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産業の礎 MEMSの現状

MEMS技術の開発動向
研究は地域ごとに得意な分野に特化
国の内外を問わない連携が重要に(1)

小林行雄/編集部

世界各地で研究および開発が進められているMEMS。各々の地域では,その地域特有の事情に合わせた形でMEMSに対する取り組みが進められている。07年6月14日に開催された第76回VLSIFORUM「MEMSの全貌 ―製造技術,装置・部材動向からファンドリビジネスまで徹底検証―」におけるGlobal Emerging Technology Instituteの日本マネージングディレクターである和賀三和子氏の講演から,世界の各地域におけるMEMS開発の動向を探る。

各地で開発進むMEMS

1. 世界各地で取り組みが進む

MEMS・マイクロマシンの技術開発は50年代より行われており,70年代に入り大学での取り組みが拡大,80年代より企業での取り組みが徐々に加速してきた。90年代に入ると,日本でも国家プロジェクトとしてマイクロマシンプロジェクトが発足し,マイクロマシンに対し陽の目が当たるようになった。
このようにMEMSへの取り組みが拡大するに従い,MEMSの国際学会であるIEEE MEMSでの論文発表件数も90年代前半までは50件程度であったものが,90年代後半からは100件を超え,近年では200件を超し250件に到達しようというところまで拡がってきている。地域別でも,90年代までは米国,欧州,日本の3地域が中心であったものが,00年以降アジア地域からの発表が徐々に増加してきており,欧州および日本と肩を並べるほどに発表件数を伸ばしてきている。

2. 人とシステムを繋ぐ

図1 IEEE MEMSに見る発表件数の推移
図1 IEEE MEMSに見る発表件数の推移 出所)第76回VLSIFORUM予稿集

MEMSは材料だけでもSiやガラス,石英,セラミックスといったように,用途に合わせて使い分ける必要があり,多様性に富んでいる。この多様性こそがMEMSを語る上で重要な意味を持っており,例えば応用分野としても,自動車,IT周辺,通信,バイオ・医療,家電といったように幅広い分野,様々な形のデバイスが適用されており,今後,幾つかの製品に関しては大量に消費されることが期待されている。
こうしたMEMSの拡がりの中において,センサは人とシステムを繋ぐインターフェースとして重要な役割を担う。例えば携帯電話でもモーションセンサが搭載された機種が登場し始めたが,携帯電話の世界市場は年間10億台程度が出荷される市場であり,MEMSデバイスメーカー1社のみで賄える市場ではない。そうした意味では,複数メーカーが参入する可能性があり,それによりさらに市場が拡大していくことが見込まれる。
また,分離や抽出などの化学反応をMEMSデバイス上で実現するというような取り組みも行われており,省面積で高効率,低コストで,かつディスポーザブル(使い捨て)を実現するといった研究が進められている。
このようにMEMSは,非常に幅広いアプリケーションで期待されている。実用化が進んでいるのは大量消費がなされる分野が中心となっているが,少量多品種のような分野においてもキーテクノロジーとして徐々に受け入れられ始めている。

各地域のMEMS動向

1. 官主導の開発が行われている日本

日本のMEMSプレーヤは大企業が中心となっている他,大学での研究も教授の移動などが少ないため,15校程度で研究が行われている。そのため,マイクロマシンプロジェクト以降も経済産業省が主体となって,各種のプロジェクトが進められており,実際にそれらの成果を用いたベンチャー企業も登場してきた他,MEMS設計用のツールの開発などが進められてきた。現在では06年度から08年度までの3年間の予定で,MEMS製造技術を用いた一体成形,高集積化,ナノ機能付加により,小型・省電力・高性能・高信頼性の高集積MEMS製造技術を開発することを目的とした「高集積・複合MEMS製造技術開発プロジェクト」が行われている。

2. 大学の役割が大きな米国

図2 米国MEMS特許件数の推移
図2 米国MEMS特許件数の推移 出所)第76回VLSIFORUM予稿集

一方,海外での動きを見ると,米国では90年代初頭より国防総省の国防高等研究事業局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)を中心としてMEMS技術の開発を開始,近年はセキュリティを中心に研究が進められている。そのため自動車や防衛関係での研究開発が多く,事業化も進められている。また,大学での研究が重要な役割を果たしており,35校程度と日本に比べ倍以上の大学で研究が行われている。大学では,基本的な教育のみならず応用部分まで研究が行われており,産業の活性化させる重要な役割を担っている。例えば,86年に設立された共同開発センター「Berkeley Sensor & Actuator Center(BSAC)」では40社程の企業がMEMS分野の先端的な研究が行われている。この他,ベンチャー企業による研究も活発に行われており,新技術が出てくる際には必ずといって良いほどベンチャーの技術が関わっている。

