2005プラズマディスプレイ(PDP)入門セミナー
−ビジネスとテクノロジーを分かりやすく解説−
05年7月26日,東京・神保町の学士会館にてプレスジャーナル主催の「2005プラズマディスプレイ(PDP)入門セミナー」が開催された。講演では,PDPの市場動向から製造技術まで幅広い分野が網羅された。講演の概要を振り返る。
PDPの現状と将来展望
プラズマディスプレイの現状と将来展望(PDPの基礎,構造,産業)
元佐賀大学教授 内池平樹氏

元佐賀大学教授 内池平樹氏
最新のPDPは,ディープワッフルリブと高Xe封入の適用により,輝度1000cd/m2と発光効率1.8lm/Wを実現し,消費電力が40型で 306W,50型で380Wという製品が実用化されている。しかしながら,PDPにはLCDと拮抗してFPD市場をリードするための世界戦略が必要だという。 ただ,LCDにも課題があり,プロフェッショナルな角度からPDPテレビの画質に比べると, LCDの画質,特に動的画像表示はPDPに比べると劣る点がある。また,Hgの環境汚染に対する規制強化にも注意が必要となる。さらにPDPとLCDの製造ステップ数は,PDPが約70ステップ,TFT-LCDが約140ステップとなっているが,このステップ数が投資金額とコストを左右し,今後のFPD市場における優劣に大きく影響するという。
PDPの今後の課題として,(1)ガス組成の検討,(2)セルおよび電極構造の改良,(3)駆動方式の検討,(4)材料の開発,(5)製造プロセスの改善および開発,が挙げられる。また,コストに関しては,Samsung Electronicsから発売されたVixslimなどを例に,素早い対応が必要となる。はじめに低価格,その後に高品質という戦略をとるのがよいのではないかという。
PDPの高画質化
大画面薄型TVはなぜプラズマなのか―PDPの高画質化―
パイオニア技術開発本部PDP開発センター 打土井正孝氏

パイオニア 打土井正孝氏
大画面TV用途のFPDに関しては,PDPはピーク輝度を上げやすい自発光型であり,また全面白表示でも十分な輝度があり,総光量が制御できるため過剰なまぶしさを感じさせない点で有利だとしている。消費電力に関しては,300W以下が目標であり,面積に比例する消費電力の増加は受け入れられないという。 PDPの消費電力は,絵柄により消費電力が下がり,43型のPDPでは,全白表示を100とした場合の相対電力は全黒では30程度に抑えられている。LCDは,バックライトが光り続けているため,絵柄による消費電力の低減はない。LCDにおいても画面のピーク輝度に応じてバックライトを制御することが始められているが,平均輝度では下がらないことや輝度のリニアリティの悪さから適用範囲が限られ,大きな効果が出にくいのが現状だという。
同社では,さらなるPDPの高画質化に向けた開発を行っている。セル構造は,従来のストレートタイプからディープワッフルリブを採用することで,高輝度,高効率を実現している。また,T字型電極の採用により,陽極発光を利用することで,紫外線効率を従来比で20%向上させている。T字型電極は,隣接セルの干渉が少ないことから高Xe化も可能だという。
PDPパネル製造技術
よくわかるPDPパネル製造技術
Halla大学新素材工学部教授
先端素材研究所所長 正木孝樹氏

