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これが中小型ディスプレイの全貌

OLED,EPIDの製造技術動向
― ブレークスルーに期待がかかる技術 ―

鵜飼育弘/ソニー

OLEDの概要

鵜飼育弘氏

第10回では,「OLEDおよびEPIDの製造技術動向−ブレークスル−に期待がかかる技術−」と題して,最近の学会などで報告された最新技術について概説する。

1. カラーTFT-OLEDの作製法

実用化されているTFT-OLED(有機EL)は,低分子材料によるマスクを用いた真空蒸着でR,G,Bを塗り分けしてカラー表示を実現している。図1にこの方式を含めた作製法を示す。1)真空蒸着法は一般に材料の利用効率は数%程度(要求される膜厚分布を得るには蒸発源と基板間の距離が必要で,殆どはマスクおよび防着板に付着)である。しかもこれらの付着物がダストの原因となり歩留りを下げるのみならず装置・冶具類のメンテナンスによる稼働率低下の原因となる。また,TFT-LCDと競合するには高精細化が困難なマスク蒸着に代わる作製法が求められている。

図1 OELDのカラー化方式
図1 OELDのカラー化方式

(1)新型リニアソース
アルバックから有機材料の利用効率を向上した新しいリニアソースが開発された2)。この蒸発源「ULC700-VIS/ULC1000VIS」は,同社の従来品に比べて約20〜30%の有機材料の使用効率向上,マスクに与える熱影響の低減,材料の熱分解・加水分解の防止,蒸発速度の安定性,膜厚の均一性(±1%)を実現した。この蒸発源を用いた成膜装置は,蒸発源の上部に基板を通過させることで着膜ができる構造となっているので,タクトタイムを大幅に短縮できる。

図2 LIPS法によるレーザ転写技術の原理
図2 LIPS法によるレーザ転写技術の原理

(2)レーザ転写技術
ソニーは大型のアクティブマトリクス型OLEDの製造方法として新しいレーザ転写技術を開発した3)。この技術は,Laser Induced Pattern wise Sublimation(LIPS)と呼ぶレーザ転写法で,ガラス基板全面に発光材料を塗布したドナー基板から,RGBの各色を発光する成膜部分を選択的にレーザ照射しマスクレスでパターニングする。この技術の採用で,大型パネルの製造を阻害していたシャドーマスクの歪みによるパターン精度の低下を防ぐことができる。ただし正孔輸送性材料や電子輸送性材料などはパターニングせず,前面塗布する有機材料は従来と同じ蒸着を用いている。
なお,LIPSはドナー基板とTFTを形成した基板を真空中で密着させる。そして,TFT基板上に形成したPDL(Pixel Defined Layer)と呼ぶ外壁で囲まれた部分を真空にすることで,レーザ転写自体は大気圧で行なうが転写する部分は真空中になるようにしている(図2参照)。これにより,転写工程でのドナーの劣化を防ぐことができる。
微結晶Si TFTアレイと低抵抗バスラインをOLEDの駆動に用い,27.3型1920×1080画素のAM-OLEDを試作した。輝度は600Nit,色再現範囲は100%(NTSC比)である。
(3)スパッタリングによるカソード作製技術
デバイスの金属および透明電極の成膜技術としては,有機発光層へのダメージから一般には真空蒸着法が用いられている。アルバックはスパッタリング法で陰極作製技術を開発した2)。この技術は,「ULVAC Buffer Layer」を挟みこんだ構造を開発し,蒸着と同程度の性能を実現した。スパッタリング法の採用で,ステップカバレッジが大幅に改善できTFTのバンク内への付きまわりが良くなり,膜切れをなくせるメリットがある。トップエミッション構造では,合金や透明導電膜のカソード形成が可能となる。

EPID

1. 各種EPID

図3 EPIDのパネル構造
図3 EPIDのパネル構造

図3に各種EPIDのパネル構造を示す。E Inkに関しては先月の記事で紹介した。球状のマイクロカプセルを分散媒体に混入することで,従来のスクリーン印刷技術を使ってカプセルを印刷できるようにしている。
SiPix Imagingは異なる色を表現するために粒子の使い方が少し異なる。同社は,微小な空洞(マイクロカップと呼んでいる)を作り,それを正に帯電した白い粒子と液体顔料で満たしている。電位を変えることで,粒子は画面から遠ざかったり近づいたりする。粒子が画面に近づいたときピクセルは白くなり,遠ざかると液体の色に変わるので,多様な色の液体を使うことができる。
ブリヂストンの技術は,前述の方式と異なり,粒子を流動させる媒体として,液体の代わりに空気を用いている。帯電した黒と白の粒子が狭い空気室の中を流動するように設計されている。デバイスの電位を制御することで,白と黒の粒子を引き寄せたり遠ざけたりして,黒,白と中間色を画素上に表示する。この方式は粒子の流動媒体が空気であり,液体の場合に比べ応答時間が早く,パッシブ駆動方式でも良好なディスプレイを作ることができる。