図3 米国の州別に見るMEMS関連特許
図3 米国の州別に見るMEMS関連特許 出所)第76回VLSIFORUM予稿集

米国のMEMS特許件数を見ると,00年以降急速に拡大している。この理由の一つとして,ITバブルが存在している。インターネットの急速な普及に合わせ光通信への期待が高まり,光MEMSの研究開発がブームとなった。ITバブルの崩壊による光MEMSへの研究が沈静化して以降も,特許件数は着実に伸びてきており,MEMSの潜在性が幅広く認識されてきたと考えられる。ちなみに,州別の特許出願件数の順位を見ると,カリフォルニア州(CA)が圧倒的に多く,その後にニューヨーク州(NY),マサチューセッツ州(MA)と続いている。なお。特許を多く出願しているのは,ベンチャー企業ではなく,資金が豊富にある大企業や,有力な大学であったりするという。

3. 研究機関の役割が大きい欧州

図4 欧州における研究開発のエコシステム
図4 欧州における研究開発のエコシステム 出所)第76回VLSIFORUM予稿集

また,欧州は,雇用確保および産業競争力強化の側面からプログラムが作製されることが多く,国々により得意分野が異なるという特徴を有している。そのためナショナルチャンピオンと呼ばれる,同種の企業が林立しなくても,その国の産業を代表する企業が複数社あれば良いという考えの下,企業数そのものは多くないものの,非常に大きく上手く成長していることが多い。また,大学も欧州全体では相当数に上る他,ベンチャー企業も米国に比べると少ないものの,成功の確率が高いものを慎重に育てている感がある。欧州では日本に比べ,研究機関の役割が大きく,自らを企業の中央研究所の役割を果たす者として認識し,技術的に近い将来必要となる技術の開発を行っている。
欧州の最たる特徴は,21世紀の地域経済発展には,雇用の創出のためにもマイクロシステムやエレクトロニクスなどの技術を駆使した新しい企業群の誘致または育成が重要であるとの認識で活動が行われていることにある。そのため,各国の公的研究機関と少数のグローバル企業が緊密に協調しており,付加価値の高い医療やライフサイエンスなどに注力した取り組みが行われている。その一方で,例えば,Royal Philips Electronicsが,アイントホーフェンにある研究所をオープンな施設「MiPlaza(Microsystems Plaza)」として外部に公開し,そこの設備を使用して自由にMEMSの研究ができるような体制を築き上げるなどといった,オープンイノベーションの活用による新技術の創出ならびにベンチャー企業の創出につなげようという取り組みなども行われている。たとえ大企業であっても,自社のみで全ての技術を開発するのではなく,外部のリソースを上手く活用することで,基盤的な技術開発を低コストで実現することが可能になることから,こうしたオープンイノベーションへの取り組みは今後ますます重要となっていくことが見込まれる。

4. 今後が期待されるアジア地域

アジア地域でも近年徐々にではあるが研究活動が活発になりつつあるものの,日本や米国,欧州など他地域から発表された論文の追試が多く,実質,製造技術を習得する段階にあるという。しかも,MEMSに関する知財の多くは海外のものであり,それを使用しなければならない点が弱みとなっている。ただし,米国での研究内容などを見るとアジア出身の研究者が非常に多く,そうした研究者達が出身国に戻っていることなどから,感覚としては米国に近い研究がなされており,今後は他の地域のキャッチアップに向けた動きが見られることも考えられる。

プレスジャーナルでは,特別調査レポート「2007 マイクロマシン/MEMSの最新動向と製造装置・部材産業」を発行しております。MEMS関連市場の現状と将来展望を徹底予測,さらに各種MEMSの開発動向から,MEMSデバイス,装置・部材,大学・研究機関の最新動向までを詳述,マイクロマシン/MEMSを完全に網羅しています。くわしくはこちらから

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