07春季FPDシンポジウム
−低コスト化と高機能化が鍵を握るLCD部材技術 Innovation −
07年3月6日,学士会館(東京・神田)にてプレスジャーナル主催の07春季FPDシンポジウム「低コスト化と高機能化が鍵を握るLCD部材技術 Innovation」が開催された。同シンポジウムでは,光学フィルムやバックライト,ドライバICなどのLCD重要部材において,激化する材料メーカー各社の技術戦略などの講演が行われた。各講演内容の概要についてレポートする。
基調講演
「LCD生産の新ビジネスモデル,トータルでの低コスト化・高効率化を実現」
産業技術総合研究所 原史朗氏

産業技術総合研究所 原史朗氏
原氏は,LCD産業において,企業は難易度の高いInnovationを生み出すことにより,収益を上げられる,または生き残る度合いが高くなると指摘。今後,全方位的なコストダウン,コンパクトな製造,競争力のある部材製造に取り組むことが必要とした。そこで,生産システムの革新として,従来の大量生産型から変種変量型生産への転換が重要になると語った。
具体的には,コンベア方式からセル方式への転換であり,それにより,ローコスト,オンデマンド,ミニファブが実現でき,自社製品の潜在ニーズとリソース投入量,生産量が追随し,高効率生産が行えると述べた。なお,市場における固定部分(一般的な製品)には大量生産方式を,需要変動が大きい特殊な製品には変種変量方式を併用することが望ましいとした。同氏は,無駄を省いた変動に追随したもの作づくりとして,ミニマル・マニュファクチャリングを提案し,一例として局所クリーン化生産システムを挙げた。同システムは,ミニエンバイロメント化し独立したそれぞれの装置に,前室,転送メカ,搬送するための密閉容器を付加し,人空間と製造物空間を分離して,生産やもの作りを行う方式である。これにより,クリーンルームが不要となり,超高品質な製品を実現できる他,人に最も優しく,省エネルギー化を達成できるとした。
一方,新しいビジネスの提案として,投資生産性良く,オンデマンドな生産を実現にするため,古い工場・設備を使用して最終製品サイズのパネル生産を行うことを挙げた。これにより,生産量は減少するが,今までリスクを考慮し製造できなかった面白い製品づくりに挑戦できるとした。
LCD市場変遷と展望
データで見るLCD産業「パネルの低価格化と市場の拡大,その変遷と展望」
アイサプライ・ジャパン 増田淳三氏

アイサプライ・ジャパン 増田淳三氏
増田氏は,LCD市場は,TV用で損して,モニタやノートPC用で儲けるという構造になっていると述べた。その中で,ノートPCは今後,15〜17型が主流となる他,10年には大多数がワイド化するとし,さらにワイドは生産効率が良いため,価格も安定化すると予測。一方,モニタは10年に,約2億台の出荷を見込み,TVと同様の伸びを示すことに加え,25〜28型などの大画面製品も伸びるが,21・22型が主流になるとした。また,半数程度がワイド化し,ワイドはG5以上で生産効率が良いことから,価格も安定すると予測した。TVでは,LCDが全世界TV市場において,05年に11%のシェアであったものが,09年に48%となる一方,価格は下落,サイズは大型化,高解像度化,ワイドにシフトするとし,特に40型以上が急成長すると指摘した。なお,大型化の背景として,市場の価格下落から,パネルメーカーは利益を生み出すため,大型にシフトせざる得ない状況を説明した。同氏は,面積生産キャパシティにおいて,G7もしくはG8で10年までの市場予測を十分にカバーできるとした一方,PDPやマイクロディスプレイの市場を取るならば,G9またはG10も必要となるかもしれないと語った。
LCD部材のInnovation
樹脂と工学技術の融合:高機能化が進む光学フィルム革新(1)
「樹脂と光学技術の融合。イルミネックスシリーズがディスプレイをさらに進化させる」
GE Plastics 内田貴之氏

