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セミナー報告

第74回VLSI FORUM
−超微細プロセス時代の洗浄技術−

座長 垂井康夫氏
座長 垂井康夫氏

06年11月24日,東京・神保町の学士会館にて,プレスジャーナル主催「第74回VLSI FORUM 超微細プロセス時代の洗浄技術」が開催された。本フォーラムでは,座長に東京農工大学名誉教授・武田計測先端知財団常任理事の垂井康夫氏を迎え,微細なプロセスでの洗浄技術について,デバイスメーカーならびに製造装置メーカー各社が,どのような課題が存在し,どのような洗浄技術が必要とされているのかを語った。

デバイスメーカーの視点で見た洗浄
「デバイスメーカーが求める超微細プロセスの洗浄技術」
東芝 冨田寛氏

東芝 冨田寛氏
東芝 冨田寛氏

冨田氏は,デバイスメーカー側から見た洗浄技術について講演を行った。45nmプロセス以降の微細デバイスにおける洗浄工程では高集積化に伴うマージンの低下,歩留りの低下を引き起こすパーティクルサイズの縮小化,新材料の導入などの課題が存在しており,それらを解決するためには従来の延長線上ではない新しいプロセス技術を導入する必要があるとした。

フロントエンドプロセス(FEOL)では,バッチ式洗浄がメモリなどの大量生産に向いているが,パーティクルを除去するためにはメガソニックを使用するしかない。ただし,メガソニックはパターン破壊を引き起こしやすいため,高い均一性を有する振動子を形成することが必要である他,間接槽でのエネルギー減衰抑制や純水中の溶存ガス量をコントロールすることによりパターン破壊の抑制が必要であるとした。しかし,45nmプロセスにおいては,メガソニックの出力を低く抑えてもパターンを維持することが非常に厳しく,バッチ式でのメガソニック洗浄が限界に来ており,枚葉式による洗浄技術の開発が必要であることも示唆した。

また,バックエンドプロセス(BEOL)では,加工時における微細な残渣の除去が課題になっているとした。循環使用が前提のBEOL洗浄ではパーティクル除去フィルタにポリマーが蓄積し易く,またフィルタよりも細かい30nm以下のパーティクルを除去することが難しい。そのため,フィルタの寿命管理が重要になっているとした。さらに,循環薬液の場合,使用回数によりエッチングレートが変動するため,配線幅のコントロールが難しい。このような課題は,やはり希釈した薬液を用いたワンバス洗浄を用いることにより,管理が可能になるとした。 この他,乾燥技術,特に枚葉式の乾燥ではウォーターマークとパターン倒れを両立する技術がほとんど存在していないため,新たな技術の登場が必要であるとした。

BEOLで求められる洗浄技術
「超微細プロセスのBEOLで求められる洗浄技術」
大阪大学大学院 青木秀充氏

大阪大学大学院 青木秀充氏
大阪大学大学院 青木秀充氏

青木氏 は「超微細プロセスのBEOLで求められる洗浄技術」と題して講演を行った。 配線工程は洗浄工程の他にCMPやめっき工程があるが,半数がウェットプロセスであり,Cu配線とlow-k絶縁膜は常に水と薬液にさらされている状態にある。そのため,ドライエッチング後のポリマー除去やCMPの後洗浄ではCu/low-kにダメージを与えずに清浄化する必要がある。また,裏面やベベル部で生じるクロスコンタミネーションの抑制の他,CoWPなどのバリアメタルがlow-k上に残らないようにするためにも洗浄は必要となっている。

プロセスの微細化が進み,low-kがポーラス化すると,low-kはダメージを受けやすくなりlow-k中にCuが拡散しやすくなる。対応策として側壁などをシーリングすることなどが考えられるが,薬液自体は高い剥離性を有しながらCu膜の腐食を抑え,またlow-k膜にもダメージを与えないものとすることが望ましいとした。また,ベベル部の膜剥がれが最近,クロスコンタミネーションを引き起こすとして問題となっており剥がれたゴミの除去や剥がれそうな膜の除去を行う必要があるとした。この他,ポーラスlow-kでは水分が空孔の中に浸入,残留すると膜全体の誘電率を上昇させるため,水を抜くためのダミーの孔を多く空け,加熱して水分を飛ばすことが必要となっているとした。

