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有機ELパネルの06年世界市場は,前年比4.8%減4億5900万ドルとなった。07年以降は,有機EL-TV,携帯電話のメインディスプレイおよび照明などの新たなアプリケーションの拡大で,本格成長が期待される。本稿では,その市場動向を展望するとともに,有機EL開発の重要なポイントである特許の保有・出願動向も検証し,有機ELの今後を占う。
これまで幾度か本格成長な成長が期待されながらも,下方修正を余儀なくされてきた有機EL市場だが,07年に入り,ようやく明るい将来展望が見え始めてきた。
従来,有機EL市場の底支えしてきたのは,携帯電話用サブディスプレイ。しかし,数量ベースでの成長とは裏腹に,単価の下落が激しく,各パネルメーカーとも利益確保に苦心しているアプリケーションである。今後もその傾向に変わりはなく,市場拡大の牽引役となる新アプリケーションの創出が強く望まれていた。
そして,そこに現れたのが有機EL-TVである。また,携帯電話のメインディスプレイ,照明用途も当然のことながら,飛躍に向けた一翼を担っていくものと期待される。周知の通り,ソニーが11型を07年12月から発売すると発表し,大きな話題となった。また,東芝(パネル製造は東芝松下ディスプレイテクノロジー)でも,09年には「少し大型」の有機EL-TVを作ると発表しており,ライバル心をあらわにしている。
しかし,両社の激しいバトルの裏側には,明らかに現在の薄型TVでの出遅れで,辛酸をなめた経験がある。CRTの次のTVとして,シャープがLCD,松下電器産業がPDPにいち早く本格投資し,自社での一貫生産で先行したことにより,ソニーと東芝は,それぞれの分野で,後塵を拝するという苦い思いをしている。今回は,同じ轍を踏まないとの判断が両社にはある。
だが,当然のことながら,他社もただ手をこまねいている訳ではない。Samsungグループでは,これまでSamsung SDIの領域と思われていた有機ELを,Samsung Electronicsでも手掛け,グループ内での製品化争いを激化させている。また,シャープとパイオニアは,07年9月に業務・資本提携を発表した中で,有機ELについても共同開発を展開し,開発スピードアップを図っていくとしている。さらに,これまで,正式参入を発表していなかったメーカーも続々と参入する可能性もあり,各社の動向から目が離せない。
ただし,有機EL-TV市場の本格成長は,10年以降になるとの見方が強い。ソニーの有機EL-TVに関しても月産2000台レベルの生産体制であり,LCDやPDPに比べて大きな開きがある。市況を見ながらの増産になると思われるが,将来的にどこまで拡大するのかは,今のところ不透明である。
一方で,TVよりも早い段階から市場の拡大に貢献すると見込まれるのが,携帯電話のメインディスプレイ向けのアクティブ駆動型パネルである。すでに,au(KDDI)の携帯電話では,製品がリリースされており,Samsung SDIのパネルが搭載されている。LG Electronicsも2.2型のアクティブ駆動型パネルを07年初頭に発表しており,技術的にはいつでも本格展開可能な状態にある。ここでのポイントは,有機ELのメリットをいかにアピールし,一般のコンシューマに訴求できるかに掛かっている。携帯電話向けLCDは,1mmを切るまで薄型化されており,LTPS技術などにより,高機能化,高性能化も進められている。有機ELの特徴を再認識し,どのように差別化を図っていくのか,各社の事業戦略,製品戦略に注目する必要がある。
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1. 07年以降はプラス成長
06年の有機EL市場(携帯電話,TV,ポータブルオーディオ,DSC,自動車,照明用途向けパネルの合計)は,前年比4.8%減の4億5900万ドルとなった。マイナス成長の最大の要因は,市場の主軸である携帯電話向けサブディスプレイパネルの大幅な単価下落である。同サブディスプレイパネル市場は,数量ベースでは今後も拡大傾向で推移するものの,その成長と反比例する形で単価下落が進み,06年に2億3000万ドルとなった市場規模が,12年でも2億4500万ドルとほぼ横ばいでの推移と予測する。
なお,07年以降の市場(合計値)は,先述の新アプリケーション市場の立ち上がりなどにより,堅調に推移し,07年が同12.4%増の5億1600万ドル,08年が同44.4%増の7億4500万ドル,09年が同53.4%増の11億4300万ドル,10年が同33.0%増の15億2000万ドル,11年が同23.8%増の18億8200万ドル,12年が同29.4%増の24億3500万ドルとなり,同年には07年の約5倍にまで成長すると予測する。
