|
|
|
| a-Si TFT | LTPS TFT | |
デバイス構造 |
n-ch |
n-ch,p-ch,CMOS |
移動度(cm2/Vs) |
0.3〜1.0 |
10〜600 |
しきい値電圧 |
DC印加で変動する |
基板面内のバラつき有り |
プロセス温度(℃) |
100〜350 |
100〜600 |
マスク枚数 |
3〜6 |
6〜13 |
設備投資金額プロセスコスト |
低い |
高い |
周辺回路の内蔵可否 |
基本は画素トランジスタのみ。最近,ゲートドライバ内蔵も実用化されている |
ソースドライバ,ゲートドライバ,DC-DCコンバータ,DAC,システム・オン・パネル |
現在実用化されているTFT-LCDの表示モードを大別すると,透過型(Transmissive Mode),反射型(Reflective Mode),半透過型(Transflective Mode)がある。各モードのセル断面構造を図1に示す。図1(a)の透過型は,ノートPCやモニタおよびLCD-TV用のTFT-LCDモジュールとして広く採用されているモードである。このモードは,背面からの面状のバックライト光をLCDパネルで時間的空間的に変調し,情報を表示するものである。光源には冷陰極蛍光ランプ(CCFL)や白色LEDなどがあるが,輝度が高いことと演色性が良いことから一般的にはCCFLが使われることが多い。しかし,最近は携帯機器用ディスプレイの光源として白色LEDが多く使われている。透過型は後述の反射型に比べ,コントラスト比や輝度,色再現範囲などの表示性能が優れている。これらは,LCDの光透過率の低さと目障りな表面反射を透過型では強力なバックライトユニット(BLU)で凌いでおり,暗所および室内での表示の視認性は良好である。ただし,LCD本来の低消費電力の特徴はBLUの使用で半減される。
携帯機器用ディスプレイでは,屋外での視認性と低消費電力が極めて重要な要求事項である。この要求を実現するために1枚偏光板方式の反射型が実用化されている。図1(b)に反射型TFT-LCDのセル断面構造を示す。この構造は,拡散反射板を液晶層のすぐ背面に配置(In-Cell構造)した方式であり,反射板と画素電極が一体構造のため,視差(Parallax)による二重像が生じない。従って高精細化が可能であり,LTPS TFT-LCDの特徴が活かせる構造と言える。ランダムな凹凸を有する拡散反射板の反射特性は,視野角を限定して明るさを向上させた場合,明るさの視角依存性が大きい。そこで設定した視野角の範囲内では紙のように一定の明るさを示し,それ以外では反射率がほとんどゼロになるような反射特性が望まれる。
反射型は周囲光を変調することで表示を行う。従って,周囲光が暗くなると自ずと輝度は低くなり,視認性は悪くなる。これをカバーするのがフロントライトユニット(FLU)である。光源としては白色LEDが用いられている。光源の放射光を効率良く面光源にするため,リフレクタ,アクリル樹脂で形成された導光板などから構成されている。
最近の携帯機器用ディスプレイには,通信インフラの整備,すなわちデジタル化とブロードバンド化およびオンラインネット配信やオンデマンド映像配信などの新しいサービス出現により,高精細・高品位の動画性能が要求されている。しかも,いつでもどこでも綺麗な表示品位が要求され,全環境型ディスプレイの実現を望む声が高まってきた。この要求を実現するための表示モードが半透過型である。セルの断面構造は図1(c)に示したが,1画素は2分割された透過部と反射部から構成されている。
透過部と反射部のセル厚が異なるマルチギャップ構造を採用し,各部に対応するカラーフィルタ(CF)は,顔料および膜厚の最適化を図り(Multi Optical Density CF:MOD-CF),透過光および反射光で広色再現範囲を実現し,高品位の表示が得られる構造となっている。現状の構造は,透過型や反射型に比べ構造が複雑で,製造工程に必要なマスク枚数やプロセス数も多い。今後広く半透過型が普及するためには,デバイス構造およびプロセス技術に革新が求められる。表示特性の改善およびコスト競争力のあるデバイス構造の実用化に期待が掛かっている。

図1 TFT-LCD の各表示モードのセル断面構造
