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セミナー報告

06 半導体ビジネス戦略セミナー
−勝ち残りをかけた各社の事業戦略 −

06年2月22日,東京・神保町の学士会館にて,プレスジャーナル主催「06 半導体ビジネス戦略セミナー」が開催された。本セミナーは,国内外からIDMやファンドリ,ファブレスなど6社の半導体メーカーならびに半導体アナリストが自社の今後の事業展望や全体市場の動向に関する講演を行った。各社が06年の市場をどのように見ているのか,またそれに対してどのような戦略をとるのかを報告する。

富士通 電子デバイス事業本部 副本部長
八木春良氏

富士通 八木春良氏
富士通 八木春良氏

富士通の電子デバイス事業本部の副本部長である八木春良氏は,半導体業界の現状認識から自社の電子デバイス事業の方向性と事業戦略を語った。 半導体ビジネスを牽引するのは10年先もPCや携帯電話のようなボリュームを出せるアプリケーションである。富士通ではこの数年で,そのようなボリュームを出せるようなアプリケーションに対応できるような体制作りを進めてきており,現在はロジックを中心に,よりアプリケーション側に近づいたビジネスを進めるためにメディアデバイスと電子部品を併せた形での事業を進めている。これまで同社のロジックビジネスは,先端プロセスに対する事業の比率が高かった。今後は,先端より1世代以上前のプロセス世代を基盤事業として収益の柱として構築することを目的に,ボードやモジュールまで含めたトータルソリューションを提供していくという。また,これまでASICを重視してきた戦略を, ASSPを重視するビジネスへと転換する計画で,画像やワイヤレス,セキュリティなど注力分野に対し,リソースを投入していくという。

これまでの同社の投資戦略はDRAM,LCD・PDP,フラッシュメモリと複数の部門に跨り行われてきた。多くの部門を切り離した今後はロジックに対する集中投資を進めていく計画であり,三重県に有する300mmウェーハ対応工場第1棟の投資前倒し,06年度の第3四半期頃をメドに月産1万5000枚の生産能力を構築するという。また,建設を開始した第2棟も,生産能力の増強を推し進めていくとしており,稼動予定の07年度で月産1万枚,最終的には月産2万 5000枚程度の生産能力を構築する計画である。さらに,既存工場に対しても,効率化投資により生産能力を強化していくことで基盤事業の強化を図ることで,キャッシュカウとなるビジネスの領域の拡大を図っていくとした。

NECエレクトロニクス 基盤技術開発事業本部長
福間雅夫氏

NECエレクトロニクス 福間雅夫氏
NECエレクトロニクス 福間雅夫氏

NECエレクトロニクス(NECEL)は,「コネクテッドインテリジェンスに向けて」と題して,同社基盤技術開発事業本部長である福間雅夫氏が技術戦略について語った。 システムLSIに特化してきた同社が,今後成長を果たすためには,コネクテッドインテリジェンスが一つの鍵となるという。システムLSIは,現在シングルコアからマルチコアへと移行し,将来的にはチップ間同士がやりとりを行い,全体として分散と協調を行うようになるという。システムLSIの進化は,高速化や低消費電力化といった一元的な性能向上の側面から,安全性,拡張性,耐環境性といった複合的性質,つまり人間が安心して依存できる性質(ディペンダビリティ)が高いものの要求にシフトしてきているという。また,接続性に関しては,より高品位が要求されており,最終的には自律的な接続が要求されるという。コネクテッドインテリジェンスとは,接続性とシステムLSIのインテリジェント化の双方を実現するための手法である。

また,LSIの消費電力が増加し,これ以上のパッケージコスト上昇や冷却性能の向上などはビジネスとして見た場合,現実的ではなくなってきており,低消費電力化は避けられない。そのため,同社のようなIDMでも回路とデバイス双方の低電力技術を上手く組み合わせるような取り組みを進めているという。ただし, low-kやhigh-kは,単に使用すれば即座に低消費電力につながる,というわけではない。それらを使いこなす回路技術や設計技術が必要となり,それらを今後の微細なプロセスで実現可能なのはIDMであるとした。 加えて,自社の強みとして,多様な組み込みメモリを有していることを挙げた。特に,グラフィック向けにはZrO2を絶縁膜に採用することで,コンパクトなDRAMメモリセルを構築することが可能となる。将来的には信号処理や認識技術と同メモリ技術を組み合わせることで,インテリジェントな方向に持っていきたいとした。

