次世代ディスプレイの雄 電子ペーパー
凸版印刷の電子ペーパー事業
電子ペーパーPOP,フレキシブルTFTなど
部材メーカーの枠を越え,幅広く展開
清水聡/調査部
E Inkとの戦略的提携で,精力的に電子ペーパー事業を展開している凸版印刷。07年4月には,販売促進支援ツールとしての電子ペーパーPOPの販売をスタートさせ,単なる部材メーカーではない,幅広い取り組みを行っている。また,各社が実用化を競っているフレキシブル化についても,アモルファス酸化物半導体によるフレキシブルなTFTの試作に成功するなど,その動きは業界でも注目を集めている。
部材メーカーとして事業を展開
1. E Inkとの提携
凸版印刷がE Inkとカラー電子ペーパーの共同開発を発表したのが,今から約6年前の01年5月。それに伴い,凸版印刷は,E Inkへの出資を行うとともに,非常に密接な関係を構築し,電子ペーパー関連事業を強力に推し進めている。なお両社は,フレキシブルディスプレイなどの戦略的プロジェクト,電子看板の事業化でも,協力することで合意している。
2. 前面板製造
電子ペーパーの基本的なサプライチェーンを見てみると,(1)マイクロカプセル(表示材料)→(2)前面板(表示用部材)→(3)E Ink電子ペーパー(ディスプレイ)→(4)携帯電話,電子書籍端末など(セット)→(5)小説,新聞などのコンテンツ(サービスの提供)となる。
なお,凸版印刷では部材製造として,E InkマイクロカプセルをPET基材に塗工,レーザ加工(断裁)した前面板を,ディスプレイメーカーへ提供(販売窓口はE Ink)している。
E Ink技術の概要

図1 E Ink技術の概要
電子ペーパーには様々な種類があるが,E Inkでは,マイクロカプセル型電気泳動方式を採用している。図1に概略図を示す。
同方式では,基材面に塗工(コーティング)された透明なマイクロカプセル中に,帯電した白/黒の顔料粒子が入れられており,電圧を掛けて粒子を上下移動させることで,白/黒表示を行う。なお,表示の解像度は,電極の細かさで決定され,マイクロカプセルの輪郭には依存しない。つまり電極の境界がカプセルの中央に来れば,同一カプセル内で白も黒も表示される。
主な特徴としては,(1)反射型の表示で180°に近い視野角,新聞印刷より高いコントラスト,直射日光下でも読みやすい視認性,(2)読書のようにページ単位で表示していく用途で,通常の反射型LCDに比べて1/10程度,バックライト付LCDに比べて1/100,電子看板でLEDに比べて1/200〜1/600の超低消費電力,(3)偏光板やバックライトが不要な構造であるため,通常のLCDと比較して約半分の薄さの表示セルが可能,などが挙げられる。
電子ペーパーPOP
凸版印刷は,07年4月に電子ペーパーPOPの販売をスタートした。電子ペーパーPOPでは,カラー出力した透過型シートの背面に,点滅する電子ペーパーをバックライトのように置き,絵柄に合わせて部分的にハイライトさせる構造となっている。これにより,細かな表示が可能で,電子ペーパーの高いコントラストの点滅によって,アイキャッチを実現している。
また,背面電極の基材が樹脂製であるため,緩やかに曲げた形状のPOPも可能となっている。他にも,紙のような見やすさ,LCDなどの一般的なディスプレイに比べて広い視野角,消費電力が少ないため電源確保が不要など,電子ペーパーを用いることによるメリットを得ることができる。なお,同社では,07年度に3億円の売り上げを計画しているが,現在のところ不透明。しかし,いくつかの顧客と案件が進行しており,十分達成の可能性もあるという。
1. アニメーションタイプ
アニメーションタイプでは,電子ペーパーを多彩に点滅させることで文字や絵柄をはっきりと変化させることができ,動きのある表現が可能。形,サイズ,フレームなどをカスタマイズしたオリジナルのPOPが作成できる。
2. 定型タイプ
定型タイプでは,電子ペーパー全体が一度に点滅することで,カラーシートに表現した絵柄が明るくなったり暗くなったりする。カラーシートを交換することで表示コンテンツの変更が容易にできるため,繰り返し利用する場面に適している。
技術的課題
電子ペーパーPOPは同じパターンで繰り返し点滅するが,任意の画像を表示できるアクティブマトリクス型E Ink電子ペーパーはLCDメーカーが開発・製造に取り組んでいる。LCDメーカーでは,自社でTFTアレイと組み合わせるE Ink前面板に求められる技術的課題を以下のように考えている。
1. 応答速度の向上
ユーザーの使い勝手を考えると,応答速度の向上は必須事項といえる。スピードが遅ければ,タイプやスクロールができず,ページ単位用途のみの使用となってしまう。E Inkでは,STN,TFT-LCD並みの応答速度を目指した改良を進めており,研究室レベルで50fps(20ms),開発レベルで5fps(200ms)を実現している。画面更新が速くなると,電子辞書などへの応用が可能となるが,06年に市販されたE Ink搭載の低価格携帯電話「MOTOFONE F3」では,キーを押す親指のスピードに追従できており,さらなる商品化展開が期待される。
2. フレキシブル化
今後の技術開発の大きなテーマとして,フレキシブル化が挙げられる。そこでポイントとなるのが,背面板(TFT基板)である。凸版印刷で製造している前面板は,プラスチック(樹脂)基材にマイクロカプセルが塗工されており,フレキシブルである。しかし背面板側のフレキシブル化は,プロセス温度や基材(プラスチックや薄い金属箔など)へのTFT形成が商品化レベルまでは確立されておらず,今後の研究・開発動向が注目される。
凸版印刷のフレキシブル化へのアプローチ
フレキシブル化は,ディスプレイメーカーの範疇だが,部材メーカーである同社においても,急ピッチで研究・開発を進めている。特に印刷技術的な手法の適用による効率的な製造を指向している点が特徴である。
同社では,他社も取り組んでいる有機TFTに加え,東京工業大学の細野秀雄教授らが開発したアモルファス酸化物半導体によるTFTが,室温で作製可能で,従来のa-Si TFTと比較して優れた特性を持つことに着目。同材料を用いて,プラスチック(樹脂)基板上にTFTアレイを作製し,E Ink前面板と組み合わせることで,フレキシブルな電子ペーパーの試作,そしてそのカラー化の試作に成功している。なお,08年度には,実用レベルの試作品を開発する計画としている。