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FPD産業が新たな局面へ 生産性向上の鍵がここに

FPD産業が新たな勢力図へと塗り変わる
日本を震源とした業界再編の地殻変動
今後,隣国の韓台中への余波も(2)

北原洋明/テック・アンド・ビズ 代表

技術の進歩がCE市場への拡大をもたらした

現在は,市場がITからコンシューマーエレクトロニクス(CE)へと拡がっている。携帯電話やFPD-TVを軸としたコンシューマ市場の成長がその背景にある。この時代には,ディスプレイにとって,性能競争が重要なポイントになっており,TV用途に向けた各社の表示性能の熾烈な競争が続けられている。
ちょうど00年頃,「LCDはIT用途には使えても大型TV用には無理」だと言われていた。視野角や応答速度などの性能が,まだPDPや他の自発光型のディスプレイと比較して大きく劣っていたためである。しかし,各社の熾烈な開発競争の結果,パネルの表示性能も格段に改善され,PDPと遜色のない表示を,100型を超える大画面で実現できるようになった。

パブリック市場では販売力の勝負

視野角や応答速度といったLCD固有の欠点を克服し,さらには画面サイズでもPDPと並ぶ大画面TVを,わずか数年で実現した結果,表示性能と並んで画面サイズでもそろそろ先が見えてきた。そして,FPDがどのような状況でも使えるようになってくると市場は一層拡大していく。それがパブリック市場である。
各社の技術面での実力が拮抗し,性能面での大きな差がなくなってくる。マーケットもCE市場からパブリック市場へ拡大傾向にある。この時の競争ポイントは,価格や販売力などになってくるであろう。ブランド力や品揃えといった販売面での差が,より一層ビジネスを左右するようになる。現在起こりつつある再編劇は,このような状況に向かっていく時代の流れの中にある。この先の新たな時代である10年代に向けた体制を作り上げた者が,次の勝者になる。その駆け引きが表面化したのが今回の再編劇である。
過去の再編劇,特に00年直後の日本メーカーと台湾メーカーを中心としたアライアンスは,「LCDパネル生産」を念頭に置いたものであった。一方,現在進みつつある再編劇は,「LCDを中心としたFPDビジネスの再構築」である。これからやって来る10年に向けた再編であり,最終製品市場での販売を見据えたものである。

今後のFPD-TVは新興国市場での競争に

FPD-TV市場は,急激に拡大している。08年には,全世界のFPD-TV出荷台数がCRT-TVを抜く。この傾向は,LCD-TVの発売が本格化した数年前の予想を2〜3年前倒しで進んでいる。この急成長を牽引してきたのは,先進国である日本,北米,欧州であった。
一方,今後のFPD-TV市場予測をみると,東欧,中国,インドなどの新興国で爆発的に伸び,この市場を制したものが勝者となる。中国では,金額ベースではすでにTV全体に占めるFPD比率が50%を超えている。台数ベースでも1〜2年の前倒しで,オリンピック開催年である08年に50%を超える可能性もある。その他のBRICs諸国でも,11年には台数ベースで50%を超えるであろう。画面サイズは,現在は30型台が中心であり,ボリューム・ゾーンだが,今後は40型台にシフトしていき。50型以上の大型にも広がっていく。

垂直統合と水平分業の補完が今後の流れ

電子機器製造を中心に眺めると,川上から川下までの流れを押さえる垂直統合型ビジネスと必要な部品は他社から調達し基幹となる事業に注力する水平分業型に別れる。今回のソニーとシャープの提携劇は,この両者の利害が一致した結果である。
LCDの生みの親であるシャープにとって,LCDの技術を守り育て上げていくことは,社運をかけた重要なことである。そのために,必要な技術を囲い込み,垂直統合の体制を築き上げていくことは必須の戦略になる。
一方のソニーは,CRTの時代から「テレビ」を重要な製品としてブランドイメージを築き上げてきた。そのソニーとって,最終製品であるTVを市場に継続的に出していくことが社運であり,そのための戦略が,必要な部品は外部から調達する水平分業である。
技術のシャープは,第10世代の堺工場から産み出されるLCDパネルの外販比率を上げようとしており,その一方で,部品としてのLCDパネルを必要としているソニーとの協調は,正に相互補完の関係になる。
一歩進んで目を海外に向けると,この相互補完の提携劇が,今後はアジアの各国でも起きてくることが予想される。08年〜09年にかけての,日韓台のパネルメーカー各社による次期大型ラインへの積極投資が続々と発表されているが,これは拡大するTV市場に向けた動きである。また,新たな投資を検討している企業もある。この大型投資を実行しようとすれば,1社単独での投資は厳しい。必然的にアライアンスを組んで行くことが必要になる。そのアライアンスのモデルが,今回のソニーとシャープになるだろう。現在,投資の検討を行っている海外のパネルメーカーも,すでにこのモデルを念頭に置きながら,資金の調達検討を進めている。

エネルギー問題も含めた方向性が今後の鍵

FPD産業は,10兆円を超える巨大産業となった。今後,この産業の中で勝者となって行くためには,インフラとロジスティックスを押さえていくことが必須になる。製造に必要な装置や部品材料の調達,作り上げた製品を最終消費地に効率よく運ぶことが,事業の成否を握ってくる。さらに,市場が世界中に広がる中で,どこで製品を作るかという戦略も欠かせない。

図4 電子産業の業界構造と今後の方向性
図4 電子産業の業界構造と今後の方向性

さらに,今後の重要な視点は,エネルギー問題への対応である。垂直統合型ビジネス,水平分業型ビジネスのどちらであろうとも,今後はエネルギーの問題を避けては通れない(図4参照)。
FPDの消費電力低減,製造時のエネルギー削減,製造時の物流の効率化,製品の物流の効率化(生産地と消費地の同一化)など,様々な局面でエネルギー問題が大きくのしかかってくる。
加えて,シャープが先に堺市のコンビナート構想で発表している薄膜太陽電とのコラボレーションというモデルに関しても,今後の一つの方向になってくると予想される。LCDパネルと薄膜太陽電池を同一敷地内で製造し,インフラの共有を図るとともに,高まりつつあるエネルギー問題へのアピールを図ることは,企業にとっても大きなメリットであり,海外のパネルメーカーも真剣に検討している。

プレスジャーナルでは,特別調査レポート「2008 有機ELの最新動向と製造装置・部材産業」「2007 フラットパネルディスプレイ LCD/PDP/OLED製造装置・材料産業」を発行しております。くわしくはこちらから


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