Spansion Corporate Vice President
Hans Wildenberg氏

Spansion Hans Wildenberg氏
Spansion Hans Wildenberg氏

Spansionは,同社Corporate Vice Presidentであり,Spansion Japanのワイヤレス事業本部長であるHans Wildenberg氏が,携帯電話市場を中心にフラッシュメモリの現状とその戦略を語った。 同社は独自技術のMirrorBitによるNOR型ならびにORNAND型のフラッシュメモリを提供している。富士通とAMDとの合弁会社として発足し, 05年12月には米Nasdaqに上場を果たした。注力している市場は携帯電話を中心とするワイヤレス市場ならびにデジタル家電に代表される組み込み機器用途である。同社では,携帯電話と組み込み機器をあわせた市場規模を05年で90億ドル,09年には150億ドルに達するものとみている。伸びる市場に対し同社は,それぞれの市場における上位OEMカスタマを顧客として持っており,市場に対しての影響力を高めることが可能であるとした。 日本市場においては,プリンタ,コピー機,車載向け半導体,デジタル家電,アミューズメント機器,通信・ネットワーク機器と幅広く浸透しており,同社の組み込み機器市場における地域別割合では日本が最大を占めている。

携帯電話におけるフラッシュメモリ市場は近年,データストレージとしての要求の高まりとともにNAND型の需要が急増している。 MirrorBit によるNOR型フラッシュメモリはフローティングゲート型のNOR型と比べメモリセルをシンプルにすることが可能であるため,製造におけるクリティカル工程を40%削減することが可能であり,またより小さなダイサイズを実現することが可能である。また,ORNAND型は,NAND型と比べ動作電圧を下げることが可能である他,NAND型と同様の書き込み速度を実現しており,06年第1四半期中に1Gビット製品の生産を開始することを計画している。 携帯電話向けとしてはMCPでの提供を行っており,06年第2四半期からは1GビットのORNANDに256MビットのNORと256Mビットの擬似 SRAMを組み合わせたMCPや256Mビットもしくは512MビットSDRAMを組み合わせたMCP品などの量産を開始する計画であり,07年第1四半期からは65nmプロセスを採用したMirrorBit採用の2GビットのORNAND製品をサンプル出荷する計画となっている。 現在,前工程工場を四つ,後工程工場を四つ有しているが,五つ目となる前工程工場の建屋はすでに完成しており,装置の導入を待つ段階となっている。

TSMC ティーエスエムシージャパン FTS&M ディレクター
石原宏氏

TSMC 石原宏氏
TSMC 石原宏氏

TSMCは「コンシューマ時代の半導体産業」をテーマに,ティーエスエムシージャパン FTS&M ディレクターの石原宏氏が講演を行った。 最初に同氏は06〜10年の半導体産業の見通しについて,穏やかな成長を遂げるとともに,以前にも増して最先端技術の採用が進むだろうと述べた。また今後は,家電市場が半導体産業を成長させる原動力となるだろうとの予測も示した。こうした予測について同氏は,70年代はメインフレーム,80年代はミニコンピュータ,90年代はPCといった具合に,各時代において半導体産業の牽引役となってアプリケーションを図示し,現在のPCに取って代わりつつあるアプリケーションとして,コンシューマエレクトロニクス製品群を挙げた。 さらに「製品の多様性」,「素早い製品の立ち上げ」,「低価格」といった項目をデジタル需要市場における成功要因とし,コンシューマ製品では支配的な業界標準が未だ確立していないため,多様なアプリケーションが求められている状況を説明したり,激しい価格の変動に対応するためには,素早い製品立ち上げが不可欠であることに言及した。

また同氏は,半導体装置メーカーの課題も紹介した。第一に,装置メーカーとデバイスメーカーがロードマップの整合性を図るとともに,ツール仕様定義に共同で携わる必要性を示した。第二に,コンシューマエレクトロニクス業界に経済に歩調を合わせる必要性が示された。さらに第二の課題に関連にして,次のウェーハサイズに移行する際,生産性は現行の2倍にまで拡大される必要があるとの見方も示した。最後に第三の課題として,柔軟な生産性を実現するために装置のカスタム化が必要であるとし,小さなロットサイズや頻繁に変わるレシピへの対応が求められることなどを理由とした。

Xilinx ザイリンクス 代表取締役社長
吉澤仁氏

Xilinx 吉澤仁氏
Xilinx 吉澤仁氏

Xilinxは,日本法人であるザイリンクスの代表取締役社長である吉澤仁氏によって同社の半導体ビジネス戦略が語られた。最初に,84年設立のPLD専業メーカーである同社について,7500以上の顧客を抱え,年間に5万デザインを提供していることなど紹介された。 またカスタムロジックとしてのPLDとASICの比較も示され,量産化に至らなくても使いまわすことが可能である点や,先端のプロセスをより早く使える点といったメリットが示された。なおチップ単価に関しては,ASICの方が安いものの,半導体の集積度が1.5〜2年で倍増する「ムーアの法則」によって,実質的な価格差は解消されるとの見方が示された。 さらに高機能の「Virtex」,量産モデルの「Spartan-3E」および「CoolRunner」などの製品が紹介された後,先端FPGAにおける同社の実績が紹介された。同社は05年末で4ファミリ,28品種のFPGAを量産しており,90nm FPGA世界出荷の7割を同社が供給しているとのデータが示され,同社およびパートナー企業から3万超の開発ボードが出荷されていることも紹介された。