2. SiPix Imaging

図4 SiPixフィルムの製造イメージ
図4 SiPixフィルムの製造イメージ

SiPixの技術は破損しにくい機構になっており,マイクロカップをロール・ツー・ロール(R2R)製造する方法を確立している。この技術は,マイクロカップ生成と充填封止技術をベースに電子ペーパーの製造技術につながる。
図4に示すようにSiPixのフィルムは,印刷技術を用いたエンボス加工・コーティングのR2R製造法により,大量生産を実現し,大画面を形成することができる4)。ITOのような透明電極で覆われたPETプラスチックシート上に連続して所定の樹脂を塗布する。その後,マイクロエンボス加工は,マイクロカップの三次元の構造を樹脂上に成型する。次に,マイクロカップに所定の材料を注入し封止する。さらに,リリース層はマイクロカップを保護するために積層する。所定のサイズにカッターで切断して完成する。
なお,SiPixのフィルムの厚さは200μm以下で,シンプルな構造によって耐衝撃性を実現している。

3. フレキシブル化

図5 EPLaRのプロセスステップ
図5 EPLaRのプロセスステップ

Royal Philips ElectronicsはEPLaR(Electronics on Plastic by Laser Release)というプラスチック基板向けに独自の技術を開発した5),6)。この技術は図5に示すように,まずTFT-LCDに用いられている無アルカリガラスを使い,その上に標準的なスピンコーティングでポリイミド層を5μm塗布する。ポリイミドはa-Si TFT-LCD製造で使用されるどの温度よりも高い350℃以上で焼成する。このポリイミドでコーティングされたガラス基板表面にSiNx膜を成膜し,その後通常のa-Si TFT製造工程を経てTFTアレイが完成する。最終工程では,ポリイミドはガラス基板から取り外すことが可能なため,非常に薄いポリイミド層の上に標準的な特性を有するTFTアレイを生産できる。ガラス基板を,レーザを用いて剥離することで,出来上がったアレイ基板はフレキシブルである。なお,レーザによる剥離工程前後でTFTの特性に変化がないことが確認されている。しかも,ガラス基板は洗浄,再利用できるためEPLaRの技術では標準的な製造施設においてフレキシブル・ディスプレイが通常のガラス基板のディスプレイよりも安価に生産できる。さらに,既存のTFT-LCD生産ラインを用いたフレキシブル・ディスプレイの生産は,過去の設備投資と蓄積された技術を有効に利用することができる。世界には80以上の生産ラインがあり,これらを有効に用いることが可能である。
07年10月に開催されたFPD International 2007 ForumでPhilips研究所(英国)とPrime View International(台湾)は共同で「a-Si TFT液晶向けラインでフレキシブル・ディスプレイを生産,EPLaR技術の現状と今後の展開」と題して講演した7)。その中で,6型,9.7型,1.9型の試作品を紹介した。なお,量産のスタートを08年としている。SiPixによるEPIDのR2R方式についてはすでに紹介した。しかし,Philipsは講演の中でも,R2R方式は量産に適さないとしている。この件については今後議論が必要であろう。
このEPLaE技術は,a-Si TFT アレイの生産に限らずLTPS-TFTにも適用されている6)。また,ディスプレイとしてはOLEDにもこの技術が適用され18μm厚のディスプレイが試作されている8)。

おわりに

OLEDおよびEPIDの製造技術の最新の動向を報告した。OLEDの製造方法の確立は,ディスプレイサイズに依存しない材料とプロセス技術を目標にすべきである。マスク蒸着法は,化合物半導体(CdSeなど)の薄膜トランジスタが実用化に至らなかった理由を振り返れば明らかである。
EPIDの製造方法は,デバイス構造とも深く関係する。R2R方式か枚葉方式かは現状では結論を出すのは時期尚早である。しかし,時代の流れをR2R方式になるよう課題の抽出と対策を,材料・装置・パネルメーカーが三位一体となって取り組む必要がある。

〈参考文献〉
1)三上明義:2007 FPD 入門セミナー プレスジャーナル(2007.5)
2)アルバック:テクノフロンティア資料(2007.11)
3)T.Hirano, et al.:SID’07 Digest pp.1592-1595(2007)
4)トッパン・フォームズ:プレスリリース(2005.10)
5)I. French, et al.:SID’05 Digest pp.1634-1637(2005)
6)I. French, et al.:SID’07 Digest pp.1680-1683(2007)
7)I.French and Tien-haw Peng:FPD International2007 Forum C-4(2007)
8)H.Lifka, et al.:SID’07 Digest pp.1599-1602(2007)


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