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厚木エレクトロニクス 代表
サクセス インターナショナル 取締役
加藤俊夫
前回までNMOSについて勉強しましたが,いよいよ本命のCMOSの構造とプロセスの出番です。現在の半導体の主流デバイスは,CMOS LSIですが,フォトリソグラフィの回数も30回を超え,その他の主要工程を合計すると,処理数は200回を超えるでしょう。入門講座で,とてもすべてを取り上げる訳には行きませんし,最先端LSIとなるとあまりに複雑ですから,その触り程度を紹介し,半導体の面白さを味わって頂きたいと思います。
1. 最初はSTIから

図1 LOCOSプロセス
現在は,Gビットメモリの時代となりました。すなわち,爪程の大きさのSi片に109個,すなわち10億個のトランジスタが載っている訳です。それらのトランジスタに,電流が流れたり流れなかったりして信号を伝達している訳ですが,隣近所のトランジスタの電流が,勝手な通路を通って入り込んできてはなりません。そこでトランジスタ相互間を絶縁するため,絶縁膜(SiO2)の壁をSi中に埋め込みます。第2回でSTI(Shallow Trench Isolation)は,弥生時代の環濠住居のようなものだと説明しましたのを思い出して下さい。
SiO2をSi中に形成するのに,以前はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法が用いられていました。LOCOS法はプロセスが簡単なので,現在でも微細ではないICには用いられています。図1に簡単にプロセスを紹介しておきます。このLOCOSではSiO2の幅が広くなってしまい(例えばエッチング幅が0.2μmでもLOCOS幅は0.4μmになってしまう),チップ面積を小さくするためには無駄が非常に多いのが欠点で,現在はあまり用いられません。

図2 STIのプロセス
200nm程度の微細化LSIからは,STIが一般に用いられています。STIは,Siに溝を掘ってSiO2を埋めるだけですから,話は簡単ですが実際は複雑です。一連のプロセスを図2に示します。まず,Siウェーハを熱酸化します。Si表面はできるだけ汚染したくないので,SiO2膜をつける時は最も不純物の少ないSi結晶を酸化します。次いで,SiN膜をCVDで付けます。なぜ付けるのでしょうか。その訳はCMPのところで分かります。次にフォトレジストを塗布・露光・現像してパターンを形成し,それをマスクにしてSiN/SiO2/Siの順にエッチングしトレンチが形成されます(図2-3)。次いで,SiO2を埋める訳ですが,通常は熱酸化SiO2を薄くつけた後にCVDでSiO2を埋めます。間にSiNを挟んでいる場合もあります。CVDのSiO2は,トレンチの中だけ埋まってくれればありがたいのですが,そうは問屋が卸してくれず,図2-4のように表面全体に付着します。これをCMPで削り落とします。この時,トレンチ以外の部分のSiO2やSiを削ってしまってはいけません。そこでSiNが役に立ちます。SiNは一般にSiO2より硬い膜なのでCMPで削られない上,SiNを侵さない薬液を含むスラリ(研磨材)を用いれば,SiNはほとんど研磨されず,研磨のストッパの役目を果たします。
以上で,めでたくSTIが完成しました。
なお,トレンチに埋め込むSiO2は,TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を原料としたCVD膜が用いられます。TEOSは「テオス」と呼ばれ,酸素またはオゾンと反応してSiO2膜を形成します。LSI工程ではよく用いられていますので,記憶しておいて下さい。反応式は次のようになります。
Si(OC2H5)4+12O2→SiO2+8CO2 +10H2O
2. Wellの形成

