次世代ディスプレイの雄 電子ペーパー
ブリヂストンが創り出す次世代電子ペーパー
ドライバICを含めたオールフレキシブル化が
真の電子ペーパーを実現する
清水聡/調査部
ブリヂストンが開発・事業化を進めている電子ペーパー「QR-LPD」は,0.2msecという高応答速度,広視野角,低温駆動などが大きな特徴。また,パッシブ駆動であるため,より安価な製造プロセスが可能である。現在,値札や情報ボードからの市場参入で新規アプリケーションを虎視眈々と狙う。フレキシブル化の開発については,オールフレキシブルを目指した開発で,他社の一歩先を行く。
04年10月から正式参入
ブリヂストンが電子ペーパーの研究開発をスタートさせたのは01年夏。翌年の3月には画期的な表示材料として電子粉流体の開発に成功し話題となった。しかし,その時点は,あくまでも開発に一つのメドが立った段階。以降,同社では生産体制の構築(300mm×275mmの基板に対応した設備を導入),マーケティング,そしてさらなる高性能化に向けた開発を同時進行で推し進めた。その結果,04年10月,製品としての電子プライスタグ用ディスプレイの商用化にメドをつけ,電子ディスプレイ事業へ正式に参入した。
QR-LPD

図1 QR-LPDの表示の仕組み
1. 電子分流体
電子紛流体(ナノオーダーの突起を付与した粒子およびナノオーダーのポーラス構造を持つ粒子を開発中)は,粒子でありながら液体のような高流動性を有した材料である。同社の電子材料事業部における研究によって生み出されたこの新素材は,電気に敏感に反応し,帯電性も併せ持っており,帯電時には粒子同士が反発する性質がある。この性質を利用してディスプレイの表示材料として液晶のように使うことができる。原理としては,プリンタなどのトナーと同様である。プリンタでは,数百Vという印加電圧を掛けることによりインク粒子を引き寄せるが,電子粉流体では,流動性を高めたことにより,低い電圧でも引き寄せることが可能となっている。
一方,QR-LPD(Quick Response-Liquid Power Display)では,粉流体の光の反射で表示を行うため,LCDのような偏光板,反射板,バックライトなどが不要であり,シンプルな構造ゆえに薄型化が可能であることも特徴の一つである。色については,顔料によって調整が可能であり,今のところ白,黒,赤,黄,青,緑の6色を保有している。なお,基板に付着した粉流体はそのまま保持されるため,メモリ性もある。また,薄型化とメモリ効果で,曲がるフレキシブルディスプレイも開発が進められている。
2. 主な特徴
QR-LPDの主な特徴としては(1)広視野角,(2)高速応答性,(3)低温時の駆動,(4)メモリ性,(5)パッシブ駆動の五つが挙げられる。特に注目すべきは,応答速度である。例えば,LCDディスプレイなどの応答速度は最先端で数msec。これがQR-LPDでは,1桁程度速い0.2msecを実現しており,驚異的な応答速度である。また,低温時の駆動においても,−30℃という環境下でも動作が実証されている。さらに,パッシブ駆動が採用可能である点も重要である。それにより,高温プロセス(TFT製造工程)が不要となり,より安価で,かつフレキシブル化を容易に実現することができる。
カラー化への対応

▲フレキシブル電子ペーパー
先述の通り,同社の電子分流体は顔料によって着色可能であるため,カラー表示を容易に行える。エリアカラーパネルの場合,1パネル3色まで採用可能で,組み合せとしては(黒,赤,緑,青)×(白,黒)となる。
一方,フルカラー化については,カラーフィルタ方式を採用することで可能となる。その際,電子粉流体は白/黒を用いることになるが,明るさを確保するために反射率をさらに向上する必要があり,電子粉流体や駆動法の改良など今後クリアしなければならない課題も依然として残されている。
フレキシブル化の進捗

▲フレキシブル・ドライバIC
同社では,06年に大型カラーフレキシブル電子ペーパーの開発を発表している。同社が開発したディスプレイは,パネル基板をガラスからプラスチックへ変えたオールプラスチックパネル。これにより,これまでQR-LPDが有していた高視認性,広視野角,メモリ性,高応答性などの特徴を維持したまま,フレキシブル化,超薄型化,超軽量化,大型化を可能としている。また,フレキシブル化の大きな課題である曲げによる画像の乱れは,従来の格子状からハニカム状にリブ構造を改良したことにより発生しない。さらに,新開発のカラー電子粉流体を採用し,鮮明なカラー2色表示も実現している。同社では,新しい表示装置として,電子ペーパーディスプレイに求められる携帯性や利便性を大幅に向上させたことで,将来的には,次世代の電子ブック,電子新聞,電子雑誌,各種広告,情報配信掲示板など様々な用途への応用が期待できるとしている。
なお,フレキシブル電子ペーパーについては,ロール・ツー・ロールによる一貫生産が可能な設備が導入され,現在,最終調整中である。08年にはテストサンプルも出荷される見込みであり,今後の動向が注目される。
一方,フレキシブル化における今後の展望として,同社ではオールフレキシブルを視野に入れた開発を進めている。つまり,ディスプレイだけでなく,ドライバICまでも薄化によりフレキシブル化することで,さらなる軽量化,本当の意味での「電子ペーパー」を実現しようとするものである。