エレクトロニクスが導く新しい自動車の姿
半導体メーカーの自動車向け戦略
幅広い製品ラインナップで市場を開拓
差別化製品の投入でシェア拡大を狙う
前川裕志,河野修/編集部
ここ数年,自動車用半導体市場は急速に拡大し,今や民生,PC,通信に次ぐ,注目のアプリケーションである。自動車のエレクトロニクス化とともに半導体の搭載率は増加の一途を辿っており,半導体メーカーは自動車用製品を注力分野と位置付けている。半導体メーカー各社の取り組みについてまとめた。
NECエレクトロニクス
NECエレクトロニクスの08年3月期第1四半期の売り上げは1736億円となり,そのうち自動車および産業機器分野の売り上げは274億円となっている。特に,欧州に向けた自動車用半導体の売り上げが増加した。主力製品としては,各種制御処理用マイコン,電源ICである。特にマイコンは,CAN/LIN/FlexRayといった車輌内LAN規格別,モータ制御,カーマルチメディアといった分野別に,幅広い製品ラインナップを提供している。
同社は,07年2月の経営方針発表の中で,自動車製品強化として電子制御システムなどを中心に,世界の主要ユーザーに納入実績がある自動車マイコンで世界トップを狙うとした。また,マルチコアシステムを採用したナビゲーションシステムなど新しい成長領域である予防安全システムやナビゲーションシステム分野にリソースを展開する。さらに,個別半導体でもマイコンと機械をつなぐ,高耐圧・大電流制御のパワーデバイスを強化する。これらにより,同社は自動車事業の売上高目標として,自動車全体では05年度に1300億円であった実績を10年度に2000億円へ,自動車用マイコンに限ると05年度に850億円であった実績を10年度に1400億円へ増加することを目指すとした。
ルネサス テクノロジ
ルネサス テクノロジは,マイコンを中心とする「汎用製品事業」とパートナーシップを基盤とする「システムソリューション事業」の両輪で事業を展開している。アプリケーションでは,モバイル,PC/AV,自動車の3分野に注力し,それら合計で同社全体売上高の約6割を占めている。
同社の豊富な自動車用製品群は,多様な応用分野に対応し,強みを持つマイコンを中心にアナログデバイス,SoC,パワーデバイスと幅広いラインナップを,自動車の先端アプリケーション向けに提供している。特に同社が今後の伸びを最も期待しているボディ&セキュリティ向けには,高機能マイコンとアナログを1チップ化したSiPを提案している。また,カーナビゲーションなどのカーインフォメーション,カーエンタテインメント向けにはデバイス単体ではなく基本的なソフトウェアを搭載したプラットフォームを提案している。さらに,自動車アプリケーションの情報系と制御系の両面に対し強みを発揮することで,11年度には現在の自動車事業の売上高規模を2倍に伸ばすとした。
STMicroelectronics
STMicroelectronicsの07年第2四半期の売り上げは24億1800万ドルとなり,そのうち16%が自動車分野向けの売り上げとなっている。同社が自動車分野で最も注力しているのが,独自の「BCD(Bipolar,CMOS,DMOS混載技術)プロセス」を採用した製品群であり,「Vipowerプロセス」を用いたパワー半導体である。また,8〜16ビットマイコン,Freescale Semiconductorと共同開発契約を締結したPower PCコアでの32ビットマイコンなどにも注力している。さらに,同社はMEMSセンサ技術を用いたジャイロセンサやプレッシャセンサなども提供しており,マイコンからセンサまで幅広い製品ラインナップを有している。
07年上半期,同社は自動車分野に関連するいくつかの重要なニュースを発表している。まず6月には,イタリアのMario Boella研究所と共同で,自動車用スマート・パワーICに関するEMC分野の研究を行う「電磁コンピテンス・センター(EMC)」を設立した。同年7月には,Robert Boschに,BCD8プロセス・テクノロジーおよびHVCMOS8高圧CMOSプロセスのライセンスを供与すると発表している。
Freescale Semiconductor
Freescale Semiconductorの07年第2四半期の売り上げは13億8000万ドルで,そのうち自動車用製品および標準製品向けが6億8400万ドルとなった。注力製品としては,パワートレイン,ボディ,シャーシ,セーフティ,テレマティクス用にマイコンをはじめ,アナログ,センサなど幅広い製品ラインナップを提供している。中でも,同社の主力製品の一つでもある自動車用16ビットマイコンは,自動車用ネットワークやセーフティ系に多く採用されている。また,フラッシュメモリ,高性能プロセッサ,FlexRay技術を統合したS12ファミリの年間出荷数量は1億個を超えているという。
同社はSTMicroと共同で,自動車用半導体の開発を進めてきた。Power Architectureテクノロジーを使用した製品については,08年前半に4種類の新製品を出荷する計画であり,今後2年以内にマイコン設計に関する包括的なロードマップを完成させるとしている。また,90nm組込みフラッシュテクノロジーの開発については,テストチップが評価中であり,極めて良好な結果を示しているという。
Infineon Technologies
Infineon Technologiesの07会計年度第3四半期(4〜6月)の売り上げは,前年同期比1.6%増の10億1100万ユーロとなった。その内,自動車・産業・マルチ市場事業部門の売り上げは7億5200万ユーロとなった。
注力製品としては,各種マイコンをはじめ,パワー半導体,センサなどを幅広くラインナップしている。特に,タイヤ圧力センサシステムをはじめ,サイドエアバッグ用圧力センサ,ABSセンサシステム用センサ分野では高いシェアを持っている。また,空気と燃料の混合比を適正に保ち,各シリンダの燃料噴射と点火のタイミングを最適化するエンジン管理向けコントローラなどにも注力している。
同社は,エアバッグシステムや電動パワーステアリングなどの車両安全アプリケーション向けに設計されたマイクロコントローラ「XC2300」を提供している。同製品は,32ビットの性能と豊富な周辺機能セットを実現することで,高速な応答時間,冗長性,柔軟性が要求される現在および将来の車両安全アプリケーションに対応している。
NXP Semiconductors
NXP Semiconductors(旧Philips Semiconductors)の07年第2四半期の売り上げは,11億4100万ユーロで,そのうち自動車&アイデンティフィケーション事業の売り上げは2億6700万ユーロとなった。同社では,5V CMOSロジック,車載ネットワーク,カーラジオ用デジタル信号プロセッサ,イモビライザおよびキーレス・エントリ/ゴー用システム・ソリューションなどで高いシェアを持つ。
中でも,同社が注力しているのがカーエンタテインメントと呼ばれるカーオーディオ,ビジュアル製品で,ラジオ,DSP,パワーアンプ,CDシステム,デジタルラジオソリューションなどがある。
06年末より,車内ネットワーク規格「FlexRay」に対応したトランシーバIC「TJA1080」の量産を始めており,すでにTJA1080と同社のフェールセーフSBC(fail safe System Basis Chip)を組み合わせたチップセットが独BMWの「BMW X5」に搭載されているという。

図1 先進安全自動車(ASV)のイメージ
出所)国土交通省 先進安全自動車推進検討会資料
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