図3 Bをイオン注入して,P-Wellを形成する
NMOSとPMOSを作るためには,SiにP型部分(NMOS用)とN型部分(PMOS用)を作る必要があり,これをWell(ウェル)と呼んでいます。
まずP-Wellを作るには,それ以外の場所をフォトレジストでマスクしておき,マスクしていない場所に,図3のようにP型不純物(普通はB)をイオン注入します。逆にN-Wellの形成には,P-Well部分をフォトレジストでマスクしてPをイオン注入します。
P型,N型ともに打ち込み量は1012atoms/cm2と低濃度ですが,打ち込み深さは1μm程度の深い打ち込みです。(MOSトランジスタでは,1μmといえばかなり深いという感覚です)
イオンを注入した後,1000℃程度の高温でアニールします。
3. Gate Oxidation
P-WellとN-Wellが形成されると,続いてゲート酸化,poly-Si膜付け,ゲート電極エッチングを行います。この一連の工程は,先にNMOSのプロセスで説明した通りです。念のため復習しておきましょう。
ゲート酸化は,1000℃程度の高温炉の中で酸素または水蒸気の雰囲気中でSi表面を酸化させSiO2を形成します。SiO2膜の厚さは,数十nmですが,最近は微細パターンのMOSになって,1〜5nmという薄い膜も用いられます。SiO2の厚さは,酸化時間の平方根に比例するので,炉の中でゆっくり酸化していると厚くなり過ぎるため,RTO(Rapid Thermal Oxidation)と呼ばれる短時間酸化が行われます。
4. poly-Si Deposition
poly-Si膜のCVDには,シランガス(SiH4)を用いる場合が多い。ホットウォールのLPCVD装置を用い,キャリアガスとしてH2か不活性ガスを用い,600℃程度の温度でウェーハ表面でSiH4が分解してpoly-Siが生成されます。
フォスフィン(PH3)やジボラン(B2H6)などのガスを同時に流すと,P型,N型のpoly-Siを生成することもでき,そのようにpoly-Siに不純物をドーピングする場合もあります。
5. Gate Etching

図4 ゲート電極のエッチング
まず,フォトレジストでゲートのパターンを形成し,プラズマガスでpoly-Siをエッチングします(図4)。プラズマとしてCF4を用いると,下地のSiO2もエッチングしてしまう可能性があり(選択比が悪いと言います),ClやBrのハロゲン系のガスも用いられます。
次いで,酸素プラズマでフォトレジストを剥離します。
6. ソース/ドレインへのイオン注入

図5 Asイオンを注入
まず,NMOSのソースとドレインを作りましょう。それには,PMOS部分をフォトレジストでマスクしてX族の原子として,As(ヒ素)イオン注入します(図5)。先に形成したpoly-Siがマスクとなって,その両側のみにイオン注入されます。ソースとドレインの電気抵抗を下げ,電極のコンタクトを良くするため,ドーズ量は非常に高濃度にします。例えば,1015〜1016atoms/cm2程度です。
次にフォトレジストを剥離し,新たにNMOS部分をマスクするためのフォトレジストをパターンニングし,PMOSのソースとドレインをイオン注入します。ドーパントはV族のBです。
フォトレジストを剥離した後,1000℃程度の高温でアニールします。このレジスト剥離は意外に厄介で,高濃度にイオン注入されたレジストは,もはや単なる高分子ではなく酸素プラズマでアッシングしても簡単には灰になりません。エッチングが進まなかったり,残渣が残ったりします。Fを微量添加するとか,薬液処理を追加するとか,各社ノウハウがあって苦労しているようです。
以上で,CMOS LSIのNMOSとPMOSのトランジスタ工程,すなわち,FEP(Front End Process)が完了です。この後は,多層配線の工程,BEP(Back End Process)になりますが次回のお楽しみに。
| <ちょっと脱線:最先端LSIを覗いてみる> |
LSIのパターン寸法が年々微細化されているのはご存知だと思います。MOSが微細化されると,1チップに組み込めるトランジスタ数が増えるだけでなく,性能的にも消費電力が下がり,動作速度が上がるなど,メリットが大きいので,微細化競争が続けられました。ところが,ナノメータ時代になって微細化に伴う数々の不都合が発生し,その対策のためMOS構造やプロセスが非常に複雑になってきました。入門講座には相応しくありませんが,最先端LSIで話題になっている技術を簡単に紹介しておきます。 |
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