GE Plastics 内田貴之氏
GE Plasticsは,Illuminex Display Filmsとして,上・下拡散フィルム,プリズムフィルム,拡散板をラインナップ。内田氏は,これらの製品が,同社の光学特性の高いPC樹脂の技術および,樹脂を溶融しフィルムないし板に加工する技術に加え,光学系設計技術の優位性から生み出されたと述べた。また,拡散フィルム/板は,コーティングに頼らず拡散機能を付加しているため,従来のPETフィルム上に拡散ビーズをコーティングするタイプに比べて,顧客先での歩留りを向上できる他,高温・高湿度の環境下にて高い信頼性を有しているとした。一方,プリズムフィルムは,PCフィルムに施した独自のパターニングにより,従来製品に比べて,画面の輝度を 3.5%および6.8%(上拡散フィルムを除いた場合)向上できるとした。さらに,顧客は従来,モアレを最小限に抑えるため,パテントが確立したプリズムフィルムを僅かに回転させる手法を取る必要があったが,同社のプリズムフィルムは,フィルムを回転させることなくモアレ効果を抑制できるとした。
LCD部材のInnovation
偏光板保護機能を統合:高機能化が進む光学フィルム革新(2)
「高光学特性と耐久性を有した位相差フィルムに偏光板保護機能を統合」
オプテス 梅澤佳男氏

オプテス 梅澤佳男氏
オプテスのゼオノアフィルムの製造法は,溶融押出成形法を採用し,材料COPペレットの溶融後,ロールに押し出すと非常にシンプルであることから,生産性が高く,設備も低コストを実現する上,優れた厚み精度を達成しているとした。梅澤氏は,ゼオノアフィルムが,透明性が高く(光線透過率92%),濁度にも優れる(ヘイズ<0.1%)他,複屈折率が小さく,光学的等方性に優れ偏光板保護フィルムに好適であることに加え,低光弾性で大型LCD-TVに好適である上,屈折率波長分散が非常に小さく,反射型LCDなどにも好適と述べた。また,低吸湿・透湿であり,高耐熱性を有しているとした。 同氏は,同社が偏光板とゼオノアフィルムをロール・ツー・ロールで貼り合わせることを提案し,それが実際行われていると語った。さらに,ゼオノアフィルムは,TACフィルムと同じように保護膜の性質を有していることから,位相差フィルムで保護膜を兼用し,片側の保護膜を不要とできることから,コストダウンを実現すると述べた。今後は,TV用途において40型以上にターゲットを絞った位相差フィルムの技術実現,中小型用途では薄肉化の追求に取り組むなどとした。なお,07年9月に第2工場が竣工する予定で,年産1500万m2の計画であると語った。
LCD部材のInnovation
進化するLEDバックライト
バックライト(1):LEDバックライトユニットの方向性 「携帯電話からカーナビやノートPCへと進化を続けるLEDバックライト」
シチズン電子 奥脇大作氏

シチズン電子 奥脇大作氏
奥脇氏は,LEDバックライト市場は現在,携帯電話やデジタルカメラ向けが主力となっているが,今後は,カーナビゲーション,ノートPC,大型TVへと進化していくと述べた。また,シチズン電子の小型LEDバックライトでは,高輝度化,ユニーク,薄型化の3本柱でラインナップを行っているとした。小型高輝度バックライトにおいて,サイズ2.5型,厚さ0.826mmで,LED搭載数五つで輝度1万2000cd/m2の製品を,開発中のものでは,サイズ 2.5型,厚さ0.626mmで,LED搭載数五つで輝度9000cd/m2の製品を紹介。また,小型薄型バックライトの開発中のものとして,プリズムシートを1枚使用したサイズ2.0型,厚さ0.443mm,LED搭載数四つで輝度6100cd/m2の製品を紹介。さらに,ユニークな小型バックライトとして,1枚の導光板でメイン/サブディスプレイを一度に照射できる製品や,湾曲バックライトなどを紹介した。なお,さらなる薄型・ローコスト化を図るため,プリズムシートレスタイプを開発中であると語った。一方,中型バックライトの開発品として,7型のノーマルタイプおよび双方向指向性の製品および 12.7型の製品を紹介。なお,開発ロードマップでは10年に,輝度効率1.7倍以上,消費電力40%以上削減を計画しているとした。 最後に46型LCD-TV用大型RGB-LEDバックライトを紹介。同製品は,小型LEDを散りばめる構造で,90%の均一性を実現,消費電力を226W に抑えながら,輝度6000cd/m2を達成している。なお,開発ロードマップとして,10年にはLED数の3割低減,消費電力4割低減を計画していると語った。
LCD部材のInnovation
高機能化を支えるバックライト技術
バックライト(2):CCFL,LEDそれぞれの方向性 「パネルの高機能化を支えるバックライト技術の最新動向」
日本ライツ カランタル・カリル氏