ゲート周辺でスプレー方式を採用
「45nmプロセスで求められる洗浄装置/技術」
大日本スクリーン製造(DNS) 荒木浩之氏

大日本スクリーン製造(DNS) 荒木浩之氏
大日本スクリーン製造 荒木浩之氏

荒木氏は 「45nmプロセスで求められる洗浄装置/技術」をテーマに講演を行った。 同氏は,半導体プロセスのトレンドとして,06年には32nmプロセス向けの工場建設や45nmプロセスでの量産計画などが発表され,引続き微細化が進行していくと述べた。その中で,洗浄装置需要のトレンドとして,バッチ式洗浄装置は今後も堅調に推移し,BEOLなどで使用される枚葉式洗浄装置は増加傾向にあるとした。

まず,ゲート付近の洗浄ではパターンが倒壊しないように除去することが求められるため,接触式のブラシでは良くゴミを除去できるがダメージが大きいことから,同社はスプレー方式を採用している。同社のスプレー技術としては「Softspray」,「Nanospray」,「Nanospray2」の3種類がある。これらの棲み分けとして,Softsprayは強いパワーでゴミを除去するため,N2の流量を稼ぐことができる。一方,Nanosprayと Nanospray2は低ダメージを重視している。特にNanospray2は,65/45nmの低ダメージ要求に応えるものとして06年7月にリリースされた。Nanospray2の特徴は,液滴のサイズが大きいものに対して差別化が図れるところである。つまり,大きい液滴が高速でぶつかるとパターンが倒れてしまうが,Nanospray2は液体の超微粒子をウェーハ表面に最適な条件で噴射することにより,従来は困難とされていた超微細パターンのデバイス洗浄において,ダメージを抑えることが可能である。 さらに同氏は,ベベル周辺の汚染もロット不良を引き起こすことなどから,どのように対処していくか大きな課題となっていると述べた。同社が現在,一番効果的と考えているのは,ベベル専用ブラシ「Double Taper Brush」などでベベル周辺を上半分,下半分に分けて部分洗いしてから,ウェットステーションなどで洗浄を行う方法を提案している。

裏面/ベベル洗浄に優位な枚葉式
「超微細プロセスに対応する枚葉式洗浄技術」
日本SEZ 増本哲己氏

日本SEZ 増本哲己氏
日本SEZ 増本哲己氏

増本氏は「超微細プロセスに対応する枚葉式洗浄技術」をテーマに講演を行った。 45nmプロセスでは,high-kやメタルゲートに代表されるように材料が多様化している。これらの材料は主に金属であり,Si結晶中の挙動はデバイスの特性そのものに大きな影響を与えることが予想される。これに伴い,半導体製造工程はさらに複雑さを増しており,使用される材料によってより適切な洗浄が求められている。そこで,薬液の選択や,混合比を変えるなど自由度がある枚葉式の洗浄装置は必然的に需要が高まってくる。

