特別セミナー
−注目集まる太陽電池のすべて,技術開発,ビジネス戦略の最新動向を徹底検証 −
現在,地球環境,エネルギー問題に大きな関心が寄せられる今,再生可能エネルギーとして太陽光発電への期待が高まっている。そこで,プレスジャーナルでは,06年7月13日,特別セミナー「注目集まる太陽電池のすべて」を東京・神田の学士会館にて開催。太陽電池の最新のビジネス戦略や開発動向を徹底検証した。
太陽電池の普及に向けて
「注目の太陽電池,その開発動向と将来展望」
産業技術総合研究所 増田淳氏

産業技術総合研究所 増田淳氏
増田氏は,太陽光発電の導入を環境問題の一つの切り札として積極的に進めていく必要があるとし,30年には全電力の10%程度に当たる100GWを太陽光発電により賄えるとした。現状では,04年に1GWの生産量を超えた程度だが,それでも30万tの炭酸ガス削減に寄与したことになり,太陽電池を設置することで確実に地球温暖化が抑止できる。太陽電池の普及のためには,そのコストを下げる必要があり,中でも太陽電池モジュールの製造コストを10年までに現在の1/3の100円/W,30年には50円/Wとするのが目標であると語った。 また,発電コストも,現状において40円/kWhであるものを30年には,汎用電力並の7円/kWhに,さらに太陽電池モジュールの変換効率も,30年には現在の2倍に当たる20%程度にすることが課題であるとした。
太陽電池の普及に向けて
「拡大する太陽電池市場,その動向を徹底検証」
資源総合システム 貝塚泉氏

資源総合システム 貝塚泉氏
貝塚氏は,先進国を中心に国別での太陽光発電普及施策の動向についてを述べた。米国では,研究開発が中心であったが,05年に包括エネルギー政策法が成立し,太陽光発電システムを購入した企業や個人に対する法人税あるいは所得税を控除する普及施策が始まっていると説明した。また,各州が中心になり普及施策を拡大しており,特にカリフォルニア州では,17年までに3000MWの太陽光発電システム導入を目指すなど積極的であると語った。一方,欧州市場を牽引しているドイツは,50年までに全エネルギーの50%を再生可能エネルギーで賄う国家目標を挙げていると語った。そのため,太陽光発電だけでなく風力発電などの導入も積極的に進める政策を打出している。また,04年に改正された再生可能エネルギー法では,フィードイン・タリフ(割増発電電力買取制度)政策により太陽光発電システムからの電力の買取額を大幅に値上げし,通常の電気代の約4倍で買取り,しかも20年間その買取りを保障するとしている。そのため,投資した金額を必ず回収できることから,爆発的に市場が伸びていると語った。 さらに,他の欧州諸国においても,フィードイン・タリフ政策の導入が進んでいることから,今後,同地域において太陽光発電産業の発展が期待できるとした。
太陽電池の普及に向けて
「第3世代型PVモジュール開発とビジネス戦略」
MSK 石川修氏

MSK 石川修氏
石川氏は,今後,太陽電池の1W当たりの単価は下がって行くが,1m2当たりの単価は上がると想定。その理由として,太陽電池モジュールの変換効率の向上が挙げられるが,それ以上に太陽電池はこれから建材一体型になっていくためだと述べた。 例えば,太陽電池を屋根材として利用する場合,住宅の寸法や規則と合わせてシステム化を行い,設計や施工に支障が出ないようにして欲しい,あるいは,防水機能を持たせたり,断熱性や遮熱機能,雪が積もらないような機能が欲しいという建築側やユーザーの希望を取入れた機能を,建築材料としての太陽電池は持つだろうと語った。 また,壁材としての利用を考えた場合においても,単に雨,風からの防御だけでなく,意匠性や耐久性などのさまざまな機能を持つ壁が,発電もすることで,建築用太陽電池モジュールの1m2当たりの単価は上がっていくだろうと話した。 なお,今後の太陽電池メーカーは,発電効率だけを意識して電力会社をライバルにするのではなく,建築設計者やユーザーに直接価値を訴えることができるものを創作する必要があり,太陽電池に付加価値を持たせ,家庭に入りやすいようにすることが重要であると指摘した。
百花繚乱の太陽電池技術の動向
「CIS系太陽電池開発の最新動向」
東京理科大学 杉山睦氏

