メモリとHDDの未来 次世代ストレージ技術
08年後半以降のメモリ市場動向
フラッシュメモリの市況は安定
SSDがノートPC分野で急成長
荒井聡/編集部
07年にはDRAM,08年前半にはNAND型フラッシュメモリの供給過剰が起こり,急激な価格の下落を経験した。08年後半以降のメモリ市場はどこへ向かうのか。アイサプライ・ジャパン副社長の南川明氏に話しを伺った。
NAND型フラッシュメモリ08年後半には安定
NAND型フラッシュメモリは,07年末から価格が急落した。需給バランスが大きく崩れ,供給過剰に陥ったためである。有望視されていたiPhoneやiPodの調達量が,メモリメーカーの予想を下回ったことが,供給過剰を招いた主な要因であるという。
現在は,需給バランスがようやく戻ってきたところであり,08年後半にはNAND型フラッシュメモリの市況は安定に向かうものと南川氏は見込む。「理由としては,フラッシュメモリの生産調整が,すでに始まっていることが挙げられます。また,iPhoneやiPodなどのアプリケーションへの需要はこれから強まってきます。このため,市場は安定に向かうと見てよいでしょう。フラッシュメモリの価格は今後も下がり続けますが,その下がり方は緩やかなものになってくるはずです」と同氏は予想する。
ストレージ用途としてのNAND型フラッシュメモリ市場は,bit単価を下げつつ大容量化を進めることで,全体の収益がカバーされるという構造を持っている。今後は,その本来の成長構造に市場が戻っていくと考えられる。
SSD,ノートPC市場で急成長

図1 SSDのノートPCへの搭載比率
今後のNAND型フラッシュメモリの成長を考える上でキーポイントとなるのが,ノートPC市場へのSSD(Solid State Drive)の普及である。SSDは,フラッシュメモリを記憶媒体として用いるドライブ装置である。HDDが,回転するディスクとその上を移動する磁気ヘッドによってデータの読み書きを行うのに対して,ディスクやヘッドを持たないSDDには,シークタイムやサーチタイムといったHDD特有の作業時間が存在しない。このため読み書きにかかる時間がHDDに対して劇的に短縮されるという特徴がある。また,ディスクをモータ駆動させるHDDよりも,SSDは消費電力の点でも有利である。さらに,物理的な振動や衝撃に弱いというHDDの短所も克服できるため,HDDに替わるノートPC用ドライブとして注目されている。
そのSSDが,唯一HDDに対して劣るのが価格である。現在のSSDの価格は容量単価でHDDに太刀打ちできず,これがSSDの普及を阻害する主な要因となっている。SSDの価格は下がりつつあるが,今後HDDとの価格差は,どの程度のペースで縮まっていくのか。
「ある一定容量,例えば100GB以下といった領域では,価格差は近いうちにかなり縮まってくると思います。そのため,この領域では,08年からSSD搭載のノートPCの需要が急速に伸び始めます。09年にはノートPC全体の約9%がSSDになるでしょう」と南川氏は予想する。
東芝,Samsungの2強体制が確立

図2 NAND型フラッシュメモリの需給バランス
SSDという大きな成長分野を持つNAND型フラッシュメモリ市場での主導権を握るため,主要メモリメーカーは,今後積極的な生産増強策を取るものと考えられる。
その中でも,東芝とSamsung Electronicsは投資体力がダントツに高く,これからのフラッシュメモリ市場は,東芝とSamsungの2強体制という構図がより鮮明になっていく。
「東芝が,三重と岩手にNAND型フラッシュメモリの新工場を作りますが,これにはあるメッセージが含まれていると思います。それは『3番手以降はもうついて来られませんので撤退してください』ということです」と南川氏は語る。Samsungも積極的かつ計画的な設備投資を考えており,NAND型フラッシュメモリのプレーヤは事実上この2社だけという状態が進んでいくという。
プレーヤの数が少なくなれば,需給バランスは取り易くなる。SSDという成長分野での伸びも期待できる。このため,今後のNAND型フラッシュメモリ市場は,安定した成長を続けていく,というのが南川氏の見方である。
DRAM市況は改善するも長期的には伸び悩み

図3 NAND型フラッシュメモリの価格トレンド
一方,DRAMに関してはどのような状況だろうか。iSuppliでは,07年11月以降「ネガティブ」に据え置いてきたDRAMの短期市況評価を08年4月24日に「中立」へ格上げした。この背景としては,DRAMメーカー各社が設備投資にブレーキをかけ始め,生産コントロールが始まっているということがある。過去1年間で6分の1にまで達したDRAMの価格下落がやっと終わり,反発しはじめているのが現在の状況である。しかし,これは長期的に見たDRAM市場の行方とは,また別問題であると南川氏は指摘する。
「確かに現在の需給関係は改善してきていますが,DRAM市場については,NAND型フラッシュメモリに比べると,将来的にはあまり伸びる余地が見当たらないと言うべきでしょう。PC用のDRAM市場には限界が見えてきています。携帯系のモバイルDRAMはまだ伸びるでしょうが,SSDほどの広がりや力強さは感じられません」と南川氏は語る。また,DRAMプレーヤの数が絞りきれておらず,需給バランスが取りにくいのも,NAND型フラッシュメモリとの大きな違いである。
サブプライム問題は08年いっぱいで解消
最後に,サブプライム問題がメモリ市場に与える影響について伺った。この問題については,南川氏は比較的楽観的な見解を持っているようで,「当然,個人消費と企業の投資にネガティブな影響を与えていますが,それも08年いっぱいで終るものと考えています。現在様々な対策が取られており,09年には解消するはずです」と述べた。現在は,BRICsやVISTAなどの新興市場も先進国のサブプライム問題の影響を受けている。しかし,これらの地域では依然として年6〜7%の高い所得の伸びが続いており,今後数年間は,携帯端末や低価格帯PCなどへの強い需要が,メモリ市場を牽引していくことが見込まれる。