向けた課題

MRAMの実用化に向けた研究開発を進めている産総研のエレクトロニクス研究部門副研究部門長の安藤功兒氏は,「MRAMは,DRAMの置き換えを狙っているため,10年間程度のデータ保持性,10〜20ns程度の高速応答性,5×105A/cm2程度の低電力書き込み,TMR素子の高磁気抵抗比といった量産・実用化に不可欠な四つの条件をすべてクリアすることを目指して,研究開発を進めています」と語る。

トンネル障壁の材料にMgOを採用したことでTMR素子の高磁気抵抗比という課題はクリアしているが,他の三つの条件については,どれかを満たすためには,何かをトレードオフしなければならない状態だという。

例えば,磁気モーメントと体積を小さくすれば必要電流は下がるが,室温でも簡単に情報が消えてしまう。また,書き込み電流のパルス幅を長くすれば,必要電流は下がるが実用にならない低速動作になってしまう。

「現在,論文などがあまり活発に発表されていないのは,実用化が近づいているからです。水面下では,実用化・事業化を目指した研究開発が進んでおり,あと1〜2年が山場とみています」(安藤氏)。

また,湯浅氏は,「MgOで一つのブレイクスルーを遂げましたが,実用化にはもう一つ材料に関するブレイクスルーを達成する必要があります」と話す。


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