1. AM-LCD1)
広視野角化技術は,モバイル機器の新たな付加価値として期待されているTV視聴に欠かせない技術である。一般に携帯電話機のTFT-LCDは,縦方向が長いポートレート型,TVでは横方向が長いランドスケープ型が必要であるため,コンテンツに応じてLCDパネルを90°回転させて使用することになる。従来のTFT-LCDでは,上下方向の視野角と左右方向の視野角が異なっているか,あるいは同じであっても著しく狭い状態であり,使用状態にそぐわなかった。最近は,LCD-TV用の技術を基に携帯機器用に開発された広視野角技術を適用したTFT-LCDも実用化されている。
(1)IPSモード
IPSモードは,その名の通り液晶変形を主として基板面内で生じさせて表示を行う。TFT基板に形成した一対の櫛型電極により横方向の電界を発生させ,液晶分子配列の方位角変化を引き起こすことで動作する。
動作時の液晶配向が主として方位角成分のみであるため,LCDとしては極角方向依存性が原理的に小さいという特徴を有している。従って,均一配向モードとしては視角特性が最も広い。この方式は,従来から用いられてきた対向電極およびTFT基板上の画素電極としてのITOが不要という利点もある。唯一の改善を要する点は,開口率に起因する透過率の低下であり,高精細化を進める際には課題となる。この課題に関して,表示電極(画素電極と共通電極)を絶縁膜上に形成することで透過率を向上できる。ただ,従来の構造に比べ,プロセスステップ数の増加を伴う。このモードは,どこから見ても正面方向と同様な画像を見ることができる。これは,良好なコントラスト特性を有し階調と輝度の関係であるγ特性が,見る角度を変えてもほとんど変化しない特性を持っているためである。

図2 半透過型IPSモードTFT-LCD
(In-Cell位相差板採用)
最近,日立ディスプレイズが携帯電話向けに実用化した半透過型IPSモードTFT-LCDを紹介する2)。開発・量産化した半透過型IPSモードTFT-LCDは,明るい環境下における視認性を向上させるため,戸外での明るい光が液晶を照らした場合,その反射光も画像を表示するように画素構造内に反射部を設けたもの(図2参照)。これにより,室内の比較的暗い環境下では,通常の使用の様にBLからの透過光により画像を出し,戸外の明るい環境下では,反射光により画像を映すことができる。
(2)VAモード
LCD-TV用として実用化されているVAモードは,MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モードとPVA(Patterned Vertical Alignment)モードがある。VAモードは,垂直配向技術と誘電異方性が負の液晶材料を用いた垂直配向液晶モードと配向分割技術から成り立っている。MVAモードは垂直配向液晶のドメイン分割を構造物(リブ)をCF上の対抗電極上に形成することで実現している。任意の位置に構造物を配置することで多分割ドメイン制御が行えるため,4分割以上の液晶ドメインを再現性良く制御可能である。一方,PVAモードはパターニングされた電極をCF上に形成することで実現している。
このモードは,基板表面と液晶分子の長軸とがなす角を変化させ輝度を制御する。液晶分子が垂直に並ぶOFF状態の光遮蔽性に優れている。したがって,正面コントラスト比が極めて高く,1000:1以上の値が実用化されている。また,OFF状態の斜め方向の光漏れはIPSモードに比べ少ないのが特徴である。他方,製造の観点からはラビング処理が不要になる利点もある。
シャープのモバイルASV(Advanced Super View)の動作原理を図3に示す3)。一つの画素は透過部と反射部に分かれており,それぞれの領域はさらに細かいサブピクセルに分かれている。各サブピクセルにおいて電圧無印加時には液晶分子は基板に垂直に配向していて光を透過しない。いわゆるノーマリーブラック状態であるが,電圧を印加することによってサブピクセルの中心からエッジ部に向かって放射状に液晶分子が傾斜する。このように液晶層内にリターデーションが得られ,画像表示が可能となる。透過表示・反射表示ともにノーマリーブラックの状態にするために,偏光板にλ/4のリターデーションを持つ位相差板を貼り合わせている。高コントラスト,広視野角,屋外での高視認性など携帯機器用のディスプレイに要求される特性を満たしている。