また同社のR&Dに対する考え方を表す例として,ITバブル崩壊後の02〜05年にかけての期間でも,売上高の15〜20%の金額が,毎年のR&D投資に用られたことがアピールされた。さらに同社が,製品の急速立ち上げおよび安定供給を保証するため,常に2社のファブパートナー企業を確保していることについても言及された。同社は,東芝およびUMCに製造を委託し,300mmウェーハによる90nmプロセス製品を推進している上に,65nmデバイスの開発も加速させており,同社初の65nm製品となるVirtexを06年に発表する予定であると述べた。なおXilinxは,東芝およびUMCの両社と, 65nm世代以降のついても開発提携を存続・拡大する。

エルピーダメモリ Chief Technology Officer
安達隆郎氏

エルピーダメモリ 安達隆郎氏
エルピーダメモリ 安達隆郎氏

エルピーダメモリは,同社Chief Technology Officerの安達隆郎氏によって同社の06年事業戦略が語られた。 まず最初に,生産面における90nmプロセス製品量産と開発面における70nmプロセス世代への傾注が,06年戦略の2大目標であることが述べられた。これらの目標をクリアすることで,同社はDRAMベンダのトップ3入りを目指すという。 次に300mmウェーハに対応した生産施設のE300,プロセスロードマップなどが紹介された後,ArF液浸露光に関して,安定した生産を確保するためには,k1値が0.34よりも大きくする必要があることを示した。なお同社は液浸露光技術について基礎検討を進めるとともに,06年末には液浸スキャナを導入し,07年の半ばには最終的な量産機の選定を行う予定であるという。 また製品に対する低消費電力化要求について,モバイル用製品は07年以降に1.2V品へ移行し,PC用製品も逐次低電圧品へと移行するとの見通しが示された。さらにDRAM市場のトレンドの変化については,04年時点で7割ほどをPC向けが占め,残りの3割をデジタルコンシューマ製品とモバイル製品が二分していた状況が変化し,08年にはPC向けは4割ほどとなり,デジタルコンシューマとモバイルを合わせた市場の割合がほぼ倍増するとの予測が示された。

なお最後に同社の戦略的アライアンスが示され,生産関係では組立/テスト分野におけるテラプローブ,ファンドリ分野におけるPSCやSMICとの協力関係が紹介された。一方の開発関係では,マスク分野における凸版印刷,実装分野における新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とのパートナーシップが紹介された他,プロセスおよびデバイス研究分野における広島大学などとの関係も示された。こうした各方面との連携を推進しながら,同社は高性能DRAMに注力し,高付加価値製品の提供を強化するという。

データ ガレージ 代表取締役
南川明氏

データ ガレージ 南川明氏
データ ガレージ 南川明氏

データ ガレージ 代表取締役の南川明氏は,特別講演として「半導体市場展望」をテーマに講演を行った。 まず,半導体の主要アプリケーションであるPCの需要を見てみると,足元の状況は若干鈍化傾向にある。BRICsでの個人消費は引続き好調であるが,米国を中心としてデスクトップPCの企業向け出荷がスローになってきていることがその要因である。また,携帯電話などのモバイル系については,一部のデバイスメーカーで製品の出荷を遅らせているなどの話は出てきているものの,全体としては堅調に推移している。06年1〜3月期の落ち込みは例年に比べて緩やかであり, 06年の台数ベースでの成長は10%程度と推計される。さらに,デジタルコンシューマ,車載用,ゲーム用,産業用などをみても,それ程大きな調整の動きはみられない。

DGレシオ
半導体・電子部品の受注/販売レシオ(DGレシオ) 出所)データ ガレージ

しかしながら,同社では,半導体市場において,今後は調整の動きが出はじめ,それが06年末まで続くと予測している。その根拠として挙げられるのが,半導体の販売・受注の頭打ちである。WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)発表の受注高は,05年11月まで右肩上がりで推移していた。それが,05年12月頃から減少に転じているためである。 一方で,07年以降の半導体市場は,08年の北京オリンピックを見据え,非常に大きな設備投資,消費のテコ入れが,中国だけでなくアジア全域で起こるため,半導体を含め,エレクトロニクス機器全体の市場が活性化する可能性が高いとしている。


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