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次代を担う注目技術 薄膜系太陽電池

太陽電池市場拡大の鍵は材料の安定確保
薄膜系の台頭で,低コストが大きく進展
10年に5000MW以上の規模にまで成長の可能性

調査部

太陽電池産業がここ数年急成長を遂げている。我々の環境に対する意識の高まりや,導入推進施策の拡大などがその理由として挙げられるが,変換効率向上などの技術革新も,マーケット拡大に大きく寄与している。しかしながら,Si材料の需給逼迫により,価格的には高値維持が続いている。今後は,この低コスト化が大きなポイントになると思われる。

環境保護に対する意識の高まり

環境問題は,今や世界的規模で考えない限り,解決できない状況となっている。87年にカイロで開催された国連環境計画会議では,有害物質の適正な管理を世界各国に指示。89年にスイスのバーゼルで開催された会議では,廃棄物処理の監視を国際的に行うことを決議した。しかしながら我々の健康や自然環境が,ここ数年,急速に悪化し,危機的状況に陥っている。そのような状況を改善するためには,各自が環境破壊について,もっと知る必要があり,具体的な対応策の一つとして,太陽電池の導入が様々な分野で進められている。

10年には5000MWにまで成長

先述の通り,現在,太陽電池を積極的に導入するメーカーや,事業に新規参入するメーカーが急激に増加している。しかしながら,太陽光発電事業がここまで成長するのには,非常に長い道のりを要した。
図1に示したように,93年の太陽電池世界市場(主要20か国)はわずか26MW規模。99年にようやく124MWと3桁の大台にまで拡大したが,それでも産業規模としては小さい。その後も,市場は堅調な成長を続け,04年には前年比57.7%増の779MW,05年が同40.3%増の1093MW,06年が同28.0%増の1400MWまで成長した。
しかしここで太陽電池市場は,新たな問題に直面している。それが材料,つまり多結晶Siの不足である。現在の太陽電池は,90%以上が結晶系Siを用いたものである。そのため,材料不足が足枷となり,「作りたくても作れない」「生産能力はあるのにフル稼働できない」そんな状況に直面している。材料メーカー各社も,増産計画を打ち出しているが,後手に回ってしまった感も否めず,市場からのニーズに見合った量がほぼ供給できる体制が構築される09〜10年頃までは,需給がタイトな状況が続きそうだ。
なお,太陽電池の世界市場はその材料供給に合わせて一層拡大し,09年には3600MW,そして10年には5000MWにまで拡大すると予測される。ただし,昨今,材料使用量が結晶系と比較して格段に少なくて済む,薄膜系太陽電池への注目度が俄かに増加しており,実際に各社が相次いで生産ラインの増強を発表している。今後は,その状況次第で,太陽電池セルの安定供給が確保できれば,10年に5000MWを上回るレベルまで成長することも,十分に視野に入ってきたと言える。

図1 太陽電池の世界市場(主要20か国合計)推移
図1 太陽電池の世界市場(主要20か国合計)推移   出所)IEA,06年以降は当社予測

 

拡大する薄膜系

薄膜Si太陽電池は,現在主流となっている単結晶・多結晶Si太陽電池の1/10〜1/100以下と非常に薄い膜を形成させて作る太陽電池で,結晶系において問題となっているSi原料の不足問題を回避でき,さらに大幅な低コスト化ができる太陽電池として注目されている。身近なところでは,電卓に使用されている太陽電池がある。分類としてはa-Si太陽電池,微結晶Si太陽電池がこの薄膜Si太陽電池に入る。
アモルファスとは,結晶構造を持たない物質の固体の状態を表し,a-Siの原子配列は結晶Siの形が乱れたものである。結晶格子が乱れると原子は共有結合の相手を失って,結合に関与しない遊んだ電子(ダングリングボンド)を持つことになる。このダングリングボンドがあるためにa-Siではpn接合を作ることが難しいと考えられてきた。しかし,75年に英Dundee大学のSpear氏らがプラズマCVD法によるa-Siの作成によりp型・n型半導体の形成が可能であることを発表した。これにより,SiH4をグロー放電によって分解して析出させると,ダングリングボンドが水素原子と結合してドーピング元素を捉える作用がなくなり,a-Siを太陽電池用素材として使えることが見出された。これを受けて76年に米RCAが水素化a-Siを用いた太陽電池を開発した。

