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厚木エレクトロニクス 代表
サクセス インターナショナル 取締役
加藤俊夫
1. NMOSトランジスタの構造
現在,LSIと言えばほとんどがCMOSです。すなわち,NMOSとPMOSが同一チップ上に並んで作り込まれています。したがって,我々はCMOSを勉強しなければなりませんが,高校へ入学するには,まず小中学校を卒業するように,いきなり複雑なCMOSを学ぶよりも,簡単なNMOSから学んだ方が理解が進むと思います。
図1は,ウェーハ断面図でNMOSのプロセスを簡単に表したものです。大つかみに,これを頭に入れておいて下さい。

図1 NMOSウェーハ・プロセスフロー・断面図
2. 最初に行われるのは洗浄
結晶(ウェーハ)メーカーでは,出荷の際にウェーハを良く洗浄し,清浄なカセットに入れて,デバイスメーカーに納入しますが,それでも輸送中の汚れがゼロではありません。そのため,LSIメーカーが最初に行う工程は洗浄工程となります。では,何を洗浄するのでしょうか。この時点で洗浄するものは,主に以下のものになります。
(1)ゴミ:ゴミと言っても,ゴミ箱に入っているような目に見える大きなゴミではありません,1μm以下の顕微鏡でやっと見えるかどうかの極微細なゴミが問題になります
(2)金属汚染:薬液に含まれる微量な金属原子(Fe,Cu,Ni)など。汚染があると,LSIの漏れ電流が多くなる他,電子や正孔の走行を遅くします。また,NaはSiO2中を電界により移動しMOS動作を狂わせるので,厳重な注意が必要です
(3)有機汚染:人のフケや垢,薬液中の微量の炭素分子,純水配管中のバクテリアも有機汚染になります。信じ難い本当の話ですが,超純水中でもバクテリアが生息しているのです
(4)自然酸化膜:Siウェーハが大気に触れると,表面が酸素と結合して薄い酸化膜ができます。この酸化膜には大気中の不純物も含まれるため,汚染源となります。
3. 洗浄方法はRCA洗浄が一般的

図2 バッチ式RCA洗浄の工程手順
ウェーハ25枚をテフロン治具に並べて,薬液や純水の入ったバットの中へ,順に入れて行くことを「バッチ式」と呼び半導体の製造において一般的に用いられています。洗浄工程ではRCA洗浄と呼ばれる洗浄方法が用いられています。RCA洗浄では,まずウェーハを希フッ酸水溶液(HF)の中に入れます。Si酸化膜はガラスの一種で,フッ酸に溶けます。表面の薄い酸化膜が溶けると,その上に付着していた多くの異物も同時に取り去られます。さらに,アンモニア(NH4OH)+過酸化水素(H2O2)で,有機物やパーティクルを取ります。次いで塩酸(HC1)+過酸化水素(H2O2)で金属類を取ります。最後は超純水で仕上げます。
4. 洗浄の後は乾燥
ウェーハを洗浄した後は,濡れたウェーハを乾かさなければなりません。つまり,折角パーフェクトに洗浄ができたとしても,乾燥で問題を起こしては意味がありません。普通は,洗濯機と同じ回転して乾燥させるスピン乾燥が用いられますが,洗浄後の水滴がウェーハ上に残っていると,水とSiが反応して珪酸を作り,円形の模様(Water Mark)を作ってしまいます。それを避けるため,イソプロピルアルコール(IPA)に置換する方法が用いられる場合があります。
5. 熱酸化により酸化膜を形成