半導体製造装置市場における各装置のブレイクダウンをみると洗浄装置市場は全体の10数%を占めている。また,各装置市場の05年〜10年までのCAGR (年平均成長率)をみると,ほぼすべての工程が5%程度で伸びていくと考えられている中,枚葉式洗浄装置は10%を超え,他の装置に比べて約2倍以上の伸びを示すだろうといわれている。同氏は枚葉式洗浄装置が伸びる理由として,前述した材料の多様化の他に,裏面,ベベルの洗浄がここ2年で非常に注目が集まってきたことを挙げた。 裏面およびベベルの洗浄は,枚葉式洗浄が生み出したともいえるアプリケーションである。デバイス製造工程において,裏面の窒化膜およびpoly-Si膜は除去するケースがある。この場合,エッチングには枚葉処理として適切な処理時間を達成するため,高温のフッ酸やフッ硝酸といった強酸が使用される。一方,微細な回路面についてはこれらの酸が回り込むと確実に歩留り低下を招く。同社の枚葉式洗浄装置では,表の回路面を全く保護することなく,裏面やベベルの洗浄を行うことができるチャック機構が採用されている。チャック機構とは,ウェーハをひっくり返し,裏からN2などの薬液をかける。そして,薬液がベベル部まで表面張力で回り込んでくるのを利用して洗浄を行う。この方式の利点は,裏から洗浄を行うため,強力な薬液も使用できることである。

より小さなパーティクルの発生と付着を防がなくてはならない現在において,パーティクルの原因となるベベル部の不要な膜を除去することは非常に重要となってきている。またhigh-k,シリサイドで使用されるHf,Co,Ni,Ptなどのメタルが導入されるに従い,その裏面汚染除去の重要なテーマとなっており,すでにBEOLではCuの裏面ベベルは必須の工程として定着しているとした。

純水・薬液を使用しないドライ洗浄
「45nmプロセス時代の歩留り向上に向けた洗浄技術」
エム・エフエスアイ(m・FSI) 糸井賢一氏

エム・エフエスアイ(m・FSI) 糸井賢一氏
エム・エフエスアイ 糸井賢一氏

糸井氏は「45nmプロセス時代の歩留り向上に向けた洗浄技術」をテーマに講演を行った。微細構造を実現する半導体製造プロセスでは,歩留り低下の要因となる微小欠陥を除去するとともに,微細パターンに対するダメージ制御,エッチングロスの低減,ポーラスlow-k膜への吸湿防止対策などが要求される。一方,パターンの微細化・脆弱化に伴いパターンダメージのしきい値と微小粒子を除去可能なエネルギーは非常に近づいており,その制御が課題となっている。例えば,ITRSのロードマップによるとDRAMハーフピッチサイズは量産プロセスとして 07年に65nm,10年に45nm,13年に32nmへと3年スパンで微細化が進行していき,特に脆弱になるゲートパターンに対するダメージケアがより一層重要になってくる。除去対象となる微小粒子のサイズはハーフピッチの半分といわれており,粒子サイズが小さくなるほど除去性能は劣化していくため,微小粒子の除去性能向上が求められている。

それに関連して同氏は,同社が45nmプロセス以降への対応として開発した極低温エアロゾル洗浄技術の紹介を行った。同技術は,ArやN2の固体粒子をウェーハ表面上の異物に衝突させ,物理的な作用により異物をウェーハ表面上から除去する方法である。ArとNの混合ガス,あるいはN2ガス単体を熱交換器で一旦プレクールし,一部は液化する。これらの混相流をプロセスチャンバ内でArあるいはN2の凝固点以下まで膨張冷却させて固体粒子を形成させる。同技術は薬液や純水を一切使用しない洗浄技術であり,通常のウェットプロセスで問題となるFEOL酸化膜のエッチングロス,ウェーハ表面のチャージダメージ,疎水性膜表面におけるウォーターマークの発生,ポーラスlow-k膜への吸湿などのダメージを懸念する必要がない。微細化や高性能化によりダメージを受けやすくなっているこれらの膜に対して一切ダメージなく,表面の欠陥異物だけを選択的に除去できるため,既存のプロセスへ任意で追加処理することが可能である。

密閉型の洗浄装置
「スピンウェット処理とガス制御を融合した枚葉式洗浄装置」
リアライズ・アドバンストテクノロジ(リアライズAT) 吉川和博氏

リアライズAT 吉川和博氏
リアライズAT 吉川和博氏

吉川氏は「スピンウェット処理とガス制御を融合した枚葉式洗浄装置」をテーマに講演を行った。同社は密閉型の枚葉洗浄装置の開発を行っており,チャンバ内にN2を充填して洗浄を行う技術の研究を行っている。04年に初めての完全密閉型枚葉式洗浄装置を完成し,東北大学などに納入した実績も有している。