1. a-Si太陽電池の製造法

グロー放電で発生するプラズマ中でSiH4を分解する方法(グロー放電法)が発表されてからa-Si太陽電池の開発は急展開した。グロー放電法は,低圧の原料ガスを含む容器内に,直流または高周波の電界を加えることによって発生するグロー放電によりガスがプラズマ状態に励起され,その中で分解反応と基板上への析出が起こる。グロー放電法以外にも,膜成長速度の増大化や膜質向上を目指して,反応性スパッタ法や特殊な真空蒸着法などがある。
反応性スパッタ法は,低圧のArガス中に置かれた電極の間に電力を加えて放電を起こし,片方の電極上に結晶Si板(ターゲット)を置いてスパッタにより気体中にSiを飛び出させ,反対側の電極側に置かれた基板上にSi膜を析出させる方法である。また,定圧下400℃〜700℃で,SiH4を熱分解することによってa-Si膜を析出させるのがCVD法である。このままでは,水素結合が不十分なため水素プラズマ中での処理方法が開発されている。
イオン・プレーティング法は,真空中で固体Siを電子ビームで蒸発させ,これを真空容器内に形成したプラズマ中に導いてイオン化させると同時に,容器中に導入させた水素との反応を起こさせる。イオン化粒子は蒸発源と基板間に印加された直流電圧によって加速されて,基板方向に向かって析出される。プラズマの形成には直流電界による方法や高周波電界による方法などがある。
クラスタ・イオンビーム法は,数百個ほどの原子が真空中に凝集したクラスタに電子を当ててイオン化した上で,電界を加えて加速して基板上に析出させるようにしたものである。真空中に水素を導入することによってa-Si:H合金を作製することができる。

2. a-Si太陽電池の量産技術

a-Si太陽電池の実用化は非常に速いテンポで進んでいる。基板としてガラスを使ったものでは,バッチ処理方式がとられ,ステンレス・スチールを用いたものは,バッチ方式とベルト方式の両方がとられている。また,プラスチックフィルムを基板とした太陽電池も開発されている。プラスチックフィルム基板による量産技術では,量産化のため,ロール・ツー・ロール製法(ロールで送り出し,ロールで巻き取る)により,キロメートル単位の長さの太陽電池を連続して生産できる。
a-Si太陽電池は初期劣化の問題があるが,現在ではa-Siの欠陥を少なくする成膜技術の発達や,i層膜厚を薄くして初期劣化を抑制して安定化後の効率を上げるなどにより,安定化後の変換効率は8%程度となっている。

3. 材料は結晶系の1/100以下

a-Si太陽電池は,可視光域での光の吸収が結晶Siよりも大きく,半導体層の厚さが1μm以下でも十分に太陽光を吸収することから薄く作ることができる。Si材料も1/100以下と少なくて済み,低コスト化を図ることが可能である。また,a-Siの成膜に用いるプラズマCVD法は気相反応を利用しており,温度も300℃以下と低く製造できる。このため,ガラスやプラスチックフィルムなど多様な基板上に太陽電池を形成することができ,また,製造温度が低いため結晶系ほど電力を必要としない。さらに,フィルム上に軽くてフレキシブルな太陽電池モジュールを作ることができるため施工性が良く,曲面や重いものを載せられない屋根,意匠性を重視する場所など,設置の自由度が高い。
一方,a-Siは変換効率が8%程度と低いため,結晶系と同等程度の出力を得るには結晶系の1.5倍の設置面積が必要となる。

4. 積層化により変換効率の向上を図る

薄膜Si太陽電池への参入している国内メーカーは,シャープ,カネカ,三菱重工業,富士電機システムズ,海外では米United Solar Ovonicなどがある。富士電機とUnited Solarは基板にフィルムを用いたフレキシブルタイプの量産を行っている。a-Si太陽電池の変換効率の低さを補うために各メーカーとも太陽光スペクトルを幅広く吸収できるように,微結晶Siなどとの2層化,さらには3層化にする工夫をしており,変換効率を8〜12%程度まで向上を図っている。なお,三洋電機のHIT(Heterojunction with Intrinsic Thin-Layer)太陽電池は,結晶Si基板上に,薄膜a-Si層をp/n接合し量産レベルのセル変換効率で高効率を達成している。

プレスジャーナルでは,特別調査レポート「2007 太陽電池メーカー動向と製造装置・部材産業」を発行しております。急成長する太陽電池について,その需要拡大の背景から,単結晶SiやCIS系などの技術動向を詳述,セル・Si材料の市場を徹底予測しています。くわしくはこちらから


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