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真空を取り巻く新たな潮流

アルバック,09年6月期売上高も過去最高狙う
アジア,中東での販売・サポート体制も強化
地場メーカーの台頭には,積極的な現地展開で対応

清水聡/調査部

代表取締役社長 諏訪秀則氏
 ▲代表取締役社長 諏訪秀則氏

半導体やFPD,各種エレクトロニクス機器など,様々な産業の基幹技術として発展を遂げてきた真空産業。そのリーディングメーカーとして,業界を牽引しているのがアルバックである。08年6月期には過去最高の売上高を達成する見込みであり,今期も記録の更新を狙う。本稿では,同社 代表取締役社長の諏訪秀則氏に,今後のビジネス戦略,将来展望などについて伺った。

08年6月期,売上高・受注高は過去最高

図1 事業別構成比率
 図1 事業別構成比率

アルバックは,08年6月期第3四半期の業績発表時に,通期見通しの修正を行った。それによると,売上高は前年同期比5%増の2510億円,受注高は同20%増の2850億円と過去最高となるも,営業利益は同57%減の72億円,純利益は同58%減の31億円と,期初計画からは大幅な下方修正を行った。なお,本取材時点(08年8月1日)では,同社の通期決算概要は正式発表されていないが,ほぼ修正値通りとなった模様だ。
売上高の修正理由としては,(1)顧客側での設備投資計画の延期による半導体製造装置の売上計画の未達,(2)同じく客先計画の延期などによる真空炉の納入時期の遅れ,(3)LCD向けポンプ,小型真空ポンプの売上減少に伴うコンポーネント事業の計画未達,(4)客先認証の遅れによるターゲット材料の計画未達などが挙げられる。
一方,利益予想の修正については,上述の売上高の計画未達に加えて,収益性が悪化したことが響いた。なお,収益性の悪化要因にいては,ターゲット材料の販売価格下落に対してコストダウンが追いつかなかったこと,第8世代などの大型LCD製造装置の追加原価,太陽電池一貫生産ラインの追加原価,大型真空ポンプの価格競争激化によりコストダウンが追いつかなかったことが,利益率を押し下げた。

09年6月期は大幅な業績拡大見込む

表1 08年6月期の業績予想
 表1 08年6月期の業績予想

09年6月期は,売上高・受注高で過去最高を記録した前期から,さらに業績が拡大(過去最高を更新)すると同社ではみている。特にFPD関連では,08年6月期第2四半期後半から急激に受注が伸び,受注残高が積み上がっていることから,今期の売り上げに大きく寄与することはほぼ確実。また,利益面についても,課題へのテコ入れを積極的に推進しており,こちらも大きく改善する見通しだ。

1. 経営課題と収益改善に向けて

なお,同社が掲げる当面の経営課題は,(1)構造改革の実施,(2)ポストFPDの受注拡大への対応,(3)収益改善プログラムの実施の大きく三つ。(1)については,グループ会社の支援と再生プログラム並びにグループ会社の合併・再編などで収益改善に向けた構造改革を実施していく。(2)については,特に太陽電池関連において,生産体制の確立,アジア・中東地域などでのサポート体制の整備を軸に,顧客の拡大を図っていく。(3)については,技術優位性があり,高い利益率を確保できる商品開発を加速化することで商品競争力の向上を図るとともに,特型商品依存からの脱却を図ることなどで,利益率アップを実現していく構えだ。

主要事業分野の動向

太陽電池製造ライン(茅ヶ崎本社工場)
 ▲太陽電池製造ライン(茅ヶ崎本社工場)

1. 太陽電池関連事業

07年に台湾Sunner Solarや同じく台湾のNexPower Technologyなどからの一貫製造ラインの受注を発表し,注目を集めたアルバックだが,今期も引続き受注は活況を呈する見込みであるという。しかしながら,売り上げ面での寄与としては,ターンキーの保証であるが故に,検収ベースで売り上げが立つため,受注-売り上げの期間が,FPD製造装置と比較して長くなる傾向にある。

2. FPD関連事業

一方,FPD関連については,TV向け大型パネル用製造装置や携帯電話やモバイル機器向けパネルの製造装置が,順調な設備投資を受けて受注・売り上げを大きく伸ばすとみられる。「一部,台湾メーカーで生産調整や投資計画の見直しが取り沙汰されていますが,あれはモニタ用の中型パネルの話。影響は極わずか。TV用パネルや携帯電話向けパネルでは,生産調整の話は今のところ聞いておらず,受注は好調です」と諏訪社長は指摘しており,現状を維持できれば大きな伸長がみられそうだ。
また,有機ELに関しても,従来は研究開発向け装置が中心であったものが,ソニーによる有機EL-TVの発売に牽引され,量産をターゲットとした案件がではじめているという。なお,同社では有機ELの大型化に向けては,「有機EL発光層で白色光を発生させ,前面基板上に設けたカラーフィルタでカラー化する方式」を積極的に開発している。