同装置のターゲットは,エピ成膜の前洗浄やBEOLにおけるエッチング後洗浄などにおける自然酸化膜防止であるが,低O2雰囲気中での洗浄だけでは結果が解りづらいため,プロセスが歩留りや信頼性へどのように影響するのかが見えづらいのが最大の悩みとなっているとした。また,同装置は,薬液を分別して回収することが可能な独立したカップ構造を有しており,パーティクルの付着とウォーターマークの防止が可能となっている他,裏面/ベベル洗浄ではベベル部をピンでチャックすることにより,表裏ともに非接触で処理を行う方式を採用している。さらに,スピンドル部にシールを施すことによりO2濃度の上昇を抑える事に成功している。 将来的には,密閉式の利点を活用する意味でも他の装置とのインテグレートを行い,直接装置同士のラインを繋ぎたいとした。

超臨界による洗浄技術
「超臨界技術による微細プロセス洗浄」
つくばセミテクノロジー 長谷川新一氏

つくばセミテクノロジー 長谷川新一氏
つくばセミテクノロジー 長谷川新一氏

長谷川氏はエスペックと共同開発している300mmウェーハ対応臨界洗浄装置について講演を行った。 超臨界流体とは気体と液体が共存できる限界の温度と圧力(臨界点)を超えた状態にあり,通常の気体,液体とは異なる性質を示す流体である。超臨界流体を半導体洗浄に利用するメリットは,表面張力がゼロであるため,各種流体の表面張力によるデバイスのパターンが潰れるといった問題を解決できることにある。また,純水や薬品の使用量を抑えることができ環境や安全に優しいという特徴も有している。

開発した装置は,安全性を重視し,9段階の安全インターロックシステムを採用している他,8個のチャンバが搭載可能であり高スループットを実現している。同装置は適用アプリケーションとして,洗浄に加え超臨界CO2による乾燥プロセスが検討されている。また,超臨界流体によるlow-k層のK値修復では, K値が2.7から2.4に回復した例を示した他,ポストアッシングにおけるリーク電流の改善などについても例が示された。

洗浄技術の将来展望
「半導体洗浄技術の将来展望―微細プロセスで求められるものとは―」
ソニー 服部毅氏

ソニー 服部毅氏
ソニー 服部毅氏

服部氏は半導体製造における洗浄技術の将来性について講演を行った。 同氏は,半導体産業は製造におけるパラダイムシフトが生じ,市場の牽引役がメモリからシステムLSIへと移ってきており,それに伴い生産形態やウェーハの処理方式など,製造に関わるありとあらゆるものの転換が求められているとした。 洗浄技術もバッチ式から枚葉式へと移行が進んでおり,この動きは今後も変わることはない。また,枚葉化と併せて新材料の適用が進んでおり,それに伴う課題の噴出が生じていることから,それを解決するために新たな技術が必要とされるなど,ビジネスチャンスが生み出される可能性が高いとした。この他にも,Ge やSiGe,SiCといったSi以外のウェーハでも洗浄に関する研究が進められており,07年には半導体洗浄に関する国際シンポジウムの開催も予定されているとした。

また,洗浄工程においてはゲート電極などの微細構造におけるダメージとプロセスの微細化によるパターン倒れの二つが大きな問題となっている。こうした問題は以前から存在していたが,プロセスの微細化によりクリティカルな問題となってきており,特にMEMSのような中空構造ではより切実な問題となっているとした。こうした問題に対応するためにはダメージを与えない洗浄技術の開発が必要であり,二流体ジェットによる洗浄やエアロゾル洗浄,HFベーパー洗浄,超臨界洗浄の他,ナノプローブやレーザなどを用いた局所クリーニングなどが有望であるとした。


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