ASEAN/インドの半導体・FPD・電子部品産業
半導体産業
ASEAN(東南アジア諸国連合:Association of Southeast Asian Nations)は,67年8月に「ASEAN設立宣言(通称:バンコク宣言)」に基づき設立された東南アジア地域ではじめての地域協力機構。 当初の加盟国はインドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイの5か国で,その後ブルネイ,ベトナム,ラオス,ミャンマーが加盟。99年にはカンボジアが加わり,東南アジア10か国を含む地域協力機構として「ASEAN4(タイ,マレーシア,インドネシア,フィリピン)」から「ASEAN10」へと変貌している。
ASEANの半導体産業の動向
半導体デバイスメーカーの工程は,研究開発,ウェーハの生産(前工程),組み立て,検査の各工程に分けることができる。組み立てや検査に関しては,各工程における労働力が必要であり,多くの半導体デバイスメーカーが東南アジア地域に両工程を行うために進出し,最終製品を輸出として進出国以外で販売を行っている。このような産業はASEAN5を中心とした東南アジアにおいて70年代頃から行われてきた。その後は生産規模の拡大や生産能力の高度化により,前工程部分も担当する工場やファンドリといった新たな事業が誕生したものの,全体的にはあまり技術力を必要としない比較的賃金の安価な労働力を多く使う生産メリットを活かした後工程業務が主力となっている。
1. 半導体市場の推移
アジア・パシフィック地域の半導体市場は,97年の通貨危機後の98年,前年比4.4%減のマイナス成長をした後,99年で同28.9%増,00年でも同 37.9%増と大きく成長を果たした。その後,ITバブル崩壊の余波を受け01年に同22.3%減の通貨危機の時を遥かに超すマイナス成長を記録したものの,02年以降は立ち直り,年率2桁の成長を続けている。ただし00年以降の伸びは主に中国が要因であり,今後はさらに中国への比率が増すため,東南アジア地域の比率は相対的に低下していくものと思われる。
2. 岐路に立つASEAN半導体産業
外資を誘致することで,工業化を進め経済発展を狙う。東南アジア主要国が多くのサイエンスパークを建設し,外資を招き入れたのにはそのような思惑が存在していたためであるが,近年,この考え方に綻びが生じてきている。それは中国が半導体産業の競争相手として台頭してきたからである。過去,中国は縫製品などの軽工業関連製品が輸出の主力であったため,半導体や家電製品に主力を移していた東南アジア諸国とぶつかることは無かった。中国は90年代末までに制度改革を実施,工業特区を各地に建設するなどインフラを整備し,半導体デバイスメーカーなどが進出し易い環境を整えた。その結果,労働集約的な仕事に関して,東南アジアに比べ平均的に賃金が低い中国での魅力が増すこととなり,各メーカー共に生産の主軸を中国へとシフトさせることとなった。その結果,東南アジアは従来の路線である外資を誘致して工業化を進める,といった経済政策を推し進めることが難しくなってきている。
3. ASEANから中国へ
近年,中国のASEAN4からの輸入が増加している。中国のASEAN4からの輸入上位10品目を見ると,輸入増加の一つの要因として水平分業の進展が挙げられる。主に半導体デバイス,集積回路,PC関連製品および部品に対する外資系メーカーが形成した生産ネットワークを通じた製品や部品の輸入が活性化しており,これらの品目だけで全体の46.3%を占めている。
4. 中国の緩衝材と化すASEAN
04年7月,IMFは報告書「China Growth and Integration into the World Economy」を発表,中国が域内分業による貿易と市場の開放を通じて周辺地域の経済拡大に寄与していることを示した。これは,近年言われていた中国と ASEAN各国との国際市場における競合はすでに終息し,ASEAN各国は中国の緩衝材として機能していることを意味している。ASEAN各国から中国への輸出拡大は,その意味を端的に表しているものであり,中国向け輸出が拡大することこそがASEAN各国の持続的経済発展を支える重要な鍵となっている。
ただし,この効果は各国により異なっている。マレーシアの対中輸出は01年の約2.5%から03年には3.4%に上昇,ASEAN4の中でも最も上昇率が大きい成長を見せている。特に集積回路を始め,PC関連製品および部品に関してはASEAN4全体の44.3%に達しており,中国に向けた電子電気製品および部品の供給国としての地位を確立しつつある。また,タイでは,対中輸出比率が01年の1.9%から03年には2.1%へと増加している。 品目別では,PC関連製品および部品の比率が高い。フィリピンの対中輸出は,01年の0.8%から03年には1.5%に上昇,集積回路,PC関連製品および部品,半導体デバイスの合計が全体の8割強を占めている。インドネシアの対中輸出比率は,01年の1.6%から03年には1.4%と下降している。しかも,半導体を中心とした電子電気製品の比率は他のASEAN各国と比べ低くなっている。

