マイクロマシン/MEMSの最新動向と製造装置・部材産業
MEMSの応用分野別市場動向
自動車分野
巨大な自動車産業
自動車は,産業規模が桁違いに大きく,また構成部品点数も2〜3万点に達する大規模な加工組立型産業である。鉄鋼,化学といった素材から電機・電子など,その関連産業は多岐にわたっている。自動車分野は,MEMS関連でも市場規模が最も大きく,10年に5148億円,11年には6543億円に達すると予測される。
さらにエレクトロニクス化へ
近年,自動車の制御は,燃費向上や環境,安全,快適性の要求により,油圧やカムによるメカ駆動から電動・電子制御へとシフトし,さらに,ハイブリッド車の実用化や,電気自動車,燃料電池自動車の開発も進んでいる。また,ITS(Intelligent Transport Systems)やETC(Electronic Toll Collection System)に代表される通信による道路交通インフラのIT化など,今後,自動車のエレクトロニクス化への歩みは一段と加速していくと考えられる。
最新の自動車においては,センサが電子制御ユニットの,いわば知覚器官となっており,センサの役割は,燃料噴射圧測定,燃料タンク残量検知,エンジンオイル状態のサンプリング,エアバッグの適時作動,オープンカー横転時のロールオーバーバーの展開なども含まれる。MEMSセンサは,これらの働きにおいて,従来型センサより,さらに正確かつ小型軽量で信頼性も高い。MEMSセンサなしでは,自動車工学における革新技術が達成されることもなく,また一連の機能,高い信頼性,低価格化も実現できなかったものと考えられる。
深い関わりのある自動車とMEMS
自動車分野では,80年代半ばから,エアバッグシステム(加速度センサ)やABS作動装置(加速度センサ),エンジン制御システム(圧力センサ),燃料噴射システム(エアフローセンサ)などでMEMSを用いたマイクロセンサを搭載したシステムが実用化されている。自動車は,MEMS技術の黎明期から長く深い関わり合いを持ち,情報通信分野とともにMEMSの技術と市場を牽引する役割を果たしてきた。
現在,安全性・低公害性などのため多くのMEMSセンサが自動車制御に利用されている。さらに進んで無公害化を目指した燃料電池自動車は,MEMS・ナノテクノロジーの研究と密接に関係している。
1. パワートレイン制御
パワートレイン制御システムとは,燃料噴射制御,点火時期,アイドル回転数,ノック制御などエンジン制御に関係しており,自動車の環境に対する負荷を制限する重要なシステムである。このシステムに使用されるMEMSデバイスの代表例として,エアフローセンサ,排ガスセンサがある。また,フローセンサなどで多く使用されているマイクロバルブは,設計手法が未確立のため設計に多くの時間とノウハウが要求されていたが,新しく提案された流体モデルを用いれば,使用用途に応じたバルブ設計が容易に行える。さらに,燃焼制御のための排ガスモニタ用の,ZrO2とPt電極を用いたO2センサでは,電極界面抵抗を低減するためのGLE(Graded composition Layer Electrode)を開発し,線形性の高いO2センサを実現している。
2. ボディ制御
ボディ制御システムは,自動車車内の環境向上によって運転者の安全,利便を実現するシステムである。1チップで車内の温湿度・圧力を測定する集積化環境センサ,動的に露点を検出する結露検出センサ,車内の空気清浄度を測るCO2センサ,内装材料などから発生するVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)ガスセンサなど,運転者の運転環境をつぶさに観測することで,安全性を確保するシステムが特徴的である。また,悪天候や後退時など,運転者の視界を補助するための各種イメージセンサや,義務化されつつあるタイヤ空気圧の個別モニタシステムの開発などにもMEMS・ナノテクノロジーが利用されており,自動車用に実用化されればMEMS・ナノデバイスの大幅な普及につながると考えられる。
3. シャシー制御
自動車の基本性能である「走る,曲がる,止まる」には,運転者の技能と,車両の性能が大きく関係している。車両(シャシー)制御システムでは,運転者の技能を補助し,安全性の向上を図るため,自動車の挙動を左右する慣性を検出する慣性センサ(加速度センサ,ジャイロセンサ)が重要となる。加速度センサはすでに市場が成熟しつつあり,高S/N化,温度特性向上,多軸化なども重要となる。中でもヒータと温度センサを用いた可動部のない加速度センサなどは,消費電力問題を除けば,熱を利用したMEMSデバイスの実用性という面で非常に興味深いセンサである。
4. 情報通信
ITSやETCをはじめとする情報通信システムは,運転者と外部を結ぶことにより,渋滞緩和や無駄経路走行を低減し,環境および利便性,安全性を満足させるものである。このような大規模な情報処理システムの構築には,通信デバイスなどの性能を飛躍的に向上させる必要があり,その開発へのナノテクノロジー応用が期待されている。
主要デバイスメーカー
1. Freescale Semiconductor
Freescale Semiconductor は,80年代後半に,自動車用エアバッグ市場向けの表面マイクロマシン加工された1軸加速度センサの開発に着手し,加速度センサの分野に進出した。現在は,2軸ならびに3軸センサもラインナップし,1.5G〜250Gまでの加速度センサを揃えている。また,1.5G〜10Gの範囲で加速度を選択できるGセレクト機能を装備したセンサでは,同じセンサを複数のアプリケーションに利用できる。同社の加速度センサは,自動車のロールオーバー,マルチ・エアバッグやHDDを搭載した携帯端末など,小さな力の変化を正確に検知することが求められるアプリケーションが対象となっている。
2. Analog Devices
Analog Devicesは,集積MEMS加速度センサとジャイロセンサのサプライヤである。同社の「iMEMS」(集積化マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)加速度センサは,独自の製造技術による加速度センサで,自動車のエアバッグシステムに革新をもたらした技術である。iMEMS加速度センサは「Motion Signal Processing」ソリューション用製品であり,1チップ上に小型で堅牢なセンサ素子と,その信号処理回路を同時に搭載するもので,サイズ,消費電力を削減するとともに,性能向上と製品への組み立てやすさも実現している。
〈参考文献〉
1) 電子情報技術産業協会ホームページ
2) Robert Boschホームページ
| この記事は特別調査レポート「2007 マイクロマシン/MEMSの最新動向と製造装置・部材産業」より抜粋しております。MEMS関連市場の現状と将来展望を徹底予測。さらに各種MEMSの開発動向から,MEMSデバイス,装置・部材,大学・研究機関の最新動向までを詳述,マイクロマシン/MEMSを完全に網羅しています。くわしくはこちらから |
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