図3 熱酸化炉の構造
ウェーハを図3のような炉に入れて,1000℃程度の高温で,酸化性雰囲気(酸素か水蒸気を流す)にすると,Siの表面に酸化膜(SiO2)が生成されます。SiO2の厚みは,温度と時間で決まり,1nmの極薄膜から1μm以上の厚い膜まで様々です。Si基板はイレブン・ナインの高純度であり,それから生成された酸化膜も高純度の石英ガラスです。
酸化炉には,縦型と横型がありますが,最近は縦型が多く,図3のような構造です。
6. poly-Si CVDで成膜
固体のSiには,単結晶(Single Crystal),多結晶(Poly Crystal),無定形(Amorphous)の3種類があります。MOSのゲート電極には多結晶シリコンが用いられます。通称,「ポリ(poly-Si)」と呼んでいます。お巡りさんではありません。
poly-Siの膜を付けるのは,減圧CVD(LPCVD;Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法が用いられます。装置は,図3の熱酸化炉とほぼ同じですが,真空ポンプで減圧にするため,炉心管の出口側が封じられています。導入するガスは,シラン(SiH4)とN2です。SiH4→Si+2H2の反応式に従って,poly-Siがウェーハ表面に付着します。
7. フォトリソとエッチング

図4 地上で作るオーロラ:プラズマエッチング装置
poly-Siは,ウェーハ全面に付着していますので,ゲート以外の部分のpoly-Siをエッチングで取り去るため,フォトレジストでパターニングします。フォトプロセスについては,前回詳しく説明しましたので,ここでは省略します。うろ覚えの方は,前回を復習して下さい。
図1における6番目の項目の説明です。フォトレジストでマスクされていない部分のpoly-Siをエッチングします。Siのエッチングには,昔は溶液の中にウェーハを入れるウェットエッチングが用いられましたが,現在はほとんどドライエッチングです。
まず,ガス分子に図4のようにコンデンサやコイルから高周波エネルギーを与えて,分子をバラバラに壊してしまいます。poly-Siはフッ素系のガスでエッチングされますから,4フッ化炭素ガス(CF4)などをプラズマ化すると,CF2,CF,F,F2など様々な粒子が発生します。酸素はO2,水素はH2,フッ素はF2などと中学で習いましたが,プラズマ状態では,Fという原子のままの状態も出現し,これをラジカルと呼んでいます。これは,我々が見るフッ素ガスではなく,地球上に普通は存在しません。北極南極に現れるオーロラは,太陽から飛んできたプラズマ状態の粒子が反応して起こす現象と言われています。私は,カナダの北極圏に行って見たことがありますが,実に美しいレースのカーテンが舞うようで感激しました。それと同じプラズマ現象がエッチング装置の中で見られるのです。
ウェーハ全面をエッチングする場合はウェットエッチングでも良いのですが,フォトレジストでマスクしてエッチングする場合は,100℃以下で行わないとフォトレジストが熱で変形したり蒸発したりします。そこで,化学的に活性なプラズマを用いると,100℃以下の低温でエッチングができます。
プラズマを用いると,横方向に広がらない深堀エッチングができます。これについては,コンタクトホールの項目で詳しく説明します。
8. フォトレジストを剥離
マスクとして用いたフォトレジストは,エッチング後は不要ですから剥離します。通常は酸素プラズマでアッシングします。フォトレジストは高分子ですから,酸素と反応して炭酸ガスと水になります。木や紙が灰になるのと同じ反応なので,灰化(Ashing)と言い,装置はアッシャと呼んでいます。酸素プラズマ以外にも,オゾンガスや硫酸のような酸なども用いられることもあり,最近はお湯で剥離できると言う人もいます。
以上,今月はpoly-Si電極の製作までしか進めませんでしたが,次回はイオン注入によってソース/ドレインを作るところから勉強します。
| <ちょっと脱線その1> |
若い方はご存じないと思いますが,今日の映像産業の基礎を築いた企業としてRadio Corporation of America(RCA)を忘れることはできません。すなわち,カラーTVの普及に最も貢献したのがRCAでした。日本の各社もRCA詣でをして技術を教えてもらったわけです。ところが,生徒のはずの日本の企業が強くなって,アメリカからTV企業を駆逐してしまいました。RCAがカラーTVのブラウン管のガラス洗浄のために開発したのが,アンモニア過水と塩酸過水でした。これをSiの洗浄に応用すると非常に効果があったため一般化し,今ではRCAという会社は存在しませんが,RCA洗浄という名前が残りました。「虎は死して皮を残す。RCA死してセンジョウに名を残す」 |
| <ちょっと脱線その2> |
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| <ちょっと脱線その3> |
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