図1 半導体工場マップ
※地図上にある番号と合わせてご覧ください。
フィリピン
1
スービック
フィリピンインターエレクトロニクス(一貫工場):ディスクリート
カピテ
Intel(CV1,2)(後工程):ロジック,メモリ/Cypress Semiconductor(後工程):ロジック/ロームアポロセミコンダクタ(フィリピン)(後工程):ディスクリート
ビニャン
IDCフィリピンエレクトロニクス(一貫工場):ロジック
2
マニラ
ローム・エレクトロニクスフィリピン(後工程):モノリシックIC,抵抗器, コンデンサ/Texas Instruments(後工程):ロジック,メモリ,他 /三洋半導体製造(フィリピン)(後工程):リニアIC/
Intel(MN1,2)(後工程)メモリ /アレグロ マイクロシステムズ フィリピン(一貫工場):ロジック,ディスクリート
カラバン
新電元フィリピン(一貫工場):ロジック /フィリピン富士電機(一貫工場)
カルモナ
ON Semiconductor(後工程):ロジック,ディスクリート
ベトナム
3
ホーチミン
三洋半導体(ベトナム)(後工程):ロジック
タイ
4
バンコク
ローム・アポロエレクトロニクス(タイランド)(後工程):トランジスタ,ダイオード, コンデンサ/東芝セミコンダクタ・タイ(後工程):ディスクリート,バイポーラ, フォトカプラ/ソニー・セミコンダクタ(タイランド)(後工程):バイポーラ,MOS/ AMD(バンコク)(後工程):ロジック,メモリ/Spansion(タイランド)(後工程):フラッシュメモリ/三洋半導体タイランド(後工程):ディスクリート,リニアIC/ ロームインテグレーテッドセミコンダクタ (タイランド)(後工程):ディスクリート
ナコン
タイ芝浦電子(後工程):ディスクリート/ 新電元(タイランド)(一貫工場)ロジック
アユタヤ
沖タイランド(後工程):ロジック
ランパン
新電元(ランパン)(一貫工場):ロジック/ タイNJR(後工程):ロジック
マレーシア
5
ペナン
AMD(ペナン)(後工程):ロジック,メモリ / ルネサスセミコンダクタテクノロジー (マレーシア) (後工程):DRAM,リニア,マイコン,他/ ルネサスセミコンダクタ(ペナン)(後工程)/Atmel(前工程)フラッシュメモリ /Linear Technology(一貫工場):リニアIC/ 東洋電波マレーシア(後工程):ダイオード/Intel(PG6,7,8)(後工程):メモリ/ Spansion(ペナン)(後工程):フラッシュメモリ
6
ケランタン
ローム・ワコーエレクトロニクス(マレーシア)(後工程):ダイオード,発光ダイオード, 他
7
クアラルンプール
Freescale Semiconductor(KLM)(後工程):システム LSI/ Spansion(クアラルンプール)(後工程):ファラッシュメモリ
8
クリム
Intel(KM1,2)(後工程):ロジック /Silterra(前工程):ファンドリ/ ルネサスセミコンダクタ(ケダ)(後工程)/Infineon Technologies(前工程):ロジック
9
セランゴア
東芝エレクトロニクス・マレーシア(後工程):ディスクリート,バイポーラ, 他/ NECセミコンダクターズ(マレーシア)(後工程):ディスクリート,リニア, DRAM,他 /Texas Instruments(後工程):ロジック,メモリ,他
10
セレンバン
ON Semiconductor(一貫工場):ディスクリート
11
マラッカ
Infineon Technologies(後工程):DRAM,他/ 双信エレクトロニクスマレーシア(研究所・R&Dセンター・設計)/National Semiconductor(後工程)
12
ムアー
STMicroelectoronics(後工程):バイポーラ
13
クチン
1st Silicon(前工程):ファンドリ
シンガポール
14
シンガポール
STMicroelectoronics(前工程)リニアIC,他/ Texas Instruments(後工程):ASIC,DRAM/ AMD(シンガポール)(後工程):ロジック,メモリ/ パナソニック半導体シンガポール社(後工程):マイコン,メモリ,トランジスタ/ NECセミコンダクターズ・シンガポール(後工程):DRAM/ Chartered Semiconductor Manufacturing(前工程):DRAM,混載ロジック/ ユーディナデバイスアジア(後工程)化合物半導体/ シンガポールエプソンインダストリアル(後工程):ASIC,マイコン,メモリ /Linear Technology(一貫工場):リニアIC/ Infineon Technologies(後工程):ロジック/ Micron Technology(一貫工場):メモリ/ UMCi(前工程):ファンドリ/ STATS(後工程)/National Semiconductor(後工程):ロジック/ SSIC(前工程):ロジック