3. LEDの市場拡大に期待

現在,アルバックがポストFPD・半導体として注目するアプリケーションの一つがLEDとなる。同社では結晶成長関連の装置は手掛けていないため,電極加工向けのスパッタリング装置,エッチング装置がメインとなるが,日本,台湾,中国の各地域で需要が拡大している。「LEDは,LCDのバックライト向けの出荷が確実に増大しています。また,照明としての採用も各社で積極的に開発を進めていますので,市場が本格化すれば,装置需要も一気に拡大すると期待されます」と諏訪社長が指摘するように,10兆円とも言われる現在の照明市場を,LEDがどれだけ獲得できるのか,今後の動向に注目が集まる。

中期的には売上高4000億円を目指す

中期目標を尋ねると,諏訪社長から即座に「4000億円」という答えが返ってきた。多少の前後はあっても,5年程度あれば4000億円という数字はクリアできるという。既存のFPD,半導体,太陽電池に加え,LEDやパワー半導体などの分野が事業領域として確立されることで達成できる売り上げが,4000億円となる。なお,「それ以上となると,やはり新たなアプリケーション,製品の開発が必要となってくる」との見通しも示した。

韓国・中国の台頭

最後に,洗浄装置などのウェット系で特に顕著になってきている,韓国や中国における地場の装置・部材メーカーの台頭についての私見を諏訪社長に伺った。
記者:アジア地域における真空産業の成長は日本にとって脅威か。
諏訪:真空は,自動車,鉄鋼,エレクトロニクスなどすべての産業のベースとなる技術・産業。それらの産業の発展に伴い,真空産業が拡大することは当然の流れ。産業の拡大は好ましいことであり,脅威ではない。中国などでは,すでに数百もの真空関連企業が育っているはずである。日本より多いかもしれない。
記者:パテント・模造製品などの問題を耳にするが。
諏訪:確かに当社では,以前にそのようなトラブルもあった。だからと言って,すべての技術・製品をそれらの地域に出さないという方針は,当社では取っていない。我々は,むしろその逆の戦略。中国などの地域に積極的な進出を図り,その地域の企業になりきって地場の企業と競っている。この戦略の方が,現地の企業と同じ条件で戦うことができ,かつ技術のプロテクトも可能で,コスト的にもメリットがある。

<アルバックの注目装置:太陽電池用真空製造装置>

アルバックでは,長年培ってきた太陽電池用真空製造装置を主軸にa-Si薄膜太陽電池で重要な,より高い変換効率と信頼性あるデバイス製造を低コストで生産するa-Si薄膜太陽電池製造一貫ラインを提供している。
日本では70年代に起きた2回のオイルショックなどにより石油代替エネルギー開発への関心が高まり,その中で無限に地球に降り注ぐエネルギーを電気へ変換する太陽電池の開発がその一つとして着目され,同社でも開発用実験機,その後には量産装置となる横型のPE-CVD装置CCHシリーズをリリースし,さらには量産性を高めた縦型PE-CVD装置のCCVシリーズをリリースしている。いずれも太陽電池用PE-CVD装置としてリリースされたTFT用Cluster型PE-CVD装置CMDシリーズとは異なる装置として,太陽電池用装置をラインナップしている。
最新型の太陽電池用PE-CVD装置である「CCV-1400」は古くからあるインライン型の形式を用いてはいるが,太陽電池を製造する上で必要な,大きな特徴を三つ備えている。一つは,必要な数のプロセスチャンバ増設が可能な点であり,優れた太陽電池用a-Siレイヤを形成する上で重要なLow deposition rate対応を可能としている。二つ目は,組合せ自在なプロセスチャンバ構成が取れることで,p/i/n各レイヤのプロセスチャンバをIsolationすることでコンタミなく形成できる。三つ目は,ガラス基板を縦搬送する事で,両面同時成膜を可能性にしLow deposition rateでの生産性改善を実現するとともに,CCV-1400ではメカニカルクリーニングを用いることで高価なNF3クリーニングガスなどを使用せずメンテナンスコスト低減を図っている。
a-Si薄膜太陽電池を製造する上でもう一つ重要な真空装置としてスパッタリング装置があるが,この装置もCCV-1400同様に太陽電池用として高レート,高効率カソードを搭載し,ガラス基板を直に搬送するトレイレス構造など,低コスト・オペレーションを主眼に設計された横型スパッタリング装置として「SCH-135」を同社では提供している。これら二つの真空装置を主軸に同様に太陽電池用装置として実績がある他の機器を購入し組み合わせることで太陽電池を製造する一貫ラインを構成している。



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