Halla大学 正木孝樹氏
バス電極・アドレス電極形成法として,薄膜形成+フォトエッチング法,感光性ペースト法,感光性シート法が採用されている。特にフォトリソを用いた感光性ペースト法は標準の工法となっており,量産技術が確立されている。ただ,課題として,ローコスト化が残されている。また,バス電極に比べ要求がラフなアドレス電極においてはスクリーン印刷やインクジェット法が検討されている。 バリアリブ形成プロセスにおいては,机上レベルを含めるとその工法は50種類近くに及ぶ。現在は,サンドブラスト法が事実的な標準となっているが,感光性ペースト法やエッチング法も採用されている。 蛍光体層形成プロセスにおいてはこれまでスクリーン印刷法が用いられてきた。しかし,最近になってインクジェット法やディスペンサ法に代表される新しいアクティブ法が採用されている。感光性ペースト法も検討されているが,工程数が非常に多く,混色の危険性もあるため,実採用には至っていない。
蛍光体形成プロセスでは,RGB蛍光体を塗り分ける必要があるため,他の形成層と比べて工程数が多くなることが課題となっている。このプロセスはバリアリブ間の溝に蛍光体を落とし込めるという特異なプロセスであるため,これまで精度面の要求は低かった。しかし,PDPに高解像度が必要とされるようになったため,精度面での要求が引き上げられている。従来の印刷法では,高精細化やコストダウンに限界が見えてきているため,ディスペンサ法による蛍光体層形成の技術確立が緊急課題となっている。しかし,ディスペンサ法にはノズル詰まりの発生原因となっている蛍光体ペーストの均一分散や蛍光体粉末制御に加えて,機械的な問題解決が課題となっている。 透明電極形成プロセスは,材料によって形成法が異なる。ITO の場合にはフォトエッチング法が使用され,SnO2の場合にはリフトオフ法が用いられている。工法として,安価なスクリーン印刷法も検討されているが,シート抵抗値がネックとなり,実用化には至っていない。ただ,次期量産ラインでは透明電極そのものを撤廃し,バス電極のみで放電する仕組みが本命視されている。駆動方法がクリアできれば,透明電極レス化が進むことが予想されるという。 前面基板上の放電電極間に形成されるブラックストライプは,外光反射を低減し,パネルのコントラストを高めるという機能を有している。ブラックストライプ形成法として,感光性ペースト法や感光性テープ法が採用されている。
PDPの蛍光体技術 ―よくわかるPDPの蛍光体技術―
大電 機能材料開発室研究グループ長 張書秀氏

大電 張書秀氏
蛍光体に求められる特性として,発光特性,安定性,温度特性,粉体特性がある。発光特性は,発光効率が高いこと,色純度が良いこと,残光が少ないこと,輝度飽和がないことが求められる。安定性は,化学,熱,励起源などに対して安定であることが求められる。温度特性は,デバイスの使用温度下に消光が起こらないことが求められる。粉体特性には適当な粒子径,粒子分布,密度などにより緻密な蛍光膜ができることが求められる。 PDP の高画質化に発光効率は不可欠な要素だが,現在の総合効率は1.5%に留まっている。内訳は,パネルにおける放電効率が40%,Xe励起効率が50%,真空紫外線の発生効率が75%,真空紫外線の伝達効率が50%となっている。また,蛍光体における変換効率は33%,可視光の伝達効率は60%となっている。 パネル作製工程中における蛍光体の問題として,(1)ペーストによる蛍光体の汚染,(2)加熱工程における蛍光体の劣化があるという。これにより,発光効率の低下や色純度の変化が引き起こされる。
PDP用ドライバIC技術―よくわかるPDP用ドライバIC技術―
NECエレクトロニクス 第5システム事業部
表示システム事業部PDP開発プロジェクト 高橋慶十氏

NECエレクトロニクス 高橋慶十氏
PDPの画素を点灯する方法に,1ラインごとに全ラインをスキャンするシングルスキャンと1画面を上下に分け,1度に2ラインずつスキャンするデュアルスキャンがある。シングルスキャンの場合にはデータドライバがダブルスキャンの半分になるものの,1チップ当たりの消費電力は約4倍となる。この方式は,一般的に大型・高精細のパネルでは難しいとされている。デュアルスキャンの場合にはドライバ数はシングルスキャンの2倍となるが,書き込み速度に余裕があり,低消費電力化に有利とされている。 高橋氏は,今後のPDPドライバの課題として,さらなるコストダウン,低消費電力化,高速・低振幅インターフェースによる信号配線減と低EMI化,出力波形のコントロールによるセットでのEMI低減を挙げた。