同社は,07年4月17日に業界最高レベルの2000:1の高コントラストの新「モバイルASV液晶」を発表した4)。従来の傾斜配向を高精度に制御することで,光の散乱を抑えて黒輝度を下げることにより実現できたとのこと。視野角も従来品が左右上下160°だったものを176°に改善し,応答時間は25msから8msに向上した。なお,全階調での平均応答時間は25ms以下。試作品は2.2型透過型のQVGA,色再現範囲はNTSC比100%。屋外での視認性は透過型のため従来の半透過型に比べ劣る。07年秋に「ワンセグ」対応携帯電話用としてサンプル出荷が予定されている。

図3 モバイルASVの動作原理
(3)OCBモード
OCBモードは,84年に現在Kent州立大学のBos氏らによって「πセル」として提案され,CRTによる立体表示用の高速シャッタとして実用化された。93年に,東北大学の内田教授によってπセルの光学補償法が提案された。このモードは,液晶配向自体が対称な構造のため,図4に示すように自己補償型のモードといえる。しかしながら,この方式はベンド配向状態を利用して動作させるため,より広い視野角特性を得るためには,正面方向の黒の補償を含めた光学補償技術が必須となる。
一方,配向制御の観点からは強い配向ゆがみを有するベンド配向状態を,いかに容易かつ安定して実現するかが重要である。これは,OCBモードを実用化するにあたっての最大課題であった。しかし新規電極構造と駆動方法により,すべての画素を短時間に転移できる技術が開発された。OCBモードは,広い温度範囲で応答時間が短い特徴を有す。−20℃でも110msを実現している。さらに,液晶材料の低粘度化によって40msを実現できそうである。
07年4月に開催されたDisplay2007 国際フラットパネルディスプレイ展で東芝松下テクノロジー(TMD)は,OCBモードTFT-LCDによる超高コントラスト(1000000:1)と超高速応答(動画応答速度2ms)をデモしていた(参考出品)。なお,視野角は上下左右176°である。表2に各種表示モードの光学特性比較を示す。

図4 OCBモードLCDの動作原理
表2 各種表示モードの光学特性比較
| 表示モード | VA | IPS | OCB |
輝度 |
○ |
○ |
○ |
コントラスト比(正面) |
◎ |
○ |
○ |
コントラスト比の角度依存性 |
○ |
○ |
○ |
色再現範囲の角度依存性 |
○ |
◎ |
◎ |
応答特性 |
△ |
△ |
◎ |
2. AM-OLED(AM駆動の有機EL)

図5 OLEDの構造
エレクトロルミネッセンス(EL)は電気的エネルギーを与えることによって発光する現象である。エレクトロルミネッセンスを起こす材料が有機材料であるデバイスを「有機EL」と呼ぶ。発光有機層を二つの電極で挟んだ構造が有機ELデバイスの基本構造である。この構造は発光ダイオード(LED)に類似しているため,OLED(Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれる。発光有機層の光を外に取り出すために,電極の片方はITOなどの透明電極が用いられている(図5参照)。この二つの電極から注入された正孔と電子が移動し,互いに出会って再結合し,有機材料中にエネルギーが与えられ,ルミネッセンスが生じる。つまり有機ELは電流注入型のデバイスである。これに対して,無機ELは交流電圧印加型のデバイスである。
ルミネッセンスは蛍光と燐光に分類できる。蛍光は一重項励起状態から基底状態への遷移に伴う発光,リン光は一重項以外の励起状態(三重項など)から基底状態への遷移に伴う発光と定義されている。リン光は,原理的にはすべての励起状態を利用することが可能であり,最高100%の内部量子効率も理論的には可能である。
(1)有機材料
OLEDに使われている有機材料は,低分子と高分子に大別できる。最初に発光の原理が発見されたのは低分子のものだが(第1回で紹介済み),最近では高分子材料の開発も活発に行われており,特性面でも近づいてきた。両材料は,発光原理には変わりはないが薄膜製法が違う。