2. メーカーシェア
有機EL市場(06年)のマーケットシェアを見てみると,トップがSamsung SDIで21%,2位がLG Electronicsで19%,3位がRiTdisplayで17%,4位がパイオニアで16%,5位がUnivisionで12%,その他が15%となっており,上位5社で市場の8割以上を占める状況にある。07年については,この勢力図に大きな変化はないが,08年以降,有機EL-TV,照明用有機ELなどの動向次第では,大きく塗り替えられる可能性も十分ある。
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これまでに公表された有機EL関連の国内特許出願件数は1万4335件,登録件数は1569件となった。
出願日を基準とした出願件数では,01年に1000件を超えてから急速に伸び,05年には2002件と4年間で倍増した。06年以降は,まだ出願公開されていないものも多いため(通常は特許出願の日から1年6月)反映されていないが,05年の出願件数や各メーカーの有機EL関連の開発状況から2000件を優に超える出願件数になるものと予想される。
一方,出願日を基準とした特許登録件数では95年以降100件程度で推移し,02年に200件近くの登録件数となった。なお,03年以降に出願されたものの多くは審査継続中のため反映されていないが,出願状況を鑑みると03年以降も200件程度の登録件数になるものと予想される。
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メーカー別の特許動向では,出願件数,登録件数トップのセイコーエプソンが出願においては1705件と,2位の三洋電機(588件),3位のパイオニア(560件)など他のメーカーを圧倒している(表1)。また,出願件数ではNECと東洋インキ製造が約240件であるのに対し,両社とも登録件数が91件と対出願比で40%近くとなっており非常に高い割合となっている。一方,555件で出願件数4位のソニーが登録件数では18件程しかなく,対出願比で3%と極めて少ないのが目立つ。なお,NECは04年に有機EL事業から撤退し,パッシブマトリクス駆動型を中心とした有機EL関連特許をSamsung SDIに譲渡した。
また,Samsung SDIは00年頃から積極的に日本でも出願するようになり,03年以降急速にその件数を増やしている。同社からは質の高い出願が多く,この短期間での登録件数も急増しており,国内メーカーの優位性を脅かす存在となっている。
さらに,トヨタ自動車やデンソーといった自動車関連メーカーなどからの出願も増えている。これらのメーカーは単なる自動車への応用というより,有機ELの封止方法や素子構造といった基本技術的な出願が多く,今後どのように展開していくのか注目される。なお,個人として異例とも言える79件もの出願をしている山形大学の城戸淳二氏は,トヨタ自動車よりも上位に名を連ねた。
表1 メーカー別特許登録・出願状況
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主要8社の特許出願件数の推移を見ると,01年からのセイコーエプソンの出願が際立っているのが分かる。05年においては主要8社合計784件のうち半分以上を占めるに至っている。同社は,得意のインクジェット技術を武器に,96年にマスクレス素子形成技術であるインクジェット方式によるアクティブ駆動型有機EL素子の製造方法に関する出願をし,以降,インクジェット方式について多くの出願をしている。他にもデバイス技術,応用製品,駆動方式・回路技術など有機ELに関するあらゆる側面での出願を行っており同社の力の入れようが窺える。
パイオニアは,早い時期から有機ELの研究開発を始めており,90年頃から低分子系関連で多くの出願をしている。また,97年に成膜方法に関して,陰極のパターニング方法を開発した。同社は同年に世界に先駆けてカーオーディオ用緑単色ドットマトリクス駆動型ディスプレイを市場に導入した。
出光興産は,85年から有機ELに関する研究開発に取り組んでおり,90年以降,毎年20〜30件程度の出願をコンスタントに行ってきている。95年には,実用レベルの青色発光材料を世界で初めて開発,青色発光材料に関する高い技術力を持つ。
| プレスジャーナルでは,特別調査レポート「2008 有機ELの最新動向と製造装置・部材産業」を発行しております。アプリケーション別に市場を分析するだけでなく,製造装置・部材市場,主要関連メーカー動向,さらには各種技術動向も詳述,業界を完全に網羅する構成となっています。くわしくはこちらから |