日本ライツ カランタル・カリル氏
カランタル・カリル氏は,バックライトの構成部品および,携帯電話,カーナビ,ノートPC,モニタ,TVそれぞれのバックライトの構造を詳細に説明。また,CCFL光源の特性として,効率が周囲温度の影響を受ける他,色純度の低下を挙げた。一方,LED光源は,長寿命,広色域,環境に優しい,低電圧駆動などの長所があるものの,温度と経時変化に対する課題および加法混色が必要であることを述べた。青色LEDに黄色の蛍光材を使用した擬似白色チップLED は,蛍光材およびLEDのバラつきが存在すること,CCFLと比べて色再現性が弱いが,温度が低い場合,効率が高いことを指摘。また,近紫外線+RGB蛍光体を使用した光源は,光束が低いものの,CCFL以上に色再現性が良いと説明。なおLEDは,選別,バックライトの厚み,三原色の混色,動光板との勘合,消費電力,放熱問題,コストなどが,まだCCFLより課題となっているため,大中型分野で置き換えが進んでいないと述べた。
LCD部材のInnovation
多様なニーズに対応するドライバIC
高画質化・高機能化に対応するドライバIC 「多機能・高機能・低コスト・高信頼性。多様化するニーズにいかに対応していくのか」
沖電気工業 高橋敦氏

沖電気工業 高橋敦氏
高橋氏は,大型TFTドライバICの技術トレンドとして,階調がノートPCやモニタでは6ビット,TVでは8ビットが主流となっており,07年には10 ビットが登場し,12ビットの開発も進んでいると語った。また,ドライバの1チップ当たりの出力ch数は,ソースドライバにおいて700ch程度がモニタに使用されており,次の世代としては1000ch程度が市場に登場するとし,1000ch程度は大型パネルに適用することに問題があるため,おそらくノートPCに採用されると述べた。一方,ゲートドライバは,ソースドライバに比べて大きな進展は見られないとし,現状で270ch前後が存在し,今後は 300〜400chのものでパネルに対応できると語った。パッケージは,ファインピッチのCOFが採用されており,PCBレスも一般製品に適用されているとし,究極的にはTapeレスが登場するだろうと述べた。 一方,沖電気工業では,TV用ソースドライバとして,8/10/13ビットをラインナップしており,13ビット品ではRGB独立ガンマ制御で,色補正が可能であると語った。また,動画特性を向上するためフレーム周波数120Hzでの駆動が必要であることから,高スルーレートのドライバを,さらに従来回路に比べ約35%低発熱化したドライバを開発したと述べた。その上,解像度ではDegital ChinemaやSuper High Visionも視野に入れた開発を行っているとした。加えて,インターフェースでは,mini-LVDSをベースとしたFP-LVDSを開発し,HD- TVの120Hz駆動に対応可能としていると述べた。最後に,コスト対策として,マルチch化によるドライバ品種数削減および多ch化による使用個数削減などの取り組みを語った。
07年は10年に向けたターニングポイント
「新たな局面を迎えた液晶産業,パネル・装置・材料メーカーの今後の枠組み」
テック・アンド・ビズ 北原洋明氏

テック・アンド・ビズ 北原洋明氏
北原氏は,07年は市場の踊り場の時期にあり,10年に向けたターニングポイントの年になるとし,07年に,将来への布石を打てる企業が,今後の継続的な成長を掴むことができると述べた。さらに,今後の大競争時代を生き抜くためには,大型化だけに頼らない継続的な技術革新が重要であると指摘した。そして, LCDパネル製造において,コスト的には同等だが性能改善が高いものとして,柱スペーサや高精細化技術,広視野角技術を挙げ,性能は同等だがコスト低減の効果が高いものとして,TFTアレイのマスク削減やレジストのスリットコータ,液晶滴下技術を挙げた。また,コスト低減の効果は見込めるが,従来技術との同等性能をいまだに達成していないものとして,インクジェットや印刷法を挙げ,これらの性能を上げていくことが重要になっていくと述べた。そして,真の革新技術とは,パネル性能向上とコストの両方を実現するものであるとし,併せて環境問題への対応も考える必要があると語っている。