インドネシア
15
ビンタン
PT.YOSHIKAWA Electoronics(後工程)
バタム
Infineon Technologies(後工程):ロジック
16
西ジャワ州
シャープ・セミコンダクタ・インドネシア(後工程):IC,オプトデバイス
17
ジャカルタ
インドネシア松下(後工程):マイコン/ NECセミコンダクターズ・インドネシア(後工程):リニア,ディスクリート
FPD産業
ASEANでもFPD化の流れ
これまで,日本の家電メーカー各社は東南アジア諸国連合(ASEAN)地域でのCRTテレビの生産拠点を築いてきたが,LCDやPDPなどの薄型テレビの普及に伴い,同地域での生産体制にも変化が生じている。シャープはすでにCRTからの完全撤退を発表し,LCD事業を推進しているほか,各社とも生産ラインの縮小や事業の再編を進めている。パネルコストを削減するために,今後は中国などへの生産拠点の移転なども考えられるため,ASEAN地域における CRTの生産体制をいかにしてLCDやPDPなどのFPD生産の拠点として再生できるがが注目される。
AFPDがLTPS TFT-LCD本格量産
東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)の子会社AFPD(シンガポール)は,02年11月より低温poly-Si TFT-LCDの本格量産を開始した。製造として量産準備を進め,02年11月に本格量産を開始した。同社の工場建家は建築面積2万4400m2の6階建て,投入ガラス基板サイズ730×920mm2で,3万枚/月の生産能力を確保している。低温poly-Si TFT-LCD工場として世界最大で,かつTFT-LCD工場としても東南アジア最大を誇っている。東南アジア地域においては,一部のTN/STN LCDメーカーに加え,TFT-LCDの後工程などが行われているが,AFPDが低温poly-Si TFT-LCDの本格量産を開始したことは,同地域におけるFPD化が加速していることの象徴ともいえ,経済的にも大きな影響を与えると期待される。
新興メーカーへの生産ライン一式を提供
大日本スクリーン製造は,02年以降,国内のLCD製造装置メーカーと協力し,東南アジア諸国で事業展開するLCDパネルメーカー向けに,LCD用カラーフィルタ製造に必要な全生産ライン一式を受注できる販売体制を構築している。新設工場に必要な各工程の装置を他社製品も含めて同社が一括で受注し,各工程に最適な装置を組み合わせて効率的な生産ラインを提案している。1工場当たりの受注価格は80〜100億円程度としている。
台湾や中国をはじめ,東南アジア諸国では新興のLCDパネルメーカーによる工場新設が進んでおり,こうしたメーカーにとって,洗浄,塗布,露光,現像など各工程の装置を組み合わせて,最適なラインを構築するのは困難となる。そこで,同社では第5世代(1100×1250mm2)のカラーフィルタ製造ラインを対象に,顧客の要望に合わせて,カラーフィルタ材料の開梱から工場内物流,製造プロセスに至る新規工場で必要な装置一式をセットにして提供・提案する。
半導体製造装置・材料産業

図2 ASEANの半導体製造装置市場推移 (弊社推計)
半導体産業におけるASEANの位置付けとしては,組み立て拠点中心であり,日本のデバイスメーカーの後工程再編時は,多くのラインがASEANに集約されることとなった。一方,前工程ラインについてはシンガポールなど一部の国を除いて建設されおらず,今後の建設計画もない。 デバイスメーカー各社の目は,巨大なコンシューママーケットを併せ持つ中国へ向けられており,その中国を凌駕する魅力を創出することは容易なことではない。ただし,インドについては,長期的視野で見た場合,市場の潜在性は高く,第二の中国となり得る可能性は十分持ち合わせていると考えられるが,2010年以降でのことと思われる。 なお,シンガポールでは,半導体産業の発達と共に,関連産業も育っており,材料関連メーカーや海外の半導体製造装置メーカーの進出も相次いでいる。また, NECエレクトロニクス,STMicroelectronicsなどのように,デザインセンターやR&D施設を設立するメーカーも増加してい。
製造装置・材料市場

図3 ASEANの半導体製造用材料市場推移 (弊社推計)
04年のASEANの半導体製造装置市場は,前年比89.5%増の28億100万ドルとなった。内訳は,シンガポールが17億ドル,タイが1億ドル,マレーシアが6億7000万ドル,インドネシアが2100万ドル,フィリピンが3億1000万ドル。
一方,ASEANの04年半導体製造用材料市場は,前年比11.3%増の17億2700万ドル,内訳は,シンガポールが11億ドル,タイが5500万ドル,マレーシアが4億1000万ドル,インドネシアが1200万ドル,フィリピンが1億5000万ドルと推計される。
【この記事は「特別調査レポート 2005 ASEAN/インドの半導体・FPD・電子部品産業」より抜粋】