開発・応用拡がるMEMSの今
ワールドワイドで活発化するMEMSの研究開発
各地域・国で,取り組みの状況は様々
ビジネス面から見た課題も浮き彫りに
調査部
世界各地で研究および開発が進められているMEMS。各々の地域では,その地域特有の事情に合わせた形でMEMSに対する取り組みが進められている。本稿では,世界の各地域におけるMEMS開発の動向を探る。
各地域のMEMS動向
1. 官主導の開発が行われている日本
日本のMEMSプレーヤは大企業が中心となっている他,大学での研究も教授の異動などが少ないため,15校程度で研究が行われている。そのため,マイクロマシンプロジェクト以降も経済産業省が主体となって,各種のプロジェクトが進められており,実際にそれらの成果を用いたベンチャー企業も登場している他,MEMS設計用のツールの開発などが進められてきた。現在では06年度から08年度までの3年間の予定で,MEMS製造技術を用いた一体成形,高集積化,ナノ機能付加により,小型・省電力・高性能・高信頼性の高集積MEMS製造技術を開発することを目的とした「高集積・複合MEMS製造技術開発プロジェクト」が行われている。
2. 大学の役割が大きな米国
一方,海外での動きを見ると,米国では90年代初頭より国防総省の国防高等研究事業局を中心としてMEMS技術の開発を開始,近年はセキュリティを中心に研究が進められている。そのため自動車や防衛関係での研究開発が多く,事業化も進められている。また,大学での研究が重要な役割を果たしており,35校程度と日本に比べ倍以上の大学で研究が行われている。大学では,基本的な教育のみならず応用部分まで研究が行われており,産業の活性化させる重要な役割を担っている。例えば,86年に設立された共同開発センター「Berkeley Sensor & Actuator Center(BSAC)」では40社程の企業がMEMS分野の先端的な研究が行われている。この他,ベンチャー企業による研究も活発に行われており,新技術が出てくる際には必ずといっていいほどベンチャーの技術が関わっている。
米国のMEMS特許件数を見ると,00年以降急速に拡大している。この理由の一つとして,ITバブルが存在している。インターネットの急速な普及に合わせ光通信への期待が高まり,光MEMSの研究開発がブームとなった。ITバブルの崩壊による光MEMSへの研究が沈静化して以降も,特許件数は着実に伸びてきており,MEMSの潜在性が幅広く認識されてきたと考えられる。ちなみに,州別の特許出願件数の順位を見ると,カリフォルニア州が圧倒的に多く,その後にニューヨーク州,マサチューセッツ州と続いている。
3. 研究機関の役割が大きい欧州
また,欧州は,雇用確保および産業競争力強化の側面からプログラムが作製されることが多く,国々により得意分野が異なるという特徴を有している。そのためナショナルチャンピオンと呼ばれる同種の企業が林立しなくても,その国の産業を代表する企業が複数社あれば良いという考えの下,企業数そのものは多くないものの,非常に大きく上手く成長していることが多い。また,大学も欧州全体では相当数に上る他,ベンチャー企業も米国に比べると少ないものの,成功の確率が高いものを慎重に育てている感がある。
欧州の特徴は,21世紀の地域経済発展には,雇用の創出のためにもマイクロシステムやエレクトロニクスなどの技術を駆使した新しい企業群の誘致または育成が重要であるとの認識で活動が行われていることである。そのため,各国の公的研究機関と少数のグローバル企業が緊密に協調しており,付加価値の高い医療やライフサイエンスなどに注力した取り組みが行われている。その一方で,例えば,Royal Philips Electronicsが,アイントホーフェンにある研究所をオープンな施設「MiPlaza(Microsystems Plaza)」として外部に公開し,その設備を使用して自由にMEMSの研究ができるような体制を築き上げるなどといった,オープンイノベーションの活用による新技術の創出ならびにベンチャー企業の創出につなげようという取り組みなども行われている。例え大企業であっても,自社のみですべての技術を開発するのではなく,外部のリソースを上手く活用することで,基盤的な技術開発を低コストで実現することが可能になることから,こうしたオープンイノベーションへの取り組みは今後ますます重要となっていく。
4. 今後が期待されるアジア地域
アジア地域でも近年徐々にではあるが研究活動が活発になりつつあるものの,日本や米国,欧州など他地域から発表された論文の追試が多く,実質,製造技術を習得する段階にある。しかも,MEMSに関する知財の多くは海外のものであり,それを使用しなければならない点が弱みとなっている。
MEMSビジネスの現状と課題
1. 上位30社で市場の9割を占有
MEMS市場は多様なものであり掴み所が難しい。しかしながら,MEMSの市場は売上高の上位20〜30社で市場の80〜90%を占めている。そのため,その他多くの企業が様々な技術ならびに製品開発を行っているが,その中からどれだけの企業が成長してくるのか予想は難しいのが実際のところである。世界の主なMEMSメーカーを見ると,最大規模はDLPの製造を手掛けるTexas Instrumentsであり,唯一5億ドルを超す規模を誇っている。続いてキヤノンなどインクジェットプリンタのヘッドを製造するメーカーが多く入っている他,Freescale SemiconductorやAnalog Devices,デンソーなど自動車関連製品の製造メーカーも多く入っている。