メモリとHDDの未来 次世代ストレージ技術
富士キメラ総研,SSDは緩やかに成長と予測
HDDは今後もストレージ市場の中心に
大容量・低価格へのニーズは引続き拡大
荒井聡/編集部
富士キメラ総研は,このほど12年までのストレージ市場動向についてまとめた報告書「2008 ストレージ関連市場総調査」を発表した。本稿では,ノートPC市場でのSSDとの競合をどうみるかなど,HDDの将来像について同社第一研究開発本部C&E研究室の塩原一平氏に伺った。
SSDの動向を計る三つのポイント
SSD搭載のノートPCに注目が集まっている。07年に国内大手各社がオプションとして販売を開始し,08年に入ってからはオプションでない標準モデルが出回り始めたところである。しかし,その価格は,まだ30万円以上の高額なものがほとんど。今後のノートPC市場においてSSD搭載モデルが増加していくのは間違いないとして,その成長スピードはどの程度で,HDDの代替はどこまで進むのか。塩原氏は,SSDとHDDの関係を考える上では,三つのポイントがあると言う。
「一つ目のポイントは,当然ながらSSDの価格がHDDにどこまで近づくかです。現在,ローエンドのノートPCに搭載されているHDDの価格帯が大体50〜80ドル,量販店で販売されているミドルエンド(500〜700ドルクラス)のノートPC用のHDDが80〜100ドルといったところですから,SSDについても,これらの価格帯に近づくタイミングに注目しています」と塩原氏は語る。
二つ目のポイントは,上記の価格帯に近づいた時点でのSSDとHDDとの容量差がどれだけあるかという問題である。同氏は,09年には,32GB SSD の価格が80〜100ドル近辺まで下がってくると予想。この時点における同価格の2.5インチHDDは250〜360GBであり,容量の開きは約8〜10倍となる。「よって単純に容量と単価の比較をすれば,HDDがまだまだ優位ということになります。ただし,実際には,三つ目のポイントを考える必要があります。そもそもノートPCにはどれだけの容量が必要なのかという観点です」と同氏は指摘する。この三つのポイントが絡み合ってSSDの普及率が決まるという。
図1 ノートPCにおけるHDDとSSDの比較 |
HDDはなくならない
ノートPCに必要とされる容量については,128GBという数字が注目される。Windows Vistaを快適に動かすのに64GB,その他のアプリケーションなどの置き場として64GBが必要というのが一般的な見方だからである。SSDの市場も,128GB HDDの価格に近づいてきた辺りから伸び始める可能性が高いと同氏は指摘する。
また,SSDとHDDのノートPC価格差が1〜3万円くらいになればSSDを売り易くなるというのが業界の感覚であるという。製品の価格差が1〜3万円の場合,デバイスコストの差はその3分の1くらい,つまり100ドルのHDDに対して130ドル〜200ドルのSSDということになる。この辺りの価格が,SSD普及のトリガーになる可能性があると同氏はみている。
とはいうものの,SSDの成長は,しばらくは穏やかな伸びに留まるとするのが同氏の見解である。現在ノートPC市場で最も伸びているのは,500〜1000ドルの低価格製品であるが,この価格帯にSSDが進出するのは難しい。またSSDのターゲットである高価格のモバイルPCなどがノートPC市場全体に占める割合は決して高くない。このため,SSDの搭載率が急激に伸びることはないと同氏はみている。
同氏は,最近「HDDはなくならないんですか?」と聞かれることが多いというが,この問いに対しては「なくならないですよ」と答えることにしているという。10年先も,HDDが容量単価で一番安いという事実に変りはないと考えるからである。
確かに,ノートPCの一部では今後SSDへの切り替えが進む。また,デスクトップPC向けのHDDは,新興市場での需要が一服したところで減少に転じる可能性がある。携帯プレーヤの記憶メディアが小型のHDDからフラッシュメモリに急激に移行したことも「HDDの危機」といったイメージを人々に与えている一因かもしれない。しかしながら,YouTubeやGoogle Earthなどの大容量データをアーカイブしているサーバ向けHDDや,北米を中心に成長しているセットトップボックス(TV録画用のHDD付き外付けチューナー)など,HDDの新たな成長分野が生まれているのも,また事実である。
OSの進化が続き,それにともなって様々なアプリケーションが開発されるというサイクルがある限り,大容量へのニーズとHDDの成長は止まらない,と同氏は感じているようである。
(1)現状では内蔵型のストレージとしてはNBPC/モバイルPCでもHDDが中心である
(2)DTPC代替のスタンダードタイプは,今後もHDDを中心に採用が続いていくものと想定される。ハイエンドのモバイルPCは08年でNBPC全体の約6%,12年には約10%の市場になると予測しており,SSD市場を牽引していくと考えられる
(3)ネット端末(ネットブック)などのUMPCやOLPCには,1〜数GBの内蔵NANDフラッシュが採用されている。発売当初から好調な売れ行きを見せるASUSのネットブック「EeePC」や,低消費電力ながら高性能なCPUを搭載,またバッテリーの持続時間が長くなるなど高性能化するUMPCの需要の高まりも,SSD市場拡大の大きな要因である
(4)NBPC市場においてビジネスとコンシューマの比率は60%:40%と推定されている
(5)海外大手PCメーカー(DELL,Hewlett-Packard)は,ボリュームゾーンの製品を低価格で販売することでシェアを獲得している。そのため,SSDなどの新規部門,ハイエンド製品投入には積極的ではない
(6)日系メーカーはハイエンド製品の市場獲得のため,SSD搭載モデルや軽量化,薄型化といった高い技術力で市場拡大する傾向がある
(7)ASUSTeKはネット端末(ネットブック)用途のUMPCに注力している
(8)AcerはHDDの大容量化と共に総合AV機器へと進化するDTPCのリプレースを狙う代替ノート(スタンダードPC)市場において,LCDサイズの大型化,HDD大容量でゲーム,TV,動画視聴などエンターテインメント用途対応の機種に注力しており,海外メーカーや日系メーカーとの競合というよりは新規市場開拓路線で進んでいくと考えられる
(9)HDD故障のリスク回避,情報漏えい防止を目的としたHDDレス,光ディスクドライブレスクライアント端末の「シンクライアント」も立ち上がっている。システム構築のコストがネックとなっているが,企業系の一部では採用が進む可能性がある。その前提条件としては,世界的な規模で無線インフラの拡充が必要となる。本格的な立ち上がりは10年〜11年頃と予測している
図2 ノートブックPCストレージ採用動向 |