低分子材料は,真空蒸着法で製造されている。蒸着温度は分子が気体になるような高温にする必要があるが,有機分子が分解するほど高温にはできないので温度管理が難しい。蒸着の際にガラス基板と金属マスクとの間で生じる熱膨張率の違いから,大型サイズになるほど成膜ムラが生じやすく,大型化が難しいと言われている。また,高精細が要求される携帯機器用のディスプレイとしてはQVGAクラスが限界で,VGA対応は困難である。
一方,高分子は液体に溶かすことができるので,ロール・ツー・ロール法(ロール状に巻いた基板に回路パターンを印刷し,やはりロールに巻いた封止膜などと貼り合わせてから,再びロールに巻き取る生産性の高い回路基板の製造法)やインクジェット法などが適用できる。製造コストも比較的低い。低温で成膜できるためにプラスチックフィルム上に成膜が可能で,フレキシブルなディスプレイが実現可能になる。
(2)カラー化の方式
カラー化の方式には,(1)3色のOLED材料を各々独立発光させる「3色独立発光方式」,(2)青色発光を蛍光変換膜でG(グリーン)とR(レッド)に変換する「色変換方式」,(3)ELの白色発光をCFで分光しRGB表現をする「CF方式」の3種がある。方式ごとにRGBおよび白色の発光材料の開発が進んでいる。課題は,長寿命化と高効率化である。
(3)スイッチングデバイスと補償回路
AM-OLED用スイッチングデバイスとして実用化されているのは,LTPS TFTである。開発レベルでは,a-Si TFTがある。LTPS TFTの課題は,a-Si TFTのしきい値電圧の基板面内の均一性に比べバラつきが大きいことである。そのために,画素単位にしきい値電圧のバラつきを補償する回路が必要で,例えば5Tr1C(5個のTFTと1個のキャパシタ)などが採用されている。一方,a-Si TFTは,DC駆動時のしきい値電圧変動が大きく,この場合も補償回路が必要となる。
これらの課題に対しては目下,補償回路による対策が中心である。これは本末転倒で,デバイス自身で解決を図るべき。過去に,a-Si TFT-LCDの歩留り対策として,画素に複数のTFTを設けるとか,バスラインをダブルにする方法が提案され実用化もされた。しかし,このような方法で現在量産しているメーカーは存在しない。回路技術者の苦労が報われない技術開発は慎む必要がある。
KDDIはメインディスプレイにTFT-OLEDを搭載した携帯電話を市販した。これは「MEDIA SKIN」と呼ばれる機種で,世界初の2.4型,26万色QVGAのパネルが搭載されている5)。搭載が可能になった理由として,パネルの寿命(初期の輝度が半減するまでの時間)が3年を超えたことによる。3年の意味は,買い替えサイクルの平均的な期間とKDDIが設定している時間とのこと。
TFT-LCDと比較して,AM-OLEDは,高コントラスト,広視野角,薄型,堅牢,高速応答などの特徴を有する。しかし,TFT-LCDもこれらの特性では優劣付けがたい物が開発商品化されている。自発光型ディスプレイの最大の短所は,直射日光下での視認性であろう。
「中小型ディスプレイの構造・特徴比較−主要技術を徹底比較−」と題して,AM駆動のFPDの構造と特徴を比較検討した。TFT-LCDは,大型LCD-TVで培った技術を携帯機器用に技術をトランスファするとともに,固有の技術開発を行い実用化している。究極のFPDと言われて久しいAM-OLEDも携帯電話のメインディスプレイに採用された。ただ,現状のAM-OLEDは材料,プロセス,構造など種々の組み合わせが必要な技術である。a-Si TFT-LCDでは小型から超大型ディスプレイに至るまで,基本的に材料,プロセス,構造に基本的な差異はない。今後,AM-OLEDが市場で大きな位置を占めるためには,この教訓(a-Si TFT-LCD技術の継続性)を学ぶ必要がある。
〈参考文献〉
1)鵜飼育弘,「低温ポリSi TFT-LCD技術」EDリサーチ社(2005)
2)O.Itou, et al.,IDW’06 Digest pp.635-638(2006)
3)永田尚志他,シャープ技報 第92号 pp.52-58(2005)
4)シャープ ニュースリリース(2007)
5)MEDIA SKIN カタログ(2007)