東京理科大学 杉山睦氏
杉山氏は,CIS系太陽電池の特徴として,現在,多結晶薄膜系の中で,最高の変換効率(小セルでは19.5%)を達成している他,一般家庭用(3kW)太陽電池に必要な原料が,1g=1Wとした場合,Siの3kgに比べて260gで済むことを挙げた。また,長期信頼性,耐放射線性を有することに加え,セルからパッケージまでの作成工程数がSi系の1/2以下であると語った。そのため,少ない初期投資で製品作成が可能である上に,ロール・トゥ・ロール方式でモジュールの作成ができると説明した。 製造の観点からみると,光吸収層CIGSの作成に使用される蒸着法は,装置が一つで済む他,現在の最高変換効率CIGSを作成できる利点があるものの, Cu・In・Ga・Seの各原料の制御または大面積化が困難なことに加え,チャンバやルツボのSe汚染があることを挙げた。それを改良したのがセレン化法であり,最初にCu・In・Ga(CIS)を蒸着した後,ボックス内でSe蒸気またはH2Seを充填することにより,CIGSが作成できるとした。同方法では,CISをスパッタや印刷でも作成可能であるため,大面積化が可能である他,シンプルな装置で対応できると述べた。しかし,CISとCGSに層分離が起きる他,セレン化に使用されるH2Seが有毒であるため,工場の安全対策にコストがかかるとした。 CIS 系太陽電池の飛躍に向けて,同氏は,オールドライプロセスの確立やCdなどの環境負荷物質の撤廃が必要であるとした。なお,同氏の研究室では,セレン化において危険度の少ないDESeの採用の他,Cdを不要とする,ヘリコン波励起プラズマスパッタ法による透明導電膜のダメージ抑制成長の開発を行っている。
百花繚乱の太陽電池技術の動向
「球状Siを用いた太陽電池開発の最新動向」
京セミ 稲川郁夫氏

京セミ 稲川郁夫氏
稲川氏は,Siの供給がタイトになっている中,同社の球状Siを用いた太陽電池は,融液滴下法による表面張力の利用により作成されるため,原料の切削ロスがない他,製造エネルギーの節約ができると述べた。また,対極に電極を形成していることから,ショートや電気の取出しの不均衡を防ぐことができる他,マトリクス状に太陽電池を接続させたシートフィルムの作成が可能で,ある程度自由に曲げられ,さらにその形を保持できると説明した。さらに,360度から光を受光できるため,反射板を組み合わせることで,パワーを1.5倍以上に増加させることが可能と述べた。その他,一粒一粒が個々に機能する太陽電池であるため,直並列接続選択の柔軟性を生かしながら,モジュールを形成できるとした。一方,用途としては,デザインの自由度を生かし,微小IT用電源やモバイル電源,集光による電源パネル,省エネ型採光ガラス建材,BIPVなどに展開し,10年までに市場へ投入したいと語った。 なお現状では,最適な特性を持つ球径を1〜1.2mmとみなし,作込みを行っているが,材料の節約の観点からさらなる小型化へ向けて構造のシュミレーションなどを行っているとした。
百花繚乱の太陽電池技術の動向
「色素増感太陽電池開発の最新動向」
東北大学 内田聡氏

東北大学 内田聡氏
内田氏は,色素増感太陽電池(DSSC)が,5年前まで研究者の趣味程度の段階で止まっていたが,現在では民間の技術と資金で実用化の扉を開こうとしていると述べた。DSSCの特徴として,材料がTiO2(導電膜)と色素,ガラス基板だけである他,設備投資が少なく済むことから,低コストで作成できることに加え,色素を変えることでカラフルな太陽電池ができることを挙げた。さらに,TiO2厚のコントロールで,シースルーなものができるとした。また,その発電の仕組みは,(1)色素が光を吸収し電子を放出,(2)電子がTiO2に移動し電極を伝わる,(3)さらに電子が対極に回る,(4)両極間に満たされたヨウ素溶液中で酸化・還元反応を繰返すことで電気が流れると説明した。 一方,DSSCの理論変換効率は,Si系と同等の31%程度とし,現状の最高効率は11%程度であるとした。 現在,使用されているRu錯体色素は,650〜700nmで光吸収ができなくなるため,赤紫外線側に50〜100nmほど吸収範囲を広げることで,飛躍的な変換効率の向上が実現すると語った。 なお,同氏の研究室では,マイクロ波を使用してTiO2だけを加熱することに成功している。同方法は,電気炉で加熱した場合に比べて,同等の変換効率を維持しながらも,加熱時間が1/10〜1/20に短縮できる。さらに,この加熱技術と特殊な塗布技術を融合することにより,フィルム型のDSSCを開発している。
製造装置の進化
「太陽電池向け製造装置の最新動向」
島津製作所 生地望氏

島津製作所 生地望氏
生地氏は,島津製作所の反射防止膜用PCVD装置「SLPC-71H」の説明を行った。同装置は,大面積電極により,SiNx成膜を780枚(156mm□)/時間の高スループットで行える他,デポダウン方式の採用で,表面全体の成膜が可能であることに加え,トレイ搬送により薄い基板での高歩留りを実現,簡易基板搬送と自動の脱着ステーションが容易に構成できる。また,高温基板加熱が可能なため,パッシベーション効果を生じることができる。そのため,反射防止膜とパッシベーション効果の併せ技で,競合技術である常圧CVDによるTiO2成膜の場合と比べて,セル変換効率を向上できると述べた。 さらに,同氏は,06年に開発した反射防止膜成膜用ターンバック式PCVD装置「SIPHA」の説明を行った。同装置は,1プロセス・1チャンバのコンセプトで,SLPC-71Hと比べて,チャンバ数やガス系・排気系など付帯設備,トータルプロセス内の搬送所要時間の削減を実現している。その結果,コストを下げながら,